科学者はなぜ神を信じるのか

積んでたので崩した。

信じられないくらい読みやすかった。本当に読みやすい。科学の始まりから現代の移行を科学者と信仰と教会の対応を交えて語る本で、数学と天文学と化学について話す場面が多いのに何言ってるのかわからない場面がほぼなくて作者さんと義務教育と高校の化学の先生ってすごい。電子がどうして2つしか同じ円周にいられないのか初めて知ったし、それがどうして神の御技を奪うのかについては本当に目から鱗だった。
私が高校2年生くらいから机に座れなくなってしまった人間なのもあって、研究や思考によって学問が進歩したり技術の発展に寄与したりする行いが連綿と続いているのを見ると感動するし嬉しくなってしまう。なのでこの本を読んでる間はうっすら泣き続けていた。こんな理性的な本で泣くもんじゃないんだけど、何かを信じて進んできた人の歴史とか文章中に何回も出てくる「しかし彼はこの理論を数式にするには至りませんでした」とか「発見で終わりました」とか出てきても、そのあと生まれも時代すら違う誰かが一本の数式にしたり矛盾のない理論にする事実があると人類〜!!ってうちわ振っちゃう。SFやファンタジーにこう言うのを求めてるので現実にあると本当に幸せになる。

この話は現在から過去を神との関係に重点を置いて振り返るものなので、当たり前だけど結果が残っているというか宗教と科学において注目されていた問題が様々な天才によって解決されていくのだけど、この本の「神」はダイレクトにキリスト教で主に「光あれ」とか「地球の周りに天体を」とかその辺についての科学の話をしていく。例えばこの本における「神」が別の宗派だったり、キリスト教が「山の中から生まれた神は土地を7層作り」とかだったらこの本に出てくる天才たちは地質学や別の分野で相応の天才性を発揮して名を馳せてたのかも知れなくて、天文学と数学は恵まれてるなと思った。いやどっちにしても最後には同じところに辿り着いてホーキングがブラックホールの話をしてるのかもしれないですけど、わからないですが。

ガリレオとアインシュタインがすごい。
多数の学者の名前が飛び交い、多くが2回目の登場時には亡くなっていたのにガリレオとアインシュタインは結構なページ数存命のまま再登場していた。アインシュタインは本当に長かった。2人とも短期間に誰も無視できないような成果を挙げて、その理論に対して周りが検討する動きが頻繁に起こるからガリレオやアインシュタインには直近で別の発見をしてこの本に名前が上がる人が多い。

知ってることも知らないことも多くて楽しく読んだんだけど、一番楽しかったのは「宇宙は膨張を続けてるらしい」ってアインシュタインが発見して「では宇宙の始めは」って始まって急に知らない話が知ってるビックバンについて話し始めたところが知識が繋がって楽しかった。『光あれ』とビックバンの関係もうっすら知ってたんだけどそれが宇宙のまるみで解決されてたのは知らなかったのでわくわくしながら読んだ。他の様々な記述ならまだしも始めの「光あれ」が現実と被った瞬間があると思うとちょっと怖いくらいだよな…。

「聖書を当てにしたから少しだけ天文学に滞りがあった」って言うのは知ってたんだけど、距離感についてはよく分かってなくて「そんな昔の人の文章を当てにするか?」と思ってたんだけど聖書って「授業をスマホで録画したやつ」なのでその映像の中で先生が言ってることを疑う人はいないよね、それはそう。そこ疑ったら話始まんないもんね。
なので尚更教会が科学の進歩に合わせて見解を述べるところは「神」と「教会」と「宗教」を一緒にしない話に納得がいって、宗教のあり方と教会の言動は神に影響を与えるものではないが宗教と教会は今生きてる人に向けて変化を常に求められているから見解を述べることは不誠実ではなくて在り方として誠実。
ニルヤの島っていう最高の小説の冒頭に「教会はついに『天国は存在しない』と表明した」って下りがあるんだけどこの描写のことがよく分かったのでそれが嬉しい。読んでた時はシチュエーションを流してたけど、結構なことだなこれ…。でもあの世界の技術のことを思うと宗教家の集まりであるところの教会はそれを表明しないと立ち行かないのも今回でわかったのでもう一回読み直したい。

この本の冒頭に「神がいるかどうかは読者に委ねる」って書いてあったんだけど、じゃあ実際私が信じたかと言われると分からない。すごい誠実で中立を目指してた本なのもある。チ。を読み終わった時は明確に「神様って…いるかも…!!」って思いながら空を見た覚えがあるしあの感動のことまだ大切にしてるのでそれから見るとすっごい発見があったかと言われるとなくて、でも本当に授業で習ったりした範囲が神のみわざ(さっきみわざが変換できなくておわざで入力したところあるけどもう探せないな…)を奪っていった歴史をみてるとこれ自体は神の及ぶ範囲をどんどん削っているけど、そこに至る過程とか当人たちが明確に神様を信じていて、私が信じてなくてもこの人たちの後ろにはこの人たちが信じてる空白があって私はそれを分かることはないけど無視はできないので信じてるんだと思う、多分…。
そもそも私は神様も幽霊もスピリチュアルなものは信じてないって答えることにしていて、でもおにぎりを踏み潰したりできないしお地蔵様を蹴り倒さないし「うちの本尊なんです」って言われたらどの宗教であっても壊すことはできなくなるし、そもそもこんな文章を書いて何か納得してる以上言霊とかは別枠で信じてるので「信じてないけど」は嘘。信じてます。めちゃくちゃ信じてると思う。
こういうのに向き合えたので読めてよかった。楽しい本でした。

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