三浦法律事務所「M&Pフォーラム2019(セッション2:法とイノベーション~Approach to Innovation~)」参加レポート

2019年9月24日、三浦法律事務所の開設記念セミナー「M&Pフォーラム2019」に参加してきました。

画像1

会場は、9月12日に開業したての「The Okura Tokyo」。
めちゃくちゃゴージャスでした。
(↑の写真からは分かりませんが、とても盛況で、座席はほぼ埋まっていました。)

セッション1とセッション2がありまして、私が参加したのはセッション2の「法とイノベーション~Approach to Innovation~」です。

第一部「データの観点で考えるオープンイノベーション」

 パネリスト:
  石山洸氏(エクサウィザーズ代表)
  上原高志氏(Japan Digital Design代表)
  宍戸常寿氏(東京大学教授)
  松田洋平氏(経産省)
 モデレーター:
  日置巴美氏(三浦法律事務所弁護士)

そもそも、「オープンイノベーション」とは?

組織内のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすこと(Henry W. Chesbbrough,著書「Open innovation」(2003年)

「技術も日進月歩で進展してるし、ひとつの組織の中の限られたリソースでいろいろやっても限界がある。みんなで共有しよう。」のようなことだと、理解しました。

6月21日に出された「成長戦略実行計画」でも、しきりと言われているWordです(へー)。

そしてこの「オープンイノベーション」に関連した近時のHot Issueとしては、
・公取による「デジタル・プラットフォーマーに関するルール策定
・個人情報保護法の改正
が挙げられていました。

ともに、個人情報に関することだという点が興味深いです。
イノベーションがオープンになればなるほど、個人情報(パーソナル情報)の管理が重要になってくると。
どなたかが「(パーソナル)データは、現代の石油だ」とおっしゃっていましたが、まさにその通りなのだと思います。

個人情報保護法改正については、もう少し言及がありました。

画像2

(配布資料P14より)

見直しの最大のポイントは、
・利用停止権
・漏えい報告の義務化
とのことです。

さらにここで、例のリクルート内定辞退率データ提供問題と、データの利活用についても触れられました。

データの利活用について技術が進めば進むほど、中のアルゴリズムはブラックボックスになりがちで、どうしてそういう結果が出たのか説明できないという事態に陥るが、それについてはどう考えるべきか。
(「銀行の与信」に似ている。銀行側でどのような分析がなされて自分が金を借りられるようになったのか、自分にはまったくわからない。)

石山さんがおっしゃっていたのは2点。
・技術的な問題であり、これへの対応としては、説明力の高いディープラーニングということが検討されている(GAFAが投資してやっているらしいです)。
・もうひとつ重要なのは社会的受容ということであって、例えばリクルートの件だと、Hot pepperで同じことがやられていたとしてもあまり炎上しなかったかもしれないが、人材関連ビジネスだと大炎上する。

松田さんは、以下の点を考慮した上で、「規制」もまた変革しなくてはならないという趣旨のことを、政府の御立場からおっしゃっていました。。
・データを集めて手動で入力して何かの結果を出していた時代と違って、リアルタイムでデータを取ることができる。
・ディープラーニングは、もはや既存の技術とは違う。気候変動のように、全世界でパネルを作って検討すべき課題ではないか(これはフランスが言っていることのようです。)

最後にもうひとつ政府発信の情報に触れると、6月のG20での「大阪首脳宣言」には「Date Free Flow with Trust(DFFT)」という言葉も登場したとのこと。DFFTについては、パネリストの方が実務的観点から、
・事故があった場合のトレーサビリティを可能とする必要がある
・ユーザーや取引先からの信頼獲得のために重要
ということをおっしゃっていました。

順番は前後しますが、みんな大好き「情報銀行」にも言及があり、宍戸先生いわく、「これは日本独自の仕組みである」とのこと。
(否定する気はまったくないのですが、「日本独自の仕組み」って、地雷のような気がします。ガラパゴス化しないことを願います。)

第二部「イノベーションを支えるエコシステム」 

パネリスト:
  會田幸男氏(デロイトトーマツベンチャーサポート)
  加藤由将氏(東京急行電鉄)
  倉橋隆文氏(SmartHR取締役)
  後藤道輝氏(ベイミー代表)
  下平将人(ドリームインキュベータ)
 モデレーター:
  尾西祥平(三浦法律事務所弁護士)

基本的なことですが、「エコシステム」とは・・?

「ヒト、モノ、カネをぐるぐる回す土壌を作ること」

エコシステムにおいて、ファイナンスは重要です。
2012年以降、資金調達の額は増えていて、なんと6倍になっているそうです。
internet×smartphoneの分野は成長産業ではなく、医療・教育・金融・最先端研究領域がアツイとか。

第二部では、パネリストの方の所属会社が運営するサービスや、関わったサービスの説明がされていました。
(すいません、あんまメモがないです。)

paymeさんのお話が印象的でした。
ローンチ当時ちょっと炎上し、その後グレーゾーン解消制度を使ってサービスの適法性を担保しましたが、ローンチ当時の状態は「問題があるかもと気づいてたけど、ここまで話題になるとは思っていなかったので重要視してなかった」だったそうです。

第三部「イノベーションの壁を乗り越えるルール形成」

 パネリスト:
  奥田匡彦氏(ミクシィ取締役)
  日比谷尚武氏(Public meets Innovation理事)
  藤井宏一郎氏(マカイラ代表)
  吉川徳明氏(メルカリ)
 モデレーター:
  尾西祥平(三浦法律事務所弁護士)

第三部は、「法改正の歴史」から始まりました。
不正アクセス禁止法、古物営業法、青少年育成条例、資金決済法、リベンジポルノ、児童ポルノ、クラウドファンディング、個人情報保護法、民泊、チケット不正転売・・・
「懐かしい」という感じでした。

そして「どの法律が一番印象に残っていますか」という質問に、メルカリの古川さんが「チケット不正転売法です・・すいません・・」と肩身を狭くされていたのが気の毒でした笑。
(ちなみに私が一番印象に残っているのは、資金決済法の制定です。当時は情報収集とかあまりやっておらず、自社で発行するポイント(前払式支払手段)が規制にかかってくるという話を、法施行の3か月ぐらいまえにキャリアからの通知で知って、すべての対応が後手に回って死にたくなった思い出があります。)

そして流行の「ルール・メイキング」については、「ルールをメイクするだけが仕事ではない」という視点が印象的でした。
例えばコンプガチャ問題は、業界団体の尽力で「ルール(法律)」が制定されることが回避できた例だと。
ルールを作るだけでなく、(変な)ルールを作らせないということも大事。

そして、ルールを作る(変える)には、そのルールを作って(変えて)やりたいことやサービスが、社会への貢献になることを自信をもって説明できることが重要だともおっしゃっていました。単なる一企業の利益だけが根拠だと、話はうまくすすまない。
先ほどのpaymeさんも、いろいろ批判があって心が折れそうにはなったけど、「資金がないだけでチャレンジの機会を奪われる人をなくしたい(→給料の前払い)」というポリシーがあったから、戦えたと。

まとめ

長丁場で、それぞれの論点は軽くしか触れられなかったですが、イノベーションという表現はともかく、なんとなく今日的な論点をざっとさらったお話しを聞けたという感想です。
よくわからないカタカナ用語には惑わされずに、たまに起こる他社の炎上事件を糧に、慎重に自社のサービスの検討をしてきたいと思いました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?