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全クリエイターの才能を爆発させたい

初めまして。ジェネシア・ベンチャーズでインターンをしています、木村です。

私は、現代社会で最もマネタイズされていない才能はクリエイティブ層にあると思っています。
しかし、クリエイター活動から生計を立てられているのはトップオブトップのみで、多くのクリエイターは創作活動をほぼ無給で行なっているのが実情です。
この記事では、トップオブトップだけではなく、全クリエイターが情熱を持って取り組めてかつ十分に収益が挙げられるような社会の実現に必要な事業について書いていきます。

クリエイターエコノミーについて語ってるくせにお前クリエイターじゃないだろと言われてしまいそうなので、私自身もクリエイターにならなくてはと思っています。今後も記事を書いていきたいと思っておりますので、Twitterのフォローをお願いします。

それでは早速、クリエイターエコノミーの現状から触れていきます。

クリエイターエコノミー領域のユニコーンが増えていて、上記の他にもライブコマースのWhatnotやソフトバンクも投資したコンテンツクリエイター支援プラットフォームのJerrysmackなどが時価総額$1bをつけています。

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また、CBinsightsによると、クリエイターに特化した企業は2021年の上半期だけで$1.3bの資金を調達しており、この数字は前年比の3倍となっています。

クリエイターエコノミー自体は新しいものではありませんが、なぜクリエイターエコノミーが近年急速に伸びているのか、その背景に対する仮説と私が考える未来について述べていきます。

背景

クリエイターと聞くと、いよいよYouTuberやTikTokerが第一に想起されるようになってきたと思います。私は彼らを個人事業主、あるいは起業家として見るべきだと考えています。
会社に所属せず独立して、自分の個性を武器に戦っているという点ではクリエイターも起業家も同じです。

古い記事になりますが、個人事業主として働いている理由の上位二つは「仕事をする時間や場所の自由度がある」と「自分の好きな仕事」をできるでした。これは多くのクリエイターも同様でしょう。

働いている

自由に生きたい、好きなことをしていたい、というのは普遍的な欲求だろうと思います。

しかし、実態として日本では多くの人が会社勤めで、2020年時点での個人事業主は10%ほどです。

従業員より自営業を好むのにも関わらず自営業に踏み切れないのは、会社から独立して個人として働くということは多くのリスクを伴うことだからです。
その最たる例は収入が安定しないことを心配することや投資するお金がないというような金銭的なリスクです。

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そのため、YouTubeなどクリエイターエコノミー2.0時代でブレイクしたクリエイターの多くはリスクの少ない学生時代から活動を開始しています。(もちろん、Z世代の若者の方がトレンドのキャッチが早いという理由もあると思います。)これは日本に限らず、アメリカも同様です。

しかし、状況は変わりつつあります。歴史学者が個人でニュースレターを書いたり、塾講師がオンラインビデオ教育のプラットフォームで活動を始めるようになりました。

これはもちろん、インターネットやSNSによって集客ネットワークが拡張されたこと、そしてテクノロジーの進歩でコンテンツを個人で制作できるようになったことが大きな要因ですが、更に下記二つの理由から、クリエイターの意識の部分に変化があったことも要因の一つだと考えています。

一つ目はUberの台頭によるギグエコノミーの普及です。
ギグエコノミーは仕事の機会から地理的制約や時間的制約を取り除きました。日本国内でもクラウドワークスのようなサービスが好きな時間にオンラインで仕事を受注することを可能にし、「働き方」の柔軟性を高めました。
人々が「働き方」を意識するようになり、特に若者の間で、仕事そのもののあり方がガラッと変わったように思います。

二つ目は働き方改革による副業・兼業の解禁です。
少子高齢化による労働人口の減少という人口動態から、政府が働き方改革の一環として「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除しました。
これにより金銭的リスクを取らずに、まずは趣味から、副業としてクリエイター活動を開始できるようになりました。

またInstagramのフォロワー数やいいね数など、自分につくファンの数が可視化され、「独立して集客する力」が可視化されたことも、人々を独立に踏み切らせるようになった要因の一つだと考えます。
更に、YouTubeやTikTokでの成功事例が多く語られるようになったこともあり、参入するクリエイターが急増しました。

このような、クリエイター側の環境や意識の変化と同時に、ユーザー側の意識、価値観も変わってきているように思います。
もともとYouTubeでコンテンツを無料で消費していたユーザーも、限定コンテンツを視聴するための有料メンバーシップに加入したり、ライブ配信で投げ銭をしたりなど「お金の払い方」が多様化しています。

このクリエイターとユーザー双方の意識の変化によって近年クリエイターエコノミーに流れ込む資金の量が爆発的に増えていると考えています。
またスタートアップだけでなく、Twitterが投げ銭機能Tipsを追加するなど、ユーザー側の価値観の変化、お金の払い方の変化に対応するように、既存大手プラットフォームもクリエイターのマネタイズ手段多様化を図っています。

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クリエイターエコノミーが向かう未来

私が考えるクリエイターエコノミーの未来は「全てのステージのクリエイターが独立し、持続的な創作活動ができる社会」です。

YouTubeやTikTokなど、大手プラットフォームでクリエイターが稼ぐ金額が高騰しています。アメリカのトップYouTuberの1人、MrBeastはYouTuberとして初めてビリオネアに到達すると言われています。
ストリーミングサービスのTwitchにおいても、トップクリエイターが大金を稼いでいます。それに不満を持ったハッカーがTwitchがクリエイターに支払っている額などが詳細に書かれた内部データを公開したというニュースもありました。

大手プラットフォームがクリエイターに支払う金額は年々高騰していますが、実際にはトップのクリエイターに富が集中しており、その他の多くのクリエイターはほとんど稼げていません。大規模化を追求した既存プラットフォームはまさにWinner-Takes-Allの世界です。

私が考える「全てのステージのクリエイターが」という部分とは大きくかけ離れているのが実情です。もちろん競争は避けられないことで、競争があれば勝者が生まれることは必然ですが、現代社会の労働者と同じようにクリエイターもロングテール化し、ミドル層も十分に生活していけるだけのお金を稼げるようになるべきです。

更に、クリエイターのバーンアウト、燃え尽き症候群の問題もあります。
Vibelyの調査によれば、クリエイターの90%が燃え尽き症候群を経験し、71%がコンテンツ制作を完全にやめようと考えたことがあるそうです。
クリエイターが最もストレスを感じるのはプラットフォームのアルゴリズム変更やそれに起因する収入の変動、常に制作しなけらばならないというプレッシャーです。

クリエイターが「持続的な創作活動」をするためには、クリエイターのメンタルヘルスも喫緊の課題です。

このように、私が考えるクリエイターエコノミーの未来と現状には大きなギャップがありますが、私はそこに事業機会があると考えています。
ここからは上記の課題に対するソリューションをいくつか提示します。

事業機会

まずは、クリエイターのミドル層が不在になっている問題を解決するソリューションを考えていこうと思います。

一つ目は、多様化するユーザーの好みや意見をプラットフォームが的確に捉え、クリエイター側にアプローチを促すということです。
既存プラットフォームにおいても、提示されるコンテンツは個人に最適化されていますが、モノやコンテンツではなく教育やその他の体験を提供するようなプラットフォームにおいては特に、ユーザーにはもっと多様なニーズがあると考えています。

ユーザーのニーズをプラットフォームが収集し、一部のクリエイターにニッチへのアプローチを促すことができれば、クリエイターのミドル層も誕生していくはずです。

二つ目は、新人クリエイターの教育です。
トップクリエイターの成功事例をアメリカンドリームとして後続の参入を促しても、コンテンツ製作やディストリビューションまで、クリエイターとして生きていくために必要なスキルは多様で、新人クリエイターがトップクリエイターまで成長していくことは非常に稀です。
Substackでは奨学金プログラムで優秀な新人ライターに資金を提供する他、ベテランライターが新人ライターの教育をするプログラムがあります。これは新人ライターの戦略づけやクリエイティビティを磨くことを目的としています。

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既存プラットフォームはトップクリエイターにスポットライトを当てて新人の参入を促すだけにとどまらず、新人のビジネスを成長させ引き上げていくという両輪で進んでいく必要があります。

また教育だけでなく、新人クリエイターを引き上げるためには資金を提供するサービスも必要になります。
世界的な金余りによって、お金があらゆる金融商品に流れ込んでいますが、この一部がクリエイターにも流れるようになるべきだと思っています。問題は、会社ではないので、レベニューシェアと引き換えに資金提供する形が主流になる故、スタートアップ投資ほどのハイリターンは望めないことです。

そのため、ファンからクリエイター、あるいはクリエイター同士で資金提供を行えるサービスにチャンスがあると考えています。
その場合だと金銭的なリターンだけでなく、支援の意味合いが付け足され、更にはコンテンツの所有権を一部持てるようになります。例えば、新人アーティストを支援したYouTuberが自分の動画にそのアーティストの楽曲を使えるなど、クリエイター間でのシナジーを生み出せると考えています。

Royalというサービスでは、ファンがアーティストに直接投資することを可能にし、その見返りとしてファンは音楽のオーナーシップの一部を保有することができます。これによって、アーティストは資金を得られるだけでなく、ファンとインセンティブが一致した深い繋がりを築くことができ、またファンは印税収入の一部を得ることができるようになります。

カラオケの印税収入でトップミュージシャンのひ孫の代まで遊んで暮らせる、みたいな話はよく聞きますが、初期から応援していたファンがその一部を受けられるというのは夢のある話ですよね。

Royalはa16zがリードするシリーズAラウンドで$55Mの資金を調達しています。また投資家にThe Chainsmokersなどの世界的アーティストを迎え入れているのも興味深い点です。

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また、ビジネスがある程度安定してきたクリエイターであっても、更にそのビジネスを大きくするためには、キャッシュフローを効率化し、そしてビジネスに資金を投資していく必要があります。

YouTubeの広告収入は月末締めの翌月22~26日払いです。これでは、ビジネスが波に乗り大きな収入を獲得した月があっても、翌月のコンテンツ作成にかけられる費用は変動しないため、非連続な成長ができません。

Creator CashはYouTuberの広告収入の前払いを行うサービスです。これによって、資金調達ができなくても、キャッシュフローを早期化し、ビジネスを大きくしていくことができます。
またBASEでは、リスクなく資金調達ができるYELL BANKやネットショップの売上をすぐに利用できるバーチャルカード「BASEカード」を提供しています。

これらのサービスは個人や小さなチームでも金融のメリットを享受することを可能にし、ビジネスの成長を支援しています。

三つ目はスーパーファンからの高度なマネタイズを行うサービスです。
一つ目の例のようにしてニッチにアプローチしても、ニッチすぎては生活していくだけのお金を稼ぐことはできません。
しかし、Li Jinのポスト「1,000 True Fans? Try 100」で言うように、100人のスーパーファンからマネタイズすることができれば、十分に生計を立てられるはずです。
クリエイターとファンの間でコミュニティを形成するCircle、OnlyFansなどのファン向けSNSサイトやゲーム実況者が高度なマネタイズを可能にするStreamlootsなど、スーパーファンからマネタイズするツールは既に多く存在しています。

無料コンテンツを消費するだけではなく、限定コンテンツを視聴するためにお金を払うであったり、クリエイターにお近づきになるためにお金を払うようになったというような、ファンの価値観の変化がこれらのサービスを成立させているのだろうと思います。

今既に見られている変化は、アーティストの資金調達プラットフォームのRoyalや書き手のクラファン、Mirrorのような、ファンがクリエイターの作品のオーナーシップを一部持つためにお金を払うようになったということです。

今後は、単なる観客ではなく同じ部族として、ファンが帰属意識を感じられるメディアや体験に対してお金を払うようになるだろうと考えています。

次に、クリエイターのバーンアウトの問題に対するソリューションを考えていこうと思います。

クリエイターのメンタルヘルスの問題は、仲間とのネットワークを築き、同じような境遇に置かれるクリエイター間で支えあうことで解決していくと考えています。

先に紹介したCircleのように、クリエイターとファンのコミュニティを形成するツールではなく、クリエイター間のコミュニティを形成する必要があります。
既存プラットフォームの取り組みだと、オンラインスクールプラットフォームのTeachableが、同じようなステージにいるクリエイターと繋がれるようにしています。

あるいは、オフラインでクリエイターが交流する場所も必要です。起業家でいう、インキュベーション施設のようなイメージです。
アメリカだと、TikTokerの集団の拠点となる「House」が流行しています。Houseは巨大なリビングルームやプールがありますが、単なる豪邸ではなくスタジオの役割も兼ねており、コラボレーションにも最適です。特に有名なHype Houseには、19人がメンバーになっていて、そのうち4人はフルタイムの自宅としているそうです。

クリエイター間のネットワークを築くためにはコラボレーションも有効です。コラボレーションは新たな認知の獲得のみに留まらず、クリエイター間の交流を広げる役割も果たします。
例えば、Stirはコラボレーション時の収益分配を効率化するツールです。クリエイターのメンタルヘルスの観点からもコラボレーションが求められる流れがあると思っています。コラボの成果を最適化するツールやコラボを簡素化するようなツールなど、コラボ周りのサービスにはまだチャンスがありそうです。

クリエイター活動で負う多くのストレスからクリエイターを守るために、仲間と強力なネットワークを築くことが良いソリューションになると考えています。

この市場仮説に共感いただいた方、クリエイターエコノミー領域で起業されている方(起業検討中の方)、あるいは異なる仮説を持っている方など、どなたでもお気軽にDMください!(@kantakimura_)

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