20230503


・インド「人口最多」
国連人口基金(UNFPA)は4月19日、長年予想されてきたアジアの二大大国の人口逆転が今年半ばに起きることを確認し、インドの人口が14億2800万人を超え、中国を約300万人上回ると予想した。
国連はインドの人口が今後数十年にわたって増加し続ける一方で、中国の人口は減少し続け、今世紀末に10億人を割り込む可能性があると予測した。中国では今後何十年間にもわたり退職する人が増えていく一方で、労働人口に加わる若者は減っていく見込みだ。

インドの元外務次官で、現在はシンクタンク「インド国際センター」の評議会議長を務めるシャム・サラン氏はこう語る。
「人口減少という構造的な制約のために中国経済が減速するという話は中国政府にとって都合が悪い。このまま中国が経済成長を続け、49年までに『中華民族の偉大な復興』を果たし、その前には経済規模で米国に追いつくことをまだ期待しているからだ」
 
・出生率 2023/05/03
新しい中位推計は出生率の長期想定を前回の1.44から1.36に引き下げた。21年の実績値は1.30、22年は05年以来17年ぶりに1.2台に下がったとみられる。23年を1.23と過去最低水準に下がるとみたうえで、長期的に1.36への回復を想定している。

東京財団政策研究所の千葉安佐子・博士研究員は、コロナ禍の3年間に失われた婚姻数が16万1千件あり、この埋め合わせがなければ計23万9千人の出生が失われると試算している。

・物価高倒産、昨年度463件で過去最多
帝国データバンクの集計では、仕入れ価格の上昇や価格転嫁できなかったことを倒産の理由に挙げた企業数は22年度は463件だった。21年度の136件の3.4倍となった。特に23年3月は単月で67件と過去最多を記録した。

日本の価格転嫁は米欧に比べて進みが遅い。
日本総合研究所の山田久氏は消費者物価指数(生鮮を含む総合)と企業物価指数から価格転嫁の進み具合を算出した。企業間取引を示す企業物価の上昇が、一般のモノやサービスの価格にどれだけ反映されたかを分析した。
コロナ禍の20年7~9月期と22年10~12月期を比べたところ、日本の転嫁率は20.3%で、米国(48.5%)や欧州(58.1%)の半分以下だった。

特にサービス業で進みが遅い。帝国データバンクが22年12月に企業が100円のコスト増をどこまで転嫁できているか調べたところ、娯楽サービス業(12.7円)、運輸・倉庫業(20.0円)、旅館・ホテル業(21.7円)となった。
飲食や宿泊業では最低賃金の上昇も重荷となっている。運輸業では時間外労働の上限規制が適用される24年問題もちらつき、コスト増が進む可能性がある。

・首相、7年ぶりアフリカ訪問へ グローバルサウス取り込み
岸田文雄首相は4月末からの大型連休にアフリカを訪問する。南半球を中心とした新興・途上国「グローバルサウス」への中国とロシアによる接近を警戒したためだ。5月に広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)を前に民主主義陣営への引き込みを狙う。
首相がアフリカを選んだ背景には働きかけを強める中国とロシアの存在がある。
ロシアが食料供給などでアフリカに圧力をかける実態も目立つ。22年3月の国連総会でロシア非難決議を棄権した35カ国のうち半分ほどがアフリカの国だった。


・ゲーム原作、ヒット相次ぐ
任天堂の人気ゲーム「スーパーマリオ」を題材とした映画が記録的な興行収入となっている。公開から5日間で世界で約3億7800万ドル(約500億円)を稼ぎ、「アナと雪の女王2」を上回った。「プレイステーション(PS)」の人気ゲームの実写化も好調だ。ゲーム原作が新たなエンターテインメントの発信源となっている。

ソニーグループ ラスアスについてPSを展開する米ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の関係者は「ドラマをきっかけにゲームに興味を持つ、新しい顧客獲得につながった」と手応えをみせる。
「CG技術が進化してゲームの世界観を描けるようになったことが最近のヒットにつながっている」
また「ゲームを楽しみながら育った世代がプロデューサーや監督になる時代になったことも大きい」(業界関係者)。
マリオの映画は、マリオ生みの親である宮本茂氏が共同プロデューサーを務めて世界観を再現した。

・重大な出来事や事件は企業組織を変える。
3年にわたる新型コロナウイルス感染症流行は、企業組織のあり方に大きな影響を与えた。変化は、テレワークやオンライン会議の拡大、人材の採用や離職、事業再編、多角化と新規事業開発、グローバル化戦略やサプライチェーン(供給網)再編など多岐に及んだ。
・「イベントシステム理論」 重大な出来事や事件(イベント)が企業組織に与える影響について。ある出来事の詳細よりも、似たような内容の出来事が企業組織に与える共通の影響を主な分析対象とする。
この理論は自然災害、経済危機、技術革新などのマクロ事象や、企業不祥事、経営者交代、売り上げ拡大などのミクロな出来事が、企業組織の活動や仕組みに与える影響のパターンを取り扱う。
例えば大地震が起きると、リスクマネジメントの取り組みがなされる。こうした出来事や環境変化への企業の対応能力は、その内部の特性や組織能力により異なると考える。
・イベントシステム理論は特に影響力の強い出来事の効果に注目する。影響力の強さについて、モーグソン教授らは3つの側面があるとする。出来事の(1)新奇性(2)破壊的な影響力(3)内容の重大さ
・ある出来事が、新たなパターンで、従来と全く異なる内容で、自社のビジネスに重大な影響を与える場合、組織に重大な影響を与えるだけではなく、対応の難しさが増す。コロナ禍は運輸業や宿泊業にとってまさしくそうだった。
出来事は企業の外部からくるものだけではなく、内部の問題として生じることもある。近年流行している、飲食店従業員の迷惑行為のSNS(交流サイト)投稿は、衛生や経営上の不祥事であり、その対応が厳しく問われる。
・イベントシステム理論では、企業組織の持つ内部の個性や組織能力が重大な出来事への対応能力に差をつけ、業績に差を与えるとしている。
・パンデミック(世界的大流行)前後において生産性が向上した企業を、低下した企業と比較、その結果、労働装備率では差は相対的に小さいが、売上高営業利益率や資本生産性が高いと差が大きくなると指摘
つまり設備投資ではなく、本業が強く、既存設備を有効活用できる企業が危機下でも生産性を高めたことになる。
・組織変革の段階は、(1)経営改革への動機付け(2)変革ビジョンの形成(3)変革への社内支持の拡大(4)変革への移行管理(5)変化の維持――となるが、このいずれにも出来事は大きな影響を与える。
・従来の組織変革論は、企業文化、リーダーシップ、組織学習などの内部要因を重視し、出来事の影響をあまり見ない傾向にあった。新理論は、これが「静態的に」過ぎると批判する。
例えば、経営者交代という重大な出来事は、組織文化や学習にとって無視できない要因だろう。
・「根拠(エビデンス)に基づく変革管理」理論を提唱する。組織変革の検討には、組織内の情報だけではなく、外部からの情報を集めるべきだとする。
例えば、顧客や株主、取引先などからの評価・意見や、専門家や学術研究からの知見も集めて、変革の課題や手法について検討すべきだとする。

コロナ禍は、イベントシステム理論を用いた企業組織への影響に関する研究を世界規模に拡大した。例えば、パンデミックは世界的にテレワークという勤務形態を一般化したが、これが社員の勤労意識に与える影響が注目されている。
オーストリア・ウィーン大学教授のクリスチャン・コルンカ氏らは、20年と21年に在宅勤務をした労働者の意識について2つの時点間で比較分析を行い、エンゲージメント(関与)や幸福感の減退がみられるとした。
ただ、テレワークを行う能力に対する自信と、職場や周囲からの支援が、この減退を抑制するというアドバイスを行っている。
・また、オンライン上の仮想チームの協働状態についての比較分析を行い、流行初期よりも、後の時期の方がオンライン作業への習熟もあり、作業実績がよくなることを示した。
・パンデミックは起業家の活動にも大きな影を落とした。
他方、高学歴や勤務年数よりも、起業家としての情熱が高いほうが、新たな機会の発見と技術革新に熱心に取り組むという傾向も見いだした。

重大な出来事が企業組織に与える影響は、実際の企業行動を考える上で重要な意味を持つ。コロナ禍は、旅行産業に大きな打撃を与え、地方の観光開発に関わるコンサルティング事業への展開など、従来の旅行ビジネスからの多角化を促進した。
例えば、近鉄グループホールディングスは、沿線消費者向け事業に偏っていた点を反省し、新規事業開発にも重点を置くと表明した。
・新理論では、影響力のある出来事や事件が引き起こす、経営者や社員に対する心理的な影響も重視される。ある出来事や事件は、社長を元気づけるかもしれないし、社員の気をめいらせるかもしれない。
また、社内政治にかかわる具体的な出来事や事件が起きると、社員が社内政治的な行動を意識し、それによるストレスの発生に強く影響するという。
今後の組織内政治の研究では、出来事の内容や影響を積極的に検討すべきだとしている。

<ポイント>
○出来事が新奇なほど与える影響は甚大に
○コロナ下の企業研究は経営にも寄与する
○組織の影響見極めが企業の将来を分ける

▼インフレ抑制法(IRA) 2022年8月に米国で成立した法律で、財政赤字の削減により過度なインフレを抑制することに加え、それを原資としたエネルギーや気候変動の分野に総額3690億ドル(約49兆円)の資金を支援することが主な内容。
 自動車では北米で最終的に組み立てられ、さらに材料や部品の一定割合を指定地域で調達、製造したEVなどの電動車に優遇措置を適用する。米国内のEV普及や中国製の電池材料排除が目的とみられている。生産の米国移転や部品構成の変更、日欧の生産拠点空洞化への懸念もある。

・日本勢は北米生産に占めるEV比率が現時点で1%に届かず、2030年ごろでも2割にとどまる見通しだ。
・米国では22年8月、EVに税優遇する歳出・歳入法(インフレ抑制法、IRA)が成立した。EVなどの新車を購入する消費者に対し、最大で7500ドル(約100万円)を税額控除する。支援の対象は北米で組み立てられた車のみとなるため、世界の自動車メーカーがこぞって投資に動く。


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