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Into Animation No.8 「髙橋克雄特集・ 立体アニメーション映画への模索」 を振り返る その3 後編

《上映作品》                                                 『シスコン王子』 『進めシスコン』うた 伴久美子とビクター少年児童合唱団オープニングと本編予告編の素材映像(無音・本編6話より)


⚫︎『シスコン王子』の謎は続く…

イントゥの上映後、『シスコン王子』の映像についていろいろなご感想、ご質問が数多く寄せられて嬉しい悲鳴!『1話から3話までにはあの大掛かりな舞台セットは写っていなかったが、あれは本編第何話?』『1話から既にシスコン王子がピノキオを紹介する場面があった』『ピノキオの声は野沢雅子さんの最古の声!』など貴重な情報をたくさんいただくことができて感激。やっぱり、公開してよかった〜!と思ったところに、ドカン!上映後にもまたまた大きな謎が現れた。

⚫︎『シスコン王子』予告篇は第何話?

昭和38年12月4日とあるが、放映は2日後の6日。

  今回、イントゥの中で上映された無音の素材映像、『シスコン王子 予告編』のプリントには、フィルムのリーダー部分に、父の筆跡で「12月4日」の文字が入っている。しかし、予告編の放送日はそれよりわずか2日後の12月6日!果たして、そんな神業のようなことができるのだろうか?  編集技術も手作業だろうし、何かの間違い?
 そもそも、上映された『予告篇』について、私は大きな勘違いやミスをたくさんしていた。まず、父のクセのある予告篇を「アモ篇」 と読んで「予告篇」のフィルムだと気づくのが遅れた。最初に絵コンテの中身と映像を照らし合わせて観ていなかったことが祟って、上映された予告篇は7話に違いない…と、思い込んでいたのが何より大きな勘違い。『シスコン王子』の絵コンテは第6話、第7話しか発見できなかったのだが、6話の撮影用の絵コンテはところどころ父の手書きでポワポワ。第7話は表紙から最後のページまで藤子不二雄作画で、表紙にゴーレムが大きく描かれ、いかにも藤子不二雄原作!という感じで藤子不二雄の存在感に溢れて、立派に見える。そのせいか、私は予告篇の放映に使われたのは、この立派な方の絵コンテ!と勝手に思い込んでしまって、それも謎解きが遅れた原因。イントゥの上映後に『あの予告篇CMの映像は第何話?』と質問されて、即答で『7話!』と答えそうになったが、ぐっと飲み込み、念のために、父の手帳と絵コンテで確認したら、またまたギョエー! 手帳をよく観ればすぐにわかることなのに、全く気づかず見落としていた。国府田氏、浅野監督が東中に来社した12月7日の撮影前、6日に「予告編」が放映されていて、7話の納品日は予告編の放映より後過ぎる。予告篇が7話では、スケジュール的に辻褄が合わない。(放送開始は12月20日、7話の納品が1月22日!)で、遡るとまさかの6話…?と、3年前に撮った6話の絵コンテの記録写真を改めて見てみると、何となくそれっぽいが、素人判断でいい加減なお返事はできないなぁ…と困っていると、天の助け!アニメーション協会でお世話になっている『DINO』の監督、東京工芸大学のアニメーションのエキスパートである細川晋先生が絵コンテを丁寧に観てくださって、鶴の一声。『イントゥで上映された予告篇のあの映像は、間違いなく6話から!』とのお返事。というわけで、あれは本編6話から抜いたものと確実なお返事に漸く辿りつけた。と、上映後の新しい発見にますます心ときめく『シスコン王子』であるが、謎はまだまだ続く。

迫力溢れる第7話の台本。藤子不二雄作画のゴーレムのインパクトが強烈!迫力と貫禄の絵コンテ。『予告篇はコレだ!』と勝手に思いこんでいて謎解きが遅れてしまった。
6話の絵コンテの表紙は父の直筆。7話よりえらく地味!

⚫︎『ピノキオ紹介』の撮影はいつ?

ピノキオを紹介するシスコン王子。ピノキオの声優は野沢雅子氏!と上映後に大反響、嬉しい質問の嵐で私も感激。

  「ピノキオ紹介」の撮影はいったいいつ?…上映後に質問があったように、私もそこはずっと気になっていた。そもそも、父が『シスコン王子』に関わるようになったのはいつなのだろう。父の恩義のある電通映画社専務の小畑敏一氏からのお手紙で1963年10月頃と思っていたが、いろいろ調べるうちに、もっと早くから関わっていたのではないか?と思うに至った。ピノキオ紹介の撮影場面が写る撮影スナップは、同じロールに本編の大掛かりな舞台セットが続けて撮られていたことに気づいたので、てっきり『ピノキオの紹介』を撮ってから6話か7話の撮影のセットを組んだものと思っていた。それにしても、撮影スナップに写る「只今アニメ中」の父の表情は、本当に嬉しそうで活き活きしていている。気心の知れた仲間たちと一緒に撮影している?とか、シスコン王子と再会か ?とか、妄想に妄想を重ねながら、『ピノキオ紹介』はいつ撮影?という質問の答えを考えたが、『歌の特撮』→『ピノキオ紹介』→『本編撮影』…と大雑把な答えしか思いつかない。
それも確たる証拠があるわけではなく…と、困っていると、細川晋先生、藤子不二雄公式ファンクラブのネオ・ユートピアの皆様、北海道アーカイブの齋藤代表、その他、Twitterの皆様からあっ!と驚くようなすごい観察や証拠、ご指摘がいろいろ届いて、『ピノキオ紹介』は本編撮影の前!ということになった次第。私は全然気づきもしなかったことを、本当に皆さんよく観ているし、よく知っていらっしゃる。細かい日にちはわからないものの、「ちゃんとした理由」からだいたいの撮影時期を特定された専門家の皆様の視点はすごい!で、ちゃんとした証拠というのは、お人形のデベソや指のこと、というかお人形のデザインについてのお話。これがまたビックリするくらい奥深い内容で、これについてはあとでまとめてお伝えするのでお楽しみに!

 話は戻って、『ピノキオ紹介』の撮影と、嬉しそうに父がアニメする姿の写る「撮影スナップ」が撮られたのはと同日。10月7日、8日に国府田氏と浅田監督が来社したときに、撮られた!と、また私が勝手に思い込んでいたのだが、後ほど説明する『ピノキオ紹介と本編のお人形が違う!』という本格的なご指摘から、本編とピノキオ紹介の撮影が同時期に同じスタジオでされた、という私の考えは吹っ飛んだ。でも、撮影スナップに本編の撮影場面も同じロールに写っている…と、謎はまた深まるばかり。撮影スナップの舞台セットの内容と絵コンテの内容が一致すればもっといろいろわかるのに残念…と嘆いていたら、またも天の助けで『送ってくれたら観ますよ』とありがたきお言葉。早速、撮影スナップのアルバムやシスコンのスライド、父の撮影手帳など一式、プチプチシートでぐるぐる巻きにして、アニメーションの専門家である東京工芸大学の細川先生にお送りした次第。私には見えないものが先生にはたくさん見えるから、研究者というのはすごい!と改めて感心。よろしくお願いします。

⚫︎髙橋克雄の名前が出ないのはなぜ?

  これは娘の私にとって、胸の痛い質問だが非常に気になるところ。前編を書いていたときには、父が恩義のある電通映画社専務の小畑敏一氏との暗黙なお約束!隠密剣士のような隠れ撮影部隊に志願したせい?くらいに思っていたけれど、今はパズルのピースがいろいろ繋ぎ合わされて、父のことも含め、いろいろな方面の人や会社の諸事情などもだんだん見えてきた…ように思う。『なぜ父は私に自分と『シスコン王子』のことを教えてくれなかったのか?』…『モノには何でも理由があるのよ。カリちゃん』と母の声。なるほど…!理由を知りたいと思って父の手帳を見直すことに。確かに父と『シスコン王子』の関わりの変化は激しい。4話、5話はサラリだが、6話、7話では父用の撮影絵コンテがあり、アニメのコマ割り計算、特撮だけでなく人形のアニメまでしているのでビックリだ。8話は関わっていないが、9話本編のクランクアップが12月25日で放映はが2月14日。父が最も深く関わったことが窺える7話の編集が信じられないことに1月20日、音合わせが翌日21日、22日に納品で31日に放映!この自転車操業のようなスケジュールと並行して、父は『ぴっきい劇場』も撮っていたのである。さぞかし大変だったろうに…こんなに関わっていたのに「どうして父の名前が『シスコン王子』本編にはないのだろう」…これは娘のカンのようなものかもしれないが、6話、7話の意気込みとその後の手帳のメモ書きの感じが全く違うことにもきっと何か理由があるのでは?当初は新調した万年筆がシスコンで、鉛筆書きがぴっきい。だったのに終わりの方は完全に逆転していて7話のあたりで何かあった!と思うが、これも妄想?何にせよ、父を含むいろいろな人の諸事情というものがあったのだろう。その辺りをしっかりゲットできれば謎解きもスイスイ進むだろうからしたくて先を急ぎたくなるが、じっと我慢。

父と『シスコン王子』の関係の変化についても謎である。6話から急にバリバリ撮影に参加するのは、『ピノキオ紹介』で勢いついたせいか、映画社のラッシュ試写、浅野監督と国府田氏から一発OKをもらったせいなのか、ますますエンジン全開!…という感じで、父と『シスコン王子』との関わりはどんどん濃く深くなって納品 スタイルも7話で急変!7話の絵コンテ記載の「スタジオKAI 製作」は赤で消されて、映画社に直接納品、というのも謎。単に浅野監督、国府田氏が多忙で映画社に納品されたものを別な撮影班のものと一緒に後からまとめて観た、ということなのかもしれないのだが…国府田氏がお元気でいらしたら『父と喧嘩をしませんでしたか?』とざっくばらんにお尋ねしてみたいところ。これは父の性格をよく知るだけに、どなたにもお尋ねしてしまう質問。刑事物のドラマでよく聞くセリフだけど『国府田さんだけでなくて、皆さんにお訊きしていることな単に浅野監督、国府田氏が多忙で映画社に納品されたものを別な撮影班のものと一緒に後からまとめて観た、ということなのかもしれないのだが…国府田氏がお元気でいらしたら『父と喧嘩をしませんでしたか?』とざっくばらんにお尋ねしてみたいところ。これは父の性格をよく知るだけに、どなたにもお尋ねしてしまう質問。刑事物のドラマでよく聞くセリフだけど『国府田さんだけでなくて、皆さんにお訊きしていることなのです』と、念のためにお断りを…

7話の絵コンテより。セリフに合わせて人形の動きをコマ割りしていく計算がされている。書き込みの文字は全て父の筆跡。カットごとに撮影が終わるとバツを書きいれる。
『進めシスコーン』の放映開始は12月20日。本編から抜いた予告篇放映は2週間前の12月6日。「シスコン6話」に線が引かれているのは7日に国府田氏、浅野監督が来社されることになったから延期、ということだろうか?
このフォーマットでは、真ん中のシスコン王子がピノキオを紹介する部分だけが「東中人形」とされている
当初、鉛筆書きは『ぴっきい劇場』、万年筆書きは『シスコン王子』と書き分けていた。21日の音合わせとは7話のことか?1月24日、第6話の「シスコン#6放映」の青ペン文字は力強く、楽しみにしていた様子を垣間見る。

『お人形が違うのはなぜ?』についても、もっと書きたいところだが、ここまでで既に五千字を軽く超えてしまった。前編、後編で終わらないほど『シスコン王子』は奥深いので、またまた今回もTo be continued …後編、エクストラへと続くことに。長くなって申し訳ないけれど。次はいよいよ大謎、『なぜお人形が違うの?』…この質問には本当に仰天!何にしても「シスコン王子ド素人」の私は手探りの暗中模索ながら、まだまだ知りたい!皆さんからいろいろ教えていただくうちに、シスコン王子の撮影は半世紀以上の前のできごとなのに、もう振り返るとそこに父いる!くらいの近さで当時の父の心境なんかもリアルに甦る。そんなことですので、皆様、今後ともどうぞよろしくお願いしますー!
























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