横断幕中耳炎【毎週ショートショートnote】

その日、耳鼻科の診察室に来た患者は、最近耳が聞こえにくいと言う。
山口医師はファイバースコープで彼の耳を診た。

外耳道に炎症が起きて鼓膜まで腫れている。
そのために聞こえにくくなっていると思われた。

さらに画像を拡大すると、外耳道にある縦、横、斜めの細かい傷が組み合わされて、横書きのカタカナ文字になっていた。

ガ　ン　バ　レ　！

「こ、これは横断幕中耳炎だ！」
細かい傷が集まり、横断幕のように横書きの言葉を表示する。
山口は文献で読んだことがあるものの、実際に見たのは初めてだった。

「ガンバレ」以外にも「ヤッタネ」「ファイト」が発見されているが、「！」があるのは珍しい。
何万人に一人という症例、学会に発表すれば受賞間違いない！

震える手でスクリーンショットを撮り、電子カルテに保存する。
一刻も早く論文に着手しなければ！
山口は診察室を飛び出して研究室に向かった。

取り残された患者は呆然としていた。

「おーい、薬ぐらい出せよ！抗生剤とか！」

（410字）

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裏お題「横断幕中耳炎」

私は中耳炎持ちなので、数か月に一回通院しています。
そこの先生はファイバースコープで耳の中を診て、患者も同じ画像を見ることができるのでよくわかるし、なかなか興味深い（？）です。

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【今日のイラスト】Canvaで作ってみました。こういうイメージです。