見出し画像

ニシキヘビ、コブラ…怖い、危険、気持ち悪い でもいつまでも身近にいて欲しい野生動物たち

    空港へ向けて車を走らせていたある雨の早朝、自宅から5分ほど行った所で、対向車線に1台のバイクが止まっていた。薄暗くてはっきりとは見えなかったが、バイクの前の路上に太いロープのようなものがあった。彼(彼女)がそのまま動かなかったことに、何か普通でないものを感じたらしく夫は車を止めた。するとロープが動き出した。立派に成長した大蛇だった。夫は「ヘビだ」と一言。私たち3人が見守る中、それはゆっくりと道路を渡り終えると雑草に覆われた溝の中に消えた。

 ある日、隣人から「天井裏にこんなものがいた」と写真が回って来た。動物園でよく見かける茶色と黒の模様がひと際目立つ、ニシキヘビだった。ネズミを追いかけていたらしい。野良猫もネズミを追いかけて走ることがあるが、余りにも大きな引きずるような音に異常を感じて、市役所のヘビ対策班に連絡して捕獲してもらったという。飼いネコや子犬が食べられたという話もよく聞く。ヘビはデンパサールから西へ3時間ほどの所にある、広大な国立公園内のヘビ保護地区で放されると聞いた。

 インドネシアのスラウェシ島では、2018年とその翌年にも、農作業をしていた人が丸ごと飲み込まれるという漫画のような事件が発生している。バリではジャズの生演奏をやっている店で、ヘビのショーを見た。上半身裸の若い男性が袋から重たそうなニシキヘビを取り出すと自分の体に絡ませ、最後に希望者の体にも。「ぎゅっと締めてくる感じがした」との感想を聞いて、手を挙げなくて良かったと思った。ヘビの犠牲者は骨が砕かれていたそうだ。そうでもしなければ、口に入らないだろうから。



 脱皮を繰り返すヘビは、死と再生の象徴。古代ギリシャでは健康のシンボルだったそうだが、放置しておけば死に至る猛毒を持っているものもある。例えば、コブラ。飼い犬のクロが執拗に吠えていたので、様子を見に行くと、わずか20センチほどの細いヘビが、体の半分近くを立てて、自分よりはるかに大きな、けたたましく吠え続ける相手に、全くひるむことなく飛びつこうとしていた。まだ赤ちゃんだというのに、頭の形といい、その攻撃性といい、まさにコブラ!おまけに口から飛ばす毒が目に入ったのか、クロはしばらく目をしばたかせていた。

何年か前に、NHKが先のヘビ保護地区の取材を計画し、私に通訳の話が来たが、結局、不要になったのか、実現しなかった。内心、ほっとした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?