20230515
・転職が賃上げのけん引役になりつつある。中途採用の平均年収は2023年に約3%上がり、平均賃金上昇率の1.2%を上回った。
国内の転職は給与が下がる「キャリアダウン型」が多かったが、22年は1割以上増えた人が過去最高の33%となり10年ほどで10ポイント高まった。
新型コロナウイルス下で停滞していた転職が再び活発になっている。リクルートの運営する転職支援サービスでは22年の転職者数がコロナ前の19年比で3割増えた。15年と比べると2倍になる。総務省の調査でも22年は月平均303万人と前年比で13万人増えた。転職者は10年代後半に急増し19年に過去最高の353万人に達した。コロナ禍で300万人を割り込んだが経済正常化で再び増加に転じた。
リクルートによると転職で賃金が1割以上増えた人は22年に過去最高の33%となり、10年比で10ポイント上がった。
転職が賃上げに直結し始めた背景には専門人材の争奪戦がある。人材サービスのフロッグ(東京・千代田)が収集した転職求人のデータを分析したところ、人材募集時に提示する平均年収は23年2月に531万円と前年同月より2.9%上がった。21年2月比では6%超の上昇になる。
特に伸び率が高いのが金融や情報だ。21年と比べた23年の伸び率は金融・保険が14%、情報・通信が10%だった。
・転職 求人倍率、2倍以上で推移
▽…国内の転職者数
90年代前半に月平均200万人台だった転職者は98年に300万人を超えた。リーマン・ショック後の2010年に300万人を割り込んだが、経済が持ち直した10年代後半に再び増加に転じた。
転職希望者に対する求人倍率(全業種平均)が22年8月以降、2倍以上で推移する。業種別ではコンサルティングや人材サービス、情報・通信が6~7倍と特に高い。求人倍率の高い業種は賃金水準も高い傾向にある。
▽…転職に伴う労働者の移動が経済成長につながることもある。
・再エネ拡大へ送電網増強 50年5割を前提、整備急務
電力広域的運営推進機関(広域機関)は3月29日、2050年までの広域送電網の整備計画を公表した。
計画に盛った増強分を足し上げると全国で1150万~1350万キロワットと原子力発電所11~13基の発電能力分に相当する。
日本は既存の送電網の空きが足りず、再生エネ普及のネックとなってきた。地域間でわかれている送電網を結ぶ「連系線」と呼ぶ太い送電線も容量が足りず、地域間融通が十分でなかった。
他の地域で電力が余っているのに首都圏で電力が足りなくなったり、九州で電力を使い切れず太陽光の発電を事前に止める「出力抑制」が起きたりしている。
導入が遅れる再生可能エネルギーの拡大に向け、6兆~7兆円を見込む巨額投資を円滑に進める環境をつくる
・ムスリム観光、広がる岐阜
国民にムスリムが多いマレーシアとインドネシアの訪日客に占める割合は、22年に計5.1%と1.7倍に急伸した。
マスターカードとクレセントレーティングの22年の国際調査では、ムスリムの人口は約20億人で増加が続く。世界的なムスリムの旅行者数も24年にはコロナ前の水準まで回復。世界での観光支出は28年までに約30兆円に達する可能性があるとみる。
イスラム教の教義に沿った食事など「ハラル」への対応が話題の中心だったが、食事以外でもできる範囲で配慮する「ムスリムフレンドリー」の考えが徐々に浸透している。
非イスラム圏でムスリムから評価の高い旅行先として日本は22年には6位と、15年の11位から上昇した。今後の市場拡大も見込んで、訪日ムスリムの取り込みに関心を寄せる地方都市は増える。
・サイバー対策、国が関与
電気などの重要なインフラ企業が導入する設備を国が事前審査する基本指針を閣議決定
電気や鉄道、金融といった基幹インフラ14業種が対象となる。24年春の運用開始を目指す
設備の製造国や供給元の役員の国籍など、外国からの影響の有無に調査の重点を置く。
情報通信研究機構(NICT)の調査によるとサイバー攻撃は15年から20年までの5年間で8.5倍に増えた。日本では政府機関やインフラ企業を狙った攻撃や予兆が確認されている。
・大工、20年間で半減
国勢調査によると、大工の人数は20年時点で29万7900人。40年前の1980年と比べると約3分の1の水準
「建設・土木作業員全体でも人数は減っているが、減り方はピーク期の300万人超から200万人弱へとおよそ3分の2の減少だ。大工の人数の落ち込みは著しい」
ほかの業種より高齢化も際立つ。20年時点で大工の約60%が50歳以上で、うち30%超は65歳以上だ。一方、30歳未満は7.2%にとどまる。「このままなら、35年前後に約15万人となり、40年代前半には10万人を切る水準まで減る」
待遇改善が遅々として進んでいないことが若い人材が入ってこない一因
大工の年収は最新の21年で、雇用される労働者は約364万円、「一人親方」と呼ばれる個人事業主は約424万円にとどまる。いずれも電気工や鉄筋工など、ほかの分野を含む平均年収を下回っている。
「今後は人口減を背景に住宅新築は漸減が見込まれるが、予測される大工の減少はさらに早いペースで進む」
すでに住宅新築の現場では異変が起きている。不動産コンサルタントのさくら事務所(東京・渋谷)が建築主からの依頼で第三者として新築現場を調べたところ、不具合の発生率が上昇している。特に断熱材の設置や耐震性に関わる構造部などの不具合は22年に過去最大となった。同社の田村啓氏は
「大工だけでなく、ミスのチェックを担う現場監督らも不足し、現場の疲弊が不具合の増加を招いている」「新築だけでなく、既存の住宅の修繕で大工の不足の影響が深刻になる可能性もある」
・将来推計人口
・医療・介護・年金は働いている現役世代が保険料を仕送りして成り立っているため、少子高齢化が進めば持続性は危うくなる。
必要な財源は保険料や税で広く薄く全体で負担する必要があるだろう。能力に応じて保険料などを支払う応能負担も徹底すべきだ。高齢者には保有している金融資産も考慮して負担を求めたい。
公的医療は75歳以上なら医療機関での窓口負担は原則1割だが、年齢で区切らない方がいい。健康寿命は伸びており、制度が時代にそぐわなくなっている。
少子高齢化で将来の公的年金の水準は下がるものの、受け取り開始を1カ月遅らせるごとにもらえる額は0.7%ずつ増やせる。「繰り下げ受給」のためには長く働くことが欠かせない。公的年金を受け取るまでは中継ぎとして個人型確定拠出年金(イデコ)などでカバーする。
保険料が天引きされて手取りが減る「年収の壁」を気にして就業を抑えるより、しっかり働いて賃金と将来の年金を増やせば老後の備えになる。
少子化対策
・人口を維持するために必要な出生率の水準は「人口置換水準」と呼ばれ、近年の日本では2.06程度とされる。
日本の合計特殊出生率は1970年代半ばに人口置換水準を下回り、その後も低下し続けている。90年代後半以降は、出生率は1.3~1.4前後で推移している。
人々はなぜ子どもをもつのか。経済学はこの問いに対し、人々がより幸せになれるよう、子どもをもつか否か、もつとすれば何人かを決定すると答える。
経済学の視点での「幸せ」は、子どもをもつ喜び、物質的豊かさ(消費量)、余暇時間量(好きなことに使える時間)の3つで構成される。人々は自らの嗜好に基づき、最も幸せになれるよう、子どもの数、労働時間量、余暇時間量を決める。活動可能な時間が有限である以上、3つの要素を同時には増大させられない。
労働時間を増やしてより多くの所得を得れば消費量を増やせるが、余暇時間は減る。所得が増えれば子どものための支出を増やせるが、子育てに使える時間が減る。そのため、もてる子どもの数には限界がある。
日本男性の家事育児時間が国際的にみても非常に少ないことは、少子化の重要な要因だ。
働く母親は仕事から帰宅後、家事育児の大半をこなさねばならない。この状態では子どもを2人もって余暇時間をほとんど失うよりも、子どもが1人で余暇時間を確保する方が幸せになれると考える母親は多い
さらに、母親がより幸せになるため、組織の中で昇進を重ね、高い所得を得て消費量を多くすることを重視する場合、子どもに時間とエネルギーを使う必要がある状況(例えば保育園の迎えなどで定時に退社しなければならない状況)をできるだけ短期間で終わらせたいと考え、希望子ども数は少なくなる。
子どもをもつ喜びを、子どもをもったことのない未婚者はメディアや両親、子どもをもつ身近な人の状態を観察して得られる情報に基づいて予測する
○結婚意欲も希望子ども数も低下傾向続く
○夫の家事育児参加へ男女間賃金格差正せ
○子どもと触れ合う機会を増やすのも有効
・理化学研究所 3/28に国産初の量子コンピューターが稼働
量子コンピューターは複雑な問題をスーパーコンピューターの1億倍以上の速さで解く可能性をもつ。国産初号機の開発は富士通やNTTも参加し、政府も国費を投じて支援した。計算の基本素子で性能の目安となる「量子ビット」の数は64と、米IBMが2021年に川崎市に設置した27量子ビットの量子コンピューターを上回る。
政府や理研は高性能化を急ぎ、25年度に100量子ビット超の次世代機を開発する。スパコン「富岳(ふがく)」と連携し、早期実用化につなげる計画も進める。現在の量子コンピューターは計算に誤りが起こるが、こうした課題の改善にも注力する。
量子コンピューターの高性能化などと並んで重要なのが、利用する企業側の競争だ。従来のコンピューターと計算原理が異なり、どんな用途で力を発揮するか世界でも手探りの段階だ。理研は国産機を通じて企業や大学と共同研究を進め、富士通は富士フイルムや東京エレクトロンと連携して用途開拓に取り組む。
量子コンピューターの高速計算ではこれまで10年かかっていた素材開発などの期間を1年に早めるといった効果が期待される。脱炭素に不可欠な電気自動車(EV)用の電池や人工光合成の技術などが有望な候補で、関連産業が集積する日本の優位性は大きい。
三菱ケミカルグループは次世代電池、JSRは半導体向け材料の開発などに導入する研究を先駆的に進めてきた。トヨタ自動車やソニーグループは川崎市のIBM製の実機を利用する協議会に参加し、活用のノウハウを収集する。
・気温上昇1.5度へ瀬戸際 世界の気象災害損失、年40兆円
・気温上昇が2030年代にも抑制目標の1.5度に到達
・洪水や干ばつなど気象災害の損失は昨年40兆円に
・脱炭素投資を今の3〜6倍に増やすべきとの試算も
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が20日公表した報告書は、各国の温暖化対策の遅れに危機感をにじませた。産業革命前に比べた世界の気温上昇は2030年代初めにも抑制目標の1.5度に達すると予測した。温暖化が進むほど水不足なども深刻になる。
化石燃料への依存が続き、温暖化ガス排出量が多いままの4度上昇のシナリオだと、足元の世界人口の半分にあたる最大40億人が水不足に直面する。
熱波も深刻だ。気温が2.7度上がる場合、世界の65%の都市で暑さ指数が40度以上という深刻な猛暑日が年1回以上発生する。
「人為的な気候変動が自然や人々に広く悪影響と損失・損害を与えている」
英保険仲介大手のエーオンによると22年の台風や洪水などの気象災害の損失は2990億ドル(約40兆円)に上った。特に懸念されるのは発展途上国だ。10〜20年に洪水や干ばつ、暴風雨による死亡率は他の地域の15倍だった。
コストは10年からの10年間で太陽光発電とリチウムイオン蓄電池が各85%、風力発電で55%減った。価格低下によって導入量は太陽光が10倍、電気自動車が100倍に急増した。