ぼくがゲスナーオフ会に向かうまで

どうして太陽は輝き続けるの
どうして波は浜辺に打ち寄せるの
みんな知らないんだ
この世がもう終わりだってことを
The End Of World/Skeeter Davis

ぼくは、まわりの人にラジオリスナーということも隠してるし、ラジオへ投稿したことがあることなんて言ってないし、ましてやそのリスナーたちで集まって酒を飲むなんてことは口が避けても話せないわけです。いや、別に話そうと思えば話せるのですが、とにかく面倒くさい。ラジオに馴染みがある人なら特に問題ないかもしれませんが、ラジオなんて聞かないよって人に、いちから説明するのは骨が折れます。というわけで、ぼくはまぁ、同棲しているのですが、その相手には友人の結婚式があると嘘をついて東京へと向かいました。ちゃんとリアル感を出すためにスーツや靴、祝儀袋まで持って家を出ました。もちろんそれらは京都駅のロッカーにぶちこみましたよ、ええ。邪魔だし。

前回に引き続き、今回も夜行バスで東京へ向かうことにしました。席はせまいし時間は長いしで良いところがない夜行バスですが、一度寝てしまえばこっちのものです。安いしね。実を言うと、ぼくはゲスナーオフ会の二次会なんかでカラオケに行った場合を考えて、ひそかにバス内にてスマホで音楽を聴きながらシミュレーションしてたんですよ。特に、あいみょんの「マリーゴールド」。結局、二次会も三次会も飲み屋だったので、披露できませんでしたが。ただ、深夜の歌舞伎町の路上で熱唱することはできたようです。ようです?いや、その時のことはあまり覚えてないのです。まぁ、弾き語りミュージシャンみたいなものですね。小銭くれ!

夜行バスで眠りのなかに落ちてるあいだに東京へは着きました。バスタ新宿という巨大なバスターミナルを出て、いざ東京の地を踏んだはいいものの、ぼくは極度の方向音痴なのです。「地図が読めない女」なんて本が昔に流行った記憶がありますが、男のぼくも読めません。新宿駅南口、とか言われても、とりあえず外に出て太陽の位置を確認して「東を右手にすると前が北だから…後ろが南か!」くらいの方角把握能力なのです。しかし、そうは言っても6月にも新宿には来てるので、そこはナメてもらってはいけません。携帯を充電するために6月にもやってきた新宿駅近くのファーストキッチンへ入りました。田舎っぺっぷりを出さないために、スタイリッシュに注文を終えて地下の喫煙席へ向かい、とりあえずテーブルのうえに携帯とか充電器とか財布とか顔拭きシートを広げ、キャスを始めました。

なにしろ、この日のぼくの予定は結構過密で、競馬、ゼロ次会、ゲスナーオフ会と盛りだくさんだったのです。結局ゼロ次会には行けませんでしたが。とはいえ新宿に着いたのは朝8時。さすがにまだ早いです。キャスの内容や閲覧者が誰かなどは覚えてませんが「東京に着いたよー!震えて眠れ!」といった感じだったと思います。いっしょにウインズに行く約束をしていたきなこさんとコラボをしましたが、その時点で、おなじくウインズに行く爆ドリさんを迎えに行ったところだったようです。まだ時間があります。

そしてそのままキャスを終えて店を出ました。即、ウインズに行くことも考えましたが、せっかくなので歌舞伎町をウロウロしていました。しかし土地感のないぼくにはラビリンスでしたね。まぁぼくは京都や大阪で育ったシティボーイですから、ぜんぜん問題ないですけどね!そして適当に時間を潰したあと、新宿のウインズへ行きポケットに入っていた朝飯のお釣りで競馬新聞を買い、レースの予想を始めました。いや、見えましたよね。勝利へのウイニングロードが。「勝てる…今日の競馬は勝てる…!」と。神の囁きが聞こえましたよね。で、予想を終えてマークシートを記入して、いざ馬券を購入しようと鞄に手を入れた瞬間、違和感を感じました。おかしい…あれ…明らかにモノが少ない…。

「財布がない!!!」お金がない、という織田裕二主演のドラマがありましたね。良いドラマでした。いや、その時はそんなこと考えてる暇はありませんでした。パニック。久しぶりですね、あれだけ焦ったのは。持ち金は競馬新聞を買ったので、ポケットに入ってる100円くらい。東京で。新宿は人がたくさんいましたが、あの時、所持金ランキングをつけるとするならば、ぼくはかなり下の方のランカーだったでしょう。小2のガキよりも下だったはずです。それにしても馬券を買おうとして財布がない、という体験は、死より苦しい運命といった感じで絶望的でしたね。

しかしぼくは「落ち着け…落ち着くんだ…」と寄生獣のシンイチが大量の死体を見た時のように、心をリラックスさせて携帯を手にしました。カード会社片っ端から連絡してカードを止めてもらい(これ、すごい面倒なんです。ネットで電話番号を調べて、電話もまだるっこしいし、しかもぼくはキャッシュカードやクレジットカードを計5枚持っていたので、すごい疲れました)まずは記憶を遡り、ファーストキッチンに戻ることにしました。この道すがら、祈りましたよね。神に。しかし、さっきウインズで聞こえた神の囁きは、もう悪魔の高笑いに変わってましたよね。「財布ですか?届いてないですね、ありません」いや本当、金をなくすとこんなにも嫌な人間になるかと思いますが、つい「この店員がパクったんじゃねえの?」とか考えてしまいました。ダメなやつですね、ぼくは。

とりあえず、望みはないが、交番に行こうとしました。そんな時にスマホが鳴りました。時間はもうお昼。ウインズに集まるのはそれくらいの時間を約束していたのです。そう、さんぺいさんからのDMです。「ウインズに着きました。何階にいます?」ぼくはその時、絶望のなか歌舞伎町の交番で届けを出したりしてたのですが、とりあえずはみんなと合流しようとウインズへ向かうことにしました。そしてウインズ4階。6月に見たメンバーです。きなこさん、さんぺいさん、爆ドリさん。どうやらその時のぼくは汗だくだったらしく、爆ドリさんか誰かにツッコまれました。本当、焦って絶望していたのです。しかしまだ神はぼくを見捨ててませんでした。「とりあえず3万円でいいですか?」そう、きなこさんです!マジ天使。後光が差して、頭の上に輪っかが見えましたよね。きなこさんがホモならケツ穴を貸してるところです。なにしろその時のぼくの所持金は100円ほどだったのです。3万円!そしてお礼を言い、ぼくは思いました。「これで、勝負ができる…!」と。

いや、普通ね、競馬に使うからっつって金を貸す人なんていませんよ。でもきなこさんは違いましたね。格が違う。いや、さんぺいさんや爆ドリさんもですけど、借りた金で博打を打つことに、なんの違和感も感じてないんですよね。「当てればすぐに返せますね…!」とか言ってましたもんね。ぼくも含めて、どうかしてますよ。

さて、ここからが大切です。なにしろマイナスからのスタートです。目を覚ませ…!勝つのは偶然じゃない…!負けられない戦いが始まりました。しかし一発を狙うのは得策ではない、まずは勝ち運をつけること。少額でも勝利して、流れを掴むことです。まぁ流れとか言ってる時点で頭ヤバイですが。そして第一戦開幕…!そして結果は…無事、6千円の勝ち!今日の俺は一味違うぜ!運が悪すぎる俺の金ではなく、きなこさんの金ですから、女神が微笑んだのかもしれません。

さて、いきなりですが、そのあとは夢です。ぼくは現実だと、今でも思ってません。みんながいろいろ名言を言ってたと思います。「こんなオッズなら逆に当たらなくてよかった」だの「俺の賭けた馬は除外されてたのでしかたない(実際は出走)」だの「3千万入れるために鞄を持ってきた」だの、ほぼ妄言ですが、まぁそれも夢の世界の出来事。四人とも負けたのも胡蝶の夢です。ぼくが、ゲスナーオフ会の会費は8千円だったのでそれだけは残して2万2千円を使い果たしたのも現実ではありません。前を向いて歩きましょう。負けた時こそ胸を張れ、ということです。

さて、ゲスナーオフ会について書こうと思ったら、競馬が終わった時までしか書けませんでした。バカ?俺はバカなのか?しかし、本当にきなこさんには感謝しています。ありがとうございました。一時期はオフ会参加も諦めましたからね。本当に良い人です。きなこさんが何らかの罪で捕まった時は、情状証人として無実や減刑を訴えますよ。10月にはきなこさんと再び会う予定なので、その時に金は返しますが、それにしてもなかなかできませんよ、金を貸すとかね。しかもその金を競馬に注ぎ込んでも何も言わず。常識がない!とか、心ない人は言うかもしれませんが、ぼくらはそういう世界で生きているのです。世界の終わりを迎えたとしても、笑って馬を買うのです。下を向く暇はないのです。ぼくらが下を向くのは競馬新聞を読む時と、マークシートに記入する時だけです。さて、気が向けばゲスナーオフ会についても感想を書きたいと思いますが、あんまり覚えてないんですよね。じゃあまたね!

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