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第4話ー初めて文章化するNYCで暮らして学校に通った6年間ー10代の少女が感じたこと 「皆、違う!」

「今日は新しい生徒がいるので紹介しよう」マンハッタンのカトリック系女子高校での最初の日の朝、担任教師が言った。名前を呼ばれて立ち上がったのは3人。他の二人は、一人が東京出身の日本人女子。もう一人はスペイン語なまりの英語を話すヒスパニック系だった。
 
周りを見てまず感じたのは、人種、民族の違いからくるのだろうか、成長の度合いが個人個人で大きく異なること。背が高く、緑っぽい色の目をしていたジョイスは、ファッション雑誌からそのまま抜け出て来たような、おもわず見とれる落ち着いた大人の女性、私に最初に声を掛けて来たジャマイカ生まれのローラは年齢よりずっと幼く見えた。お腹の出た「おばさん」風の女子がいる一方で、腰まで無造作に伸ばした黒い髪をなびかせて、男子のように大股で歩く生徒がいたりした。
 
黒人女子は、ほぼ全員が当時言われ出した「BLACK IS BEAUTIFUL」の価値観を反映した見事なアフロヘアー。専用の金属製のくしでしょっちゅう形を整えていて、そのたびに細い銀色のブレスレットがじゃらじゃらと音を立てた。大きなわっかのピアスにも驚いた。黒人らしさを強調した、独特のアクセントの英語を話していて、これは最後まであまりよく聞き取れなかった。
 
白人はアイルランド系が殆どを占めていた。NYでカトリック教徒の白人と言えば、たいていそうだ。髪はブロンドが多かったが、私と親しかったカレンは「レッドヘアー」。おまけに頬には顔にはそばかすがあって。まるで童話だと最初に会った時に思った。
 
残りのヒスパニック系は、コロンビア、メキシコ、プエルトリコなどからの移民か、あるいは移民を親に持つ女子。感情が高ぶるとスペイン語で話し、何を言っているのかは最後までさっぱり分からなかったが、芝居ががっていて聞いていて楽しかった。 彼女たちは一様に明るかった。私と一番仲良くしてくれたグループだった。
 
皆が「同じ」で、そうで同あることを良しとする日本とは全然違う。こんな世界があったんだと周りの女子を眺めていた。
 
授業はどうだったかって?一言も聞き取れなかった。教師の話す冗談に皆が笑っても、押し黙ったまま。「笑いを忘れたみたい」と同じクラスの日本人女子が言った。
 
とにかく、英語を身に付けないと…学校には日本人が全部で5人ほどいたが、私は挨拶以上のことはせず、できるだけ「アメリカ人」と話すことにした。今振り返っても驚くほどの猛勉強を始めた。

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