赤と白とロイヤルブルー

アマプラでの映像化が嬉しくて再読した。

記憶よりいちゃついてるシーンが多い!!この話は史上初のアメリカ大統領の息子がイギリス王室の末の王子に恋をする話なので主題は「恋人になるには壁が多い2人が恋に落ちる」ではなく「隣にいるだけで咎められる2人が恋を生涯のものだと決意する」ところにあるので、起承転結の承あたりで恋人としてやることは概ね終えている。
そもそもアレックスはずっとヘンリーが好き。隣にいる時の「恋」を言ってはいけない縛りでずっと動揺と興奮を表してたので思ったよりわかりやすかった。
それに、この恋は時期的にも関係性的にも性格的にも「泳がせる」とか「行動に移れなくて悩む」ことができる期間とかは本当に存在しないのでガンガン関係性が進んでいく。実際終盤でヘンリーの兄が「1ヶ月程度の性体験で人生を決めるには〜」って言ってたので、2人の因縁がどれだけ長くても本編は1ヶ月の尺の上でイギリス王室の王子とアメリカ大統領選期間というめちゃくちゃ忙しい時間の重なった合間とメールのやり取りの間で関係を進展させて決心に至らなきゃいけないので「相手って私のこと好きかも…?」とか「告白しなよ!!!!!!!」みたいな展開は存在しない。本当に2人はお互いのこと好きだし他人への信頼をお互いで覚えるし今まで過ごしてきた孤独という安寧はすぐそばにあってこれ以上相手を好きになるのを怖い!はあっても関係が終わることの方が怖いしお互い思い切りもいいので全てが早い。限られた時間の逢瀬に今できる最大のことをやるので読んでて物足りないとかは全然ない。
生まれや立場や本人の気質とかプライドによって、周りに期待されすぎてるし他人に期待できない2人が初めて分かり合える他人と出会う話、でもあるのでめちゃくちゃなロマンス小説だけどちょっとした会話とかは友情の側面が強くて初めて冗談を言える同性の友人に舞い上がってメールに色々引用したり難しい言い回ししてみたりするところが微笑ましくて良い。愛を囁く時に言いたいことを言いたい言葉で伝えていいんだっていうのが定期的に女の子とデートしていた2人にとってかなり救いになっているのがよくわかる。あと、2人が学識高く教養深いのは本人たちの貪欲さもあるけど生まれと育ちがそれを求めたからというのも当然あって、それらが愛を囁くのに役に立っているのが救いでよかった。

2人は人生をかけてお互いのそばにいることを選ぶけど、途中で実の父が離婚した母親との関係を後悔してないって明言するのが個人的に好きな発言だった。燃えるような恋で、上手くいかないかもしれないとわかってても手を伸ばさずにはいられなかったんだ、後悔なんてしてないよっていう愛の形を提示されたからアレックスとヘンリーの愛がその道は選ばなかったことがより表れてる気がする。ただ突っ走っただけじゃなくてそういう形も知ってる上で手を伸ばしたんだよ、って前振りがあるのはヘンリーとアレックスの関係をやるにあたって誠実だと思う。

アレックスとヘンリーってどっちがどっちなのか明言されないの、シュレディンガーの左右なので同軸リバって解釈してもいいんだぞこっちはみたいな気持ちになる。本当にそうであって欲しい気持ちがあるので一読者としてはそう解釈します。どっちもあってほしいですからね。

好きな描写、「白い肌から血管が見える、その中には逃れられない血が流れ」のところです。やんごとなき生まれの恋人とその生まれごと愛しててもこれがなければ相手はもっと自由なのにと思わずにはいられない2人に毎回描写して欲しい。セックスする前にこの描写が入ると行為でそれらに抗っても肉体には逃れられない楔があるというのが大変興奮するので本当に毎回やって欲しい。あと「どうして定期的にデート写真が出回るんだと思う?」に連なるあれこれもすごい好きというかフィクションの差別と偏見が好きなのでヘンリーとアレックスが苦しんでるところは全体的に好きでした。現実だともちろん嫌です。

政治パートが記憶してるよりあった。そもそも英国と米国の立場と権力者の在り方の違いとそれを受けて今の若者のこれまでとこれからを描いてるので当たり前なんだけどまあまあある。アレックスが政治家になるのに前向きで、子供として大統領である母親に使い潰されてるだけではないのもあるし、ヘンリーとの関係について立場から逃げて愛を得るのではなくて全部何もかも得ていくんだ、だって何も悪いことなんてしてないんだから!でハッピーエンドを迎えるのが読んでて気持ちいいよね本作は本当に…。

好きなシーンはもっとあるんだけど引用するには2人の会話が引用と応用が多くて難しい感じなのも読んでて楽しかった。文化の破壊者ではなく、これまでの文化も歴史も愛してる2人が手を取る話なので映像化の時もばんばん詩とか手紙とか引用して欲しい。本編中でも出てきたけどメールに「詳しくは本を参照」って言われるのは本当にセクシーだし最高だった。

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