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私の読書●小説家志望の読書日記

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日々の読書の感想・雑記です。 お気軽に覗いていただければ幸いです。
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#中村文則

私の読書●小説家志望の読書日記㉙花村萬月も中村文則も

 今小説は、またしても花村萬月『二進法の犬』を読んでいます。  なんでこの私がヤクザものばかり読んでいるんだろう。でも、面白いので仕方ない。  ただ、この力のある作家、性と暴力と極道を外したごくフツーの小説でも読ませると思うんだけど、それは書く気が起きないんだろうか。まだ数冊読んだくらいだが、この作家のフツーの小説を読んでみたいと思ってしまう。  最近よく読んでいた中村文則もそうなのだが、設定とテイストが皆似通っているんだよね。そう考えると、太宰や芥川はずいぶんいろんなテイ

私の読書●小説家志望の読書日記⑭ 中村文則『何もかも憂鬱な夜に』

 再読。  タイトルとは裏腹に、この小説には救いがある。いろいろな要素が含まれているが、私が一番感じるのは、次の言葉。  自殺を試みた子供の頃の主人公(孤児)に、施設長が言う言葉。  ・・・・・・・・・・  お前は、何も分からん。  ベートーヴェンも、バッハも知らない。シェークスピアを読んだこともなければ、カフカや安部公房の天才も知らない。ビル・エヴァンスのピアノも。  黒澤明の映画も、フェリーニも観たことがない。京都の寺院も、ゴッホもピカソだってまだだろう。  お

私の読書●小説家志望の読書日記④中村文則『掏摸』

 中村文則の『掏摸』を再読していて、気になった言葉がありました。  主人公の「運命」を「神」のように支配しようとする人物の言葉。  「……他人の人生を、机の上で規定していく。他人の上にそうやって君臨することは、神に似てると思わんか。もし神がいるとしたら、この世界を最も味わってるのは神だ。俺は多くの他人の人生を動かしながら、時々、その人間と同化した気分になる。彼らが考え、感じたことが、自分の中に入ってくることがある。複数の人間の感情が、同時に侵入してくる状態だ。お前は、味わ