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まさかの大統領! えー? 私がですか?!

読み応えがありましたねぇ、この本、「まさかの大統領/ハリー・S・トルーマンと世界を変えた四カ月」。

トルーマン大統領っていうと今でこそ有能な大統領だったっていう評価がある人だけれども、ルーズベルトが脳卒中で急死したことから、副大統領から繰り上げ式で大統領になったときには、国民の反応は「え? あの人、誰?」って感じだった。そもそもアメリカの副大統領なんて「世界一無駄な職業」と揶揄されるように、大統領選のサポートと上院議員の議長を務める以外は重要な仕事はひとつもなく、世間の関心に登らない。しかもトルーマンは“敵が少ない無害な男”として都合よく副大統領に担ぎ上げられたような人で、ルーズベルト大統領もそんな彼のことを見下していた節があり、第二次世界大戦というこれ以上のない戦時下にあっても、彼に何かを相談するということもなく、マンハッタン計画のことも彼には秘密にしていたほどだった。だからトルーマンがまさかの青天の霹靂で大統領になっちゃったときの、当時のホワイトハウス担当記者はこう回想している。「まるでそこらへんの通りから適当に拾ってきたようなおじさんがホワイトハウスにやってきた」と。

ところが、そんなトルーマンが大統領になってからの四ヶ月間。歴史は凄まじい勢いで容赦なく動いていったんですね。イタリアの降伏。ムッソリーニの処刑。ヒトラーの自殺。ソ連軍のベルリン占領。ナチスドイツの無条件降伏。日本本土大空襲の激化。東奥諸国を巡ってのソ連との軋轢。日本上陸作戦をいつ実行するのか。チャーチル、スターリンとのポツダム宣言に向けての難航する交渉。そしてなによりもその間、粛々と進められていたマンハッタン計画と、その最初の成果となる日本への原爆投下をどうするか。そんな過酷極まる状況にカリスマ性もなにもないフツーのおじさんがそこにいきなり投げ込まれてしまったというわけで、これほど困難で、これほど重い責任を負った大統領は世界史史上誰もいない。しかもそれが、フツーのおじさん! さぁ、どーする? トルーマン!

驚くべきことにトルーマンはやり遂げてしまうんですね(それが歴史的によかったのか悪かったのかは神のみぞ知る)。なによりも読み応えを感じたのはアメリカ側の視点で第二次世界大戦を頭の中でトレースできたということ。そしてマンハッタン計画というのは、つくづく人類にとってパンドラの箱だったと深く考えさせてくれたこと。辞書みたいに分厚い大著なので誰にもオススメってわけでもないけれども、ここらへんのことにご興味ある方にはオススメですよ!


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