なんか色々こじれてしまったファンタジー姫騎士物語、出だし
これはマストドン中曽根アドベントカレンダーの記事ではなく、時間的と環境的に新しくなんか書くのが難しいので登録したものです。
なんかふわっとしたファンタジー小説を書こうとして序盤の頭だけ書いてやめたやつです。
「百合に挟まる男の小説書いてやるよ」と言ったので女性が主人公て幼馴染の女性とかでるが、これから諸国婚活旅行めいたものになるかもしれん。
オークが結婚するために旅する「忖度列伝」てラノベ面白かったよ。
いい音がなった。
スパ―ンといい音がなった。
木剣を人の頭に平打ちするといい音がする。
「一本!」と先生の声が聞こえる。
一旗あげようと田舎貴族の三男坊が決闘を申し込んできたが、
実際のところ技量も経験もまるでダメだった。
「はあ」とカタリナの口からため息が出る。
王国の姫という立場ながら並みの騎士よりも強いと言われているお転婆姫だ。
「おい、この程度お前らで追い払ってくれよ」
「勝負ついていますけど、そいつまだ立ってますよ」
「あー」
そういうことか。
「確かにお前ら好みの若い奴だな。」
ぼっこぼこにした。
根性はあったので何度も立ち上がってきた。
真剣だったら殺してたなと思うくらいタフな奴だった。
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祖父の代、
この王国は魔王との戦いで多くの騎士と民を失い、
ネコの額のような小さな領土を守る小国に成り下がった。
半ば亡命に近い形となった王族と貴族たちは周辺諸国と婚姻制政策を進め援助をもらい
どうにか国という形を保ってきた。
それゆえ王家の血というのはそれなりに価値があり王族たるもの結婚も仕事や使命のひとつだと理解している。
それは分かる。
それは分かるが、
「顔もしらんどこぞのおっさんと結婚とかしたくないわ」
「だったら今日決闘した奴と結婚したらいいじゃん。若いし顔もよかったし」
茶を飲みながら話す小柄な少女の名前はアラン。
男の名前だがれっきとした女性だ。
刈り込んだ短い赤い髪が目立つ。
ちょっとした縁から友人となり今ではカトレア付きの女官として働いている。
本来女官が曲がりなりにも仕えている王族にここまで気安い言葉使いは許されないのだが、
幼少のころから付き合いのある二人の間では特例的に認められていた。
「あの少年の根性は認めるが、私より強い男じゃなきゃヤダ」
「それ会った時から言ってるけど、姫様今いくつよ。正直この国で姫様より強い騎士ってなかなかいないよー」
「いや、先生や兄上にはまだ勝てないぞ」
「姫様も分かってると思うけど。その二人、割とマジでこの国背負っている最強レベルで強い騎士だからね。」
「わかった。私も妥協しよう。兄上か”蛇”くらい度胸のある男なら認めよう」
「小国とは言え国を支えてる次期国王とその腹心が比較対象だと普通にむずかしいよ」
やれやれとつぶやいてアランは長椅子に横になる。
「お前、私の世話をする仕事なのになんだその態度は」
「姫様が許してるからやってるじゃん。ほかの人の眼もないし。」
カトレアはいくらお転婆姫と言われようがれっきとした王族のため、
事実上国王として働いている兄の仕事を手伝っている。
今二人が話している部屋はカトレアの執務室であり、同時に王宮の中に彼女に与えられた半ば私的な空間でもあった。
二人だけの時はアランもカトレアも対等の友人のように会話をする。
他の者、特に他国の人間がいるときは流石にきちんとしているので特に問題はなかった。
カトレア自身は自信の王族としての仕事を書類にハンコを押して社交の場で微笑んでいる退屈な仕事だと思っているが、
日常的にこの国の騎士の訓練場に顔を出し、一緒に剣を振るう姿は王都の住民にすこぶる評判であった。
「話戻るけどさー。姫様今いくつよ。確か21でしょ?貴族の女性としては結構キツイものがあるよ」
もう投げやりな口調になりながらアランは茶を入れ直す。
ホレ、とカトレアのカップにも注ぐ。
アランの入れる茶は美味い。
同じ茶葉を使っているはずなのにほかの女官が入れるものよりもうまいと感じる。
カトレアはコツを聞いてみたが本人からは「いや普通に入れただけ」としか返ってこなかった。
「私より強い男じゃなければ結婚はしないとか、歌劇や物語なこと言う姫様ってさー」
「結婚がいやだからというか、13の時に剣術と馬が好きで騎士になりたかったから言った言葉だったが、
本当に私より強い男がいなくて大変なことになってしまった」
「姫であること隠して女武芸者やって王都の荒らくれ者をしばき回っていた奴がいう言葉か?」
「恥を掘り返すのはやめろ」
13歳の時、王家に仕える騎士たちと混じり訓練し、
馬と剣術が好きだったカトレアは結婚の話が父親からされたとき
「私より強い男でなければ結婚したくありません」と叫んだのだった。
今でも王都では有名な話だ。
なんなら今では、腕自慢の出自も明らかではない男が名を上げようと挑んでくる。
今朝の決闘もそういった話だ。
王族として国の仕事もしているカトレアは
自身の若いころの行動がだいぶ危険なことを理解している。
身分を隠して町の治安が悪い場所にいき声をかけてきた男を殴り倒していたのだ。
「死んでてもおかしくなかったな」
本気で両親と兄に怒られたのはあの時ぐらいだった。
”蛇”には、お前が殴り飛ばしたやつはきちんと犯罪を行った証拠があるのか?
という、当時はいまいちよくわからない説教をされた。
いまならわかるが、
「あいつ人を心配する箇所がなんかずれてるんだよな」
魔王との戦を経験した王国は小国といえども騎士や兵たちの士気や練度が高いことで有名だ。
外交がどうこう以前に利用価値がないなら他国は援助をしない。
それゆえ、当時の貴族たちは死にもの狂いで領国の魔獣を討伐し、野盗を狩っていった。
今でも王は騎士と軍を率い辺境に赴き自身で剣を振るい前線に立つ。
お転婆な姫の啖呵はこの武張った国の住民には好意的に受け止められた。
そこに甘えてしまっているところはある。
いや、カトレアもわかっているのだ。
これ以上時期が遅れると自分も年を取ってしまう。
相手として現れるのは相応に年をとった男になるだろう。
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