月がとても綺麗だった

「別れて、関係がそれで終わりになるのが嫌だから付き合わない」

やってることは恋人同士と変わらないのに、なんで付き合わないの?と聞いた時の返答。付き合ってもない彼女の交友関係に口を出してくるなんて、そろそろやばいだろと話を振ったところだった。彼的に彼女は自分の好みじゃないらしく、好みじゃないのに付き合うと他に目移りしてしまい結局別れる、でも彼女とはそういう風に終わらせたくないから付き合わないのだと言っていた。彼女とずっと一緒にいるために、大学では恋人を作らないとも。

自分勝手だねという人もいるけど、私には彼が自分の本能的な部分を理性で上手くコントロールしてるように見えた。好みではないけど一緒にいる時間が長いゆえ今まで感じたことの無い感情は確かに生まれているらしく、なんとも言えない気持ちでそれを見ている。

みんなで食事から帰ってきた後、真っ暗な車内で満腹で流れる光を見ている時、「この子達先返していいよ」と彼は彼女に言った。私たちを家の前で降ろしたあと彼は助手席に座り直し、2人帰っていった。

特別扱いされていることに羨ましさを感じたのか。妙に寂しい気持ちを抱えてバイバイした。夜は本当に肌寒くなって、1人で歩いて家まで帰る道で見上げた空に浮かんだ月がとても綺麗だった。綺麗な分切なかった。

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