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年を越せなかった子のこと
先日、従兄弟の四十九日に行ってきました。従兄弟のヒロは自分から死んでしました。享年32歳。半年ほど前に挙式をあげて、子供も生まれたところでしたが。
とても明るい子で、エッヘッヘという感じの人懐っこい笑い方でよく笑う子で、いつだって場を和ませてくれるような。そんなどこにでもいるような普通の子です。
私は彼のあまりに意外な最期を信じられませんでした。
私は思い悩んでいるのではありませんが、こういうことがあると色々なものがはっきりと見えるなと思います。
まず、自殺と聞いただけで亡くなった方を蔑む人がいますが、それは辞めてほしいのです。「弱い人間」「逃げ」そんな言葉は、亡くなった方も遺族となったご両親も、もうすでに何万回と頭の中を巡っていることです。それはあんまり酷です。もしご自身が、「死んでしまいたいくらい辛い状況を、自分はが乗り越えて生きてきた。」と思うなら亡くなった方を否定するのではなく、生き延びた自分は強い人間だと誇りに思えばいいと思います。正直、今回のことで私の従兄弟について、私にそんな内容のことを言った人がいますが、「ヒロについて何を知ってると言うんだ?」と強烈な怒りが湧いてきました。どんなにくだらなく見える理由だって、本人にとっては耐えられないくらいの苦しみだったのです。
次に、ヒロはある人との関係性に苦しんで命を絶ちましたが、そんなことをしてもその相手にダメージを与えることなんてできません。遺族となったご両親の苦しみに比べるとゼロに近いです。腹が立つ人には生きて噛み付いてやった方がましです。そもそも他人を思いやる力のない人だから、自殺に追い込むまでに他人に酷いことができるのです。自分の非を認めることもできず、その人は遺書に名指しで書かれていても謝らなかったのだそうです。それに比べて、ご両親の苦しみは計り知れません。葬儀の時、叔母は泣き崩れて立ち上がることができなかったそうです。とっても明るい叔父の会話の中に「焼身自殺してやりたい」「殴り込みたい」そういう言葉が普通の調子で混じっていて、叔父の日常は変わってしまったことを思い知らされました。さらに自殺をしてしまえば死後、ご両親が膨大な手続き系統をしなくてはいけません。弁護士さんに相談しようにも、業務上必要なことなのか嫌なことをたくさん言われてボロボロに傷ついてしまったそうです。「生きて迷惑をかけないように死ぬ」なんて見当違いです。
そして、命を使ってまでしても何が言いたかったのかは伝わらないということです。
「これだけのことをして、何が言いたいことがあったんだろうけど分からない」と叔父は言っていました。心はずっと前から蝕まれていたのか。相手を凶弾したかったのか。自分に対する失望だったのか。混乱して突発的にしてしまったのか….。未来を全部放棄してしまうほど、心には何があったのか。
消えたくなってしまう気持ちはよく分かります。とても大切に思うものあるほど、その思いが強いほど、それが無くなった世界や自分に価値を感じられなくなるかもしれません。だけどその人の価値はそれだけではないはずです。四十九日には、子供の頃から知っている他の従姉妹がお母さんになって小さな子を連れてきていたり。自分だけで自分がいるんじゃなくて、そのお母さんにも生きてきたストーリーがあってその連続性の中にいるのになと思いました。ヒロのご両親には中々子供ができなくて、毎日プロテインを飲んでいて、やっと産まれた産まれた君のことを、じいちゃんもばあちゃんもたいそう喜んだんだよ。望まれて生まれて、大切に育てられたはずなのに。すっかり見えなくなって、孤独でいっぱいになってしまったのかな。
ヒロ、穴を掘って土の中で暮らすかい?
人間辞めるかい?
私は身体障害者の方には悪いけど、思うままに動く自分の身体が好きだなあ。身体の存在なんて普段ほとんど意識にすら登らないほど、思いのまま動けて、思い立てば目に入った山まで行くことだってできる。
1L100円のパック入りのコーヒーを「うまあ!」って言いながら飲んでる。
友達と芸術祭に行くっていう、私の夢は叶ったよ。
友達が仕事をくれて生き延びた。
老人みたいにボロボロになったって、丸まって、隠れたって、いつかの再起を待つことはできなかったかい?
光輝いて見えることが、本当に良質なものかどうかなんか分からない。裏返してみればスカスカかもしれない。
お金持ちも、すごい人もそんなのもういいです。(ヒロはそういうことに巻き込まれて行ってしまったところがあります。)
そんなの無視して、じっくり生きます。
そして、これからはすぐに「私なんかが」って弱さに逃げるんじゃなくて、人のことを受け止められるようになろうと思います。
「大丈夫?」ってあの時言えてたら?って思います。
弱さでも、悩みでも、バカな夢でも聞きたいんです。これから私はそういうことがしたいな。