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私の読書●小説家志望の読書日記

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日々の読書の感想・雑記です。 お気軽に覗いていただければ幸いです。
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#太宰治

私の読書●小説家志望の読書日記㉙花村萬月も中村文則も

 今小説は、またしても花村萬月『二進法の犬』を読んでいます。  なんでこの私がヤクザものばかり読んでいるんだろう。でも、面白いので仕方ない。  ただ、この力のある作家、性と暴力と極道を外したごくフツーの小説でも読ませると思うんだけど、それは書く気が起きないんだろうか。まだ数冊読んだくらいだが、この作家のフツーの小説を読んでみたいと思ってしまう。  最近よく読んでいた中村文則もそうなのだが、設定とテイストが皆似通っているんだよね。そう考えると、太宰や芥川はずいぶんいろんなテイ

私の読書●小説家志望の読書日記㉓ 『ヴィヨンの妻』太宰治

小説家志望と言いながら、こんなのはどうかと自分で思ってしまうのですが、太宰の作品をじっくり読んだことってあまりないんです。  めちゃくちゃに文章がうまいのもあって、つい流れるように読み、かつストーリーテラーでもあるので、さらさら読んでもなんとなくわかったような気になってしまう。  良くも悪くも太宰の才能。  そのなかでこの『ヴィヨンの妻』はわりと分かりにくい部類に入る短編なのではないでしょうか。太宰治の最晩年に書かれた作品ですが、そこには『人間失格』のような暗さは

私の読書●小説家志望の読書日記㉑男性作家と女性(漱石・太宰)

 前回のものに追記するならば、女性をある種の憧れの対象として描き出し成功しているのは、夏目漱石でしょう。『三四郎』の美禰子、『それから』の三千代、『こころ』のお嬢さんの描き方など。  鏡子夫人が「悪妻」であるとの評判もあるので、その反作用のように憧れの女性像を求めたのかとも思われますが、今の自分の知識では定かではないですね。  ちなみに、鏡子夫人悪妻説は、主に弟子たちが言ったことで、現在の視点から言えば、むしろ彼女がはっきりものをいう、さっぱりした気性で、かつ比較的開明的