20230720

  • サービス価格2.8%上昇
    物価上昇の裾野がモノからサービスへと広がっている。住宅を除くサービス価格は3カ月連続で2%を上回った。賃金の動向を映すサービス価格はいったん上がり始めると簡単には下がりにくいとされる。インフレの主因が資源価格の高騰から人件費の上昇に移り、物価上昇が想定以上に長引く可能性が出てきた。
    5月の消費者物価指数(CPI) 住宅を除くサービス価格の上昇率は前年同月比で約2.8%
    政府・日銀が掲げる物価目標(2%)を3カ月連続で上回る
    CPI全体のうち、住宅を除くサービス価格の割合(ウエート)は31.5%を占め、財の50.5%に次ぐ大きさ。
    米連邦準備理事会(FRB)は、住宅を除いたサービス価格について「インフレの今後の推移を理解する上で最も重要なカテゴリー」と語った。「賃金がサービスを提供するうえで最大のコスト」で、賃上げが物価を押し上げるメカニズムが働いているかを示すためだ。
    日銀もサービス価格を注視している。「賃金が一定のトレンドで上昇すれば、主にサービス価格等の寄与を通じて、物価それ自体もまた一定のトレンドで上昇する傾向を持つ」
    賃金と密接なサービス価格は、いったん上がり始めると簡単には下がらない性質も持つ。

  • 物価高・人手不足…倒産が急増
    東京商工リサーチが10日発表した2023年上期(1~6月)の倒産件数 1~6月期の倒産件数は4042件。産業別では、資材費高騰が続く建設業が前年同期比36%増の785件、円安による輸入物価高が響く製造業が37%増の459件と多かった。 小売業は燃料代が膨らみ、25%増の434件だった。   倒産企業に共通するのが人手不足や物価高 経済活動が正常化するなかで人手を確保できなかったり、給与水準が上がって採用できなかったりする例が増えた。中小はエネルギーや資材費高騰の転嫁も不十分だ。   「人手不足倒産」の典型が飲食業で、上期は79%増の424件と過去最多となった。「小規模の飲食店の倒産が増えている」   「物価高倒産」も広がっている。     コロナ禍前の年間倒産件数はおおむね8000件前後だった。 21、22年は手厚い資金支援により2000件ほど倒産が抑えられていた。資金繰り支援として政府が導入した、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などが企業を支えた。 支援の期限切れとともに倒産件数が増えている。

  • イールドカーブ・コントロール(YCC)
    ▽…日銀が短期金利と長期金利の両方を目標の水準に誘導する金融政策の枠組み。「イールドカーブ・コントロール(YCC)」とも呼ばれ、2016年9月に導入した。それまでの伝統的な金融緩和は短期金利のみを操作対象としたのに対し、長短金利操作では残存年限(満期までの期間)ごとの金利をつなげた利回り曲線(イールドカーブ)全体の押し下げを目的とする。
    ▽…日銀は利回りを抑え込むために国債を買っている。大量購入に伴ってゆがみが出ていた債券市場の機能に配慮し、22年12月には10年物国債の利回りの変動幅の上限をそれまでの0.25%から0.5%に引き上げた。3月以降は米欧発の金融システム不安が影響して日本の長期金利にも低下圧力がかかっていた。
    ▽…長期金利は固定金利の住宅ローンへの影響が大きいとされる。企業が返済期間の長いローンや社債で資金調達する際の金利の参考ともなり、設備投資判断にも影響する。本来、需給や景気の見通しを反映して動く長期金利を人為的に抑え込むことで、市場をゆがめているとの批判もつきまとう。

  • 夏のボーナス最高89.4万円
    2023年夏のボーナス調査最終集計(6月30日時点)は、全産業の平均支給額が前年比2.60%増の89万4285円
    9.96%増と過去最高の増加率だった非製造業が全体をけん引した。
    全体の伸び率は前年の11.29%から大幅に縮んだ。
    組合員数で全体の7割超を占める製造業が0.82%増にとどまったことが響いた。
    非製造業は11業種中9業種でプラス 鉄道・バスの伸び率が最も大きく26.81%増だった。
    JR東日本が18.04%増の89万8700円。
    インバウンド(訪日外国人)需要の拡大が見込める空運も好調。
    情報・ソフト(12.24%増)が続き、経済活動正常化への期待感から百貨店・スーパーも6.30%増
    「夏ボーナスの伸び率2.60%を受けても実質賃金のマイナスは続く。旅行など一部サービス分野は回復が期待できるものの全体としては夏のボーナス商戦の大幅な回復は期待しにくい」と話している。
    23年夏のボーナスは製造業の停滞が鮮明となった。
    調査では、製造業が従業員数で全体の約7割を占めており、影響度が高い。多くの企業が原料などのコスト高に直面する製造業は0.82%増と伸び悩み、全体の伸び率停滞につながった。
    業種別で最大のマイナスとなったのが繊維の9.41%減で、前年から13.61ポイント低下
    化学も4.22%減で、前年から11.42ポイント下がった。
    鉄鋼は4.73%減
    製造業の中でも半導体関連は引き続き好調
    ディスコは3.04%増の377万3654円、東京エレクトロンデバイスも46.52%増の208万9069円
    精密機械は10.01%増。血液検査機器大手のシスメックスは27.68%増の121万5150円
    「原料高に加え中国経済の停滞で22年度後半に輸出が伸び悩んだことも製造業には重荷だった」一方で冬のボーナスは「国内の経済正常化で非製造業はさらに伸びるだろう。製造業も輸出の回復で伸びが期待でき、消費にもプラスとなりそうだ」

  • 物価高緩和策「廃止を」
    政府の経済財政諮問会議の民間議員が物価高の激変緩和策について経済・物価の動向を見極めつつ「段階的に縮小・廃止する」よう求める
    新型コロナウイルス禍からの正常化にあわせ「歳出構造を平時に戻していくべきだ」と提起する。
    政府は22年1月からガソリン価格の激変緩和策として石油元売りに補助金を支給し、予算額は累計で6兆円に達した。23年1月使用分からは電気・都市ガス料金の負担軽減策も始め、3兆円ほどを充てる。いずれも9月までが期限
    経済産業省の石油統計によると、22年度のガソリン国内販売量は4477万キロリットルと前年度比で0.6%増え、7年ぶりに増加
    激変緩和策の長期化は、本来は需要が低下すれば価格も下がる市場メカニズムや脱炭素を阻害する結果をもたらしている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?