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003-第1章 1.

第1章 概説

  1. なぜ、今インターネット・ラジオ放送なのか

<放送という言葉の定義>
 日本における大正時代からの(電波による)放送のコンテンツの変化という歴史の中で技術が開発される毎にサービスが出てきています。
1925年に日本で初めての電波による放送。AM(振幅変調)による音声放送です。
1953年にテレビ放送が開始されます。映像はAMですが、音声はFM(周波数変調)でした。
1957年にはFMの音の良さを評価し、FMによる音声の放送が始まります。
更に1963年にはFM放送に左右の音声の和と差の両方の信号を乗せることで、ステレオを受信機を持っている人にはステレオで、持っていない人にはモノラルで聞くことができる変調方式を採用し、ステレオ放送が開始されます。
ここで、変調方法の技術的な説明をするつもりはありませんが、技術の進展で、音声から映像へ、そしてより良い音から、さらにステレオへと技術が進化してきます。
こういった歴史の変遷から、当然「メディアとして音より動画が高級」という社会通念ができてきているのかもしれません。

 また、放送は電波という国民の共通の有限の資産であり、これを使うために免許制度により公平に正しく使うことが必要です。放送法の第1条には次のように書かれています。

第一条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

ですから、「放送」と言った途端に、「個人が簡単に始めて良い事業ではない」という社会通念があるのは事実です。平成22年の放送法改正前は電気通信役務利用放送法という法もあり、放送は全て法の規制の元にありました。その視点では上記の社会通念は正しかったのですが、今、上記法改正の後の放送法でいう「放送」は電波による放送を意味します。
従って現在、インターネットという通信の媒体を利用して行う放送もその機能から考えれば「放送」であることに間違いはないのですが、しかし電波を使いませんので免許事業ではありません。
つまり、放送であってもインターネット放送であれば、昔のように無線従事者免許を持つ専門家でないと扱えない難しものではないのです。しかし、その先入観による呪縛もあり、「放送をやってみよう」と言う発想そのものがなかなか出てこなかったのでは無いでしょうか。

<音というメディアについて> 
映像と、音声は全く異なるメディアであることはすでにみなさんの経験の中にも必ずあるし、また最近のいくつかの脳科学の研究で明らかにされてきています。
映像は、基本的には全神経を集中して情報を得るものです。一方で音声は、全神経を集中して聞くこともできるし、BGMとして聴くことで、脳の機能を高めることも、あるいは聞こえていても聴かない事が出来るのです。2つのメディアは人の持つ生体としての機能に対して全く異なるメディアなのです。テレビを見ながら本を読むこともあると思いますが、この場合は多分テレビの音声を聴きながら気になる単語が出てくると読むのをやめて注目をテレビに移している訳で「ながら」の機能は意図的に脳の力を集中できる音声の力に依っているのです。
 自分は、自動車の運転中は英会話のヒヤリングの訓練のために、CNNの英語のニュースを聞きはじめて1年半ほどになります。脳内の情報処理の理屈がわかっている訳ではないのですが、運転の邪魔にはならず、ヒヤリングの能力も僅かですが高くなっている様に思います。
 また、音楽をBGMにすることでソフトウエアの開発などの効率が上がるという報告もあります。
 つまり、映像を伴うメディアが高級で、音声だけのメディアは低級ということではなく、明らかに目的が異なります。そういう意味で「音声メディアを事業として考えること」は時代遅れな、「今更?」と思うべきメディアではないと言えると考えます。

文献------------------------------------------------------------------------
1)ワークミュージックとしての音楽の効果:音楽の聴取は、作業効率やストレスの低減につながる可能性があることが示されています
(参考:Takahiro Tamesue、et al. "The effects of background music on quality of work in simulated assembly line." International Journal of Industrial Ergonomics 38.9-10(2008):846-856.)

2)集中力と創造性に対する音楽の効果:音楽の聴取は、集中力や創造性を高める可能性があることが示されています
(参考:Takahiro Tamesue、et al. "The effects of background music on quality of work in simulated assembly line." International Journal of Industrial Ergonomics 38.9-10(2008):846-856.)

3)作業内容と音楽の効果:作業の性質や内容によって、音楽の聴取が有効である場合とそうでない場合があることが示されています
(参考:Wing-Yin Leung、et al. "Effects of music on task performance in an automated assembly line." International Journal of Industrial Ergonomics 27.5(2001):331-336.)
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