加工して個人データになるなら、生データを提供すればいいじゃない~エンターテイメント・ロイヤーズネットワーク2019年11月定例研究会雑感

11月29日(金)、ELNの定例研究会へ参加してきました。

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テーマ: コンテンツビジネス、データの利活用の課題と解決
~最近の著作権等の知的財産権を巡るトピックから~
講 師: 三尾美枝子弁護士(ELN専務理事、東京大学産学協創推進本部知的財産部長)
担 当: ELN理事 弁護士 奥原 玲子
概要: 11月の定例会では、実際の相談事例に則して、問題となる知的財産権に関する課題を摘示して、依頼者に対して提案できるソルーションを考えます。 テーマは書籍「エンターテインメント法務Q&A 第2版」(民事法研究会発行)から講師執筆の次の二つを取り上げます。
まず一つ目の相談事例は、研究者が自らの学術研究に基づき考案した体操の関するコンテンツを、ベンチャー企業で商品化して事業化するに際しての課題解決について議論します。
問題点の解決にとどまらず、新たなビジネスを創出するに際し、より有効な権利関係の構築などについても検討します。
また、コンテンツの創作に際して発生する、著作権、著作隣接権に関する問題について、議論します。その際に、コンテンツの伝達手段として放送を媒体とする場合と、インターネットによる配信の場合で分けて解決すべき問題点などを検討します。
二つ目は、今注目を浴びている、AI.データの利活用についての課題解決です。データの特殊性、有用性などを前提として、個人情報の問題なども考慮に入れつつ、 改正不正競争防止法(限定提供データ等)にも触れつつ、検討します。
なお、AIを利用する場合と、そうでない場合とに分けて、検討すべき課題を抽出し、適正な課題解決策を協議する予定です。

2つ目の議題の事例は、タクシー会社がドライブレコーダーを使って通行人を撮影したデータを大学へ提供し、さらに大学がそのデータを企業へ提供するというものでした。大学は当該データを研究に利用し、企業は当該データを自社のアプリ開発(例えば、交通アプリ)に利用する予定です。

タクシー会社が撮影したデータには、通行人の姿が映り込んでいます。通行人の姿が明確にとらえられていたとすると、このデータを大学→企業と渡していくことは可能なのでしょうか?

撮影時には当然、ひとりひとりの通行人に撮影(個人情報の取得)について同意を得てはいません。ですから、当然、タクシー会社から大学への第三者提供についても、同意は得ていません。


取得に際しての利用目的の通知は、個人情報保護法18条1項の手続きにのせて、タクシー会社のHPなどで利用目的をあらかじめ公表しておくという手があるのでは、と思ったのですが、そもそも通行人は自分が撮影されていることを知らないので、意味がないのではという意見がありました。

では、仮に、取得に際しての利用目的の通知がクリアできたとして、第三者提供についてはどう整理するのかという点が議論になりました。

ここで、大変興味深いご意見を伺いました。
保護法23条で第三者提供が制限されている対象は「個人データ」であり、「個人情報」ではない。
「個人データ」は「個人情報データベース等を構成する個人情報」であり、「個人情報データベース等を構成する個人情報」は、「~検索できるように体系的に構成したもの」という。
とすると、撮影したデータを加工などせず、生のままで体系的にもせず、検索などもできないような形で提供すれば、23条はクリアできるのではないか、というものです。

「加工して個人データになるなら、生データを提供すればいいじゃない」ということです。
感覚的には、加工しない生データの流通の方がアブナイ感があるのですが、どうなんでしょう。この理屈で実際に規制を回避した運用をされている企業さんはあるのでしょうか?

ただ、ここで重要なのは、仮にこの理屈で保護法の規制は回避できたとしても、レピュテーションリスクは残るということです。
そしてそのレピュテーションリスクを緩和できる理屈として、タクシー会社→大学については、「大学による研究のため」ということがありうるのではないかということでした(そうすると、大学→企業はたぶんダメ)。

太字のあたり、みなさんのご意見を伺いたいところです。

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