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【雑木林】生物たちのドラマと自然を届けるコラム

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生物や環境問題をネタにしたショートコラム集です。生物たちの意外な一面をユーモアを交えて紹介したり、環境問題をより身近に感じてもらったりするためのコラムです。誰にでも親しみやすく、…
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#生き物

増える猫、減る猫

 ナショナルジオグラフィック(日本版)の2022年3月号の見出しは、「よみがえるビック・キャット」であった。インドに生息しているベンガルトラとインドヒョウは、それまでの数百年の間で個体数が大幅に減少していた。しかし、同誌によると、2018年の個体数調査で3,000頭近い野生のトラが生息していることがわかり、個体数は2014年と比べて33%増加した。ヒョウに関しては、生息数は2014年から62%増え、13,000頭近くになるという。  一方で、個体数が減少し、もはや絶滅と言っ

「珊瑚道」—サンゴに学ぶ生き方

 サンゴの中には、たとえ同じ種であっても、生息している場所によってその姿が大きく異なるものがいる。例えば、ハナヤサイサンゴは、波が少なく穏やかな環境では複雑な枝状の形をしているが、礁縁部の白波が立ち激しい衝撃にさらされる環境では、一つ一つの枝が太くなり、より単純な形をしている。これは、波の衝撃に耐えるために彼らが施した工夫とも言える。 *  新渡戸稲造の著作である「武士道」には、「最も剛毅なる者は最も柔和なる者」という言葉がある。この一文は、精神について語っている部分が大

馬も人も知らぬこと

 馬は賢い。ドイツ語で「クルーガー・ハンス(賢いハンス)」と呼ばれた馬がいた。その由来は、彼が計算をすることができたことにある。計算ができる賢い馬として一躍有名になったハンスだが、種を明かしてしまえば、彼は計算をしていたのではなく、人間の表情を読み取っていたのだった。彼は数を答える際、その数だけ自身の蹄で地面を叩くのだが、正解の数に達した瞬間の出題者の表情を見て、それ以上地面を叩くのを止めていたのだ。 *  たとえ計算ができなかったとしても馬は賢い。長い間人類の家畜として