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前略、関東平野#21 しゃばぞう

今回は私が子供の頃に体験した怖い話しを紹介したいと思います。

あれは確か私が小学校に入学して、最初の授業だったと思います。

出席番号順に自己紹介をして行く時に、それは起こりました。今思い出しても何故あんな事が起こってしまったのか、私にはわかりません。

まあ大抵の事が、私にはわかりません。何故?今?早朝にこんな事を書いているのかもわかりません。40年以上生きて来て唯一わかったのは子供が何処から生まれてくるかと言う事ぐらいです。

一年で最も月が地球に近づく時、金玉袋を月に向けてかざすのです。そこでレベッカのMOONを口ずさみます。せんぱ〜い♪まで口ずさんだ所で

左右の金玉は輝き始め、やがて金色の鳥が現れます。その鳥は大きな翼を羽ばたかせ、何処かへと飛んで行ってしまいます。

忘れた頃に金色の鳥が帰って来ると赤ん坊の入った揺り籠を大きな足に引っ掛けています。その赤ん坊を鳥から受け取ると、鳥は消え、激落ち君の様に白くスカスカになった金玉が二つ足元に転がっているのです。

さあ冒険の始まりです。新しい金玉を見つける旅に出発だ。

やはり何故、こんな事を書いているのかわかりません。只今早朝です。早の朝です。宗兄弟です。きっと私は充分な教育を受けて来なかったからだと思うのです。

とにかく今すぐ眠りにつきたいと言う事だけはわかっております。。。💤

自己紹介は井上君から始まりました。

ここから全てが始まりました。恐怖の始まりです。終わりの始まりです。

「井上君、俺達もう終わっちまったのかな?バカヤローまだ始まってもいねえよ!いいからケツ出せ・・・」ケッツリターンです。ケツにリターンです。

余談ですがこの井上君は後にゴリゴリの不良少年になります。



「井上○○です!好きな食べ物はメロンです!」

井上君がこう自己紹介をすると、次の奴の自己紹介が始まりました。

「○○です!好きな食べ物はメロンです!」

その次の奴も「好きな食べ物はメロンです!」

また次も、好きな食べ物はメロンです。続きまして好きな食べ物はメロンです。メロン。メロン。メロン・・・

僕の出席番号は丁度真ん中ぐらいだった。もうすぐ自己紹介の順番が回って来る。何とここまで自己紹介を終えた全員が好きな食べ物はメロンと言った。

不安と緊張に押しつぶされそうな中で働いている、子供なりの、なんだか分からない防衛本能なのか、クラス中の誰もがメロン以外の食べ物を言えなくなってしまっている。

メロン以外の物を言ってしまえば、今日から6年間、学校に自分の居場所が無くなる。誰もがそんな気になってしまっている。

次はいよいよ僕の自己紹介の番がやって来る。僕はメロンが嫌いな訳じゃない。どっちかと言えば好きだ。ただ、一番好きな食べ物じゃない。

例え一番好きだったとしても、ここで好きな食べ物はメロンと言ってしまったら負けだ。自分の事が嫌いになる。僕は絶対にメロンとは言わない。マロンとも言はない。ロマンは言ってもいい。

メロン以外のなにを言っても自由なんだって事をクラスメイト達に、僕が勇気を出して教えてあげるんだ。例え学校に僕の居場所がなくなっても。

僕は絶対に言ってやるんだ。王様は裸だって。しかも包茎だって。被っているのは王様のちんこだけで充分だって。メロンて被せなくてもいいんだって。被せてもウケるのは三人までだって。

とにかくメロンだけは言わない。もう一生その三文字を口にするもんか。だって、ハンバーグって言っても、カレーって言っても、ちんこやうんこでも、何を言ったっていいんだ。自由なんだ。

僕の番が来た

「なかじませいごです!好きな食べ物は・・・メロンです!勿論メロンです!」

海の中で小便をした感覚に似ている。生暖かい感じがひどく気持ち悪い。僕はこの時、確実に何かに負けた。

結局、最後の一人まで全員が好きな食べ物はメロンと言いました。メロン記念日です。恐怖のメロン記念日です。

きっとこう言った集団心理がどういう物なのか専門家の人はわかるのでしょう。でも私と井上君には何故こんな事が起こったのかまるでわかりません。

何故なら私も井上君も充分な教育を受けて来なかったからです。






右や左の旦那様、どうかこの惨めで哀れな三人にお恵みを・・・