見出し画像

ソラリス

鰻さんに勧められていたのをやっと読んだ

ソラリスという星と、その星の海に眠る生命と、25年にわたるそれらの研究と、いまソラリスの星にいる人間(研究者)の話…。
だった気がする。読み終わったあとそういう話が残ってる気がしたので多分そう。

主人公の心理学者ケルビンのソラリスにきてからの行動はほとんどなくて、作品の半分以上を「ソラリス学」に思いを馳せてるターンが締めてる。ここがソラリスの大好きなところで、書くにあたって本当に図書館を用意したとしか思えない文献が出て来て、それがフレーバーではなくほぼ全ての単語と先行研究にたいして説明がついてくる。ただこのターンめちゃくちゃ読みにくくて、なぜかというと個人的にはソラリス学がどこにも向かわないからかなと思っている。
ソラリスの海に浮かぶ謎の生命体に関する技術がすごいエネルギーを産むとか医療に使えるようになるとかそういう目に見えた「利用」に繋がりそうな要素がない。つまり知ってるものに吸収されることなく、漠然と存在する何かに対する純粋な事実しか提示されない。ここに時系列や様々な仮説や事件はあるものの、ストーリー性はほぼない。だからなんの話してるのか分からなくなるんだけど、それは彼らも同じことで「何か」を求めて25年経っているけどソラリスに関して何もわかっていない。どんな成果も得ていない。現実にもこういうことって多分めちゃくちゃあって、企業の研究室でない限りはおおよその研究って「ソラリス学」と同じで進んではいるし事実は出てくるが答えや結果が出てくることはまずない。そういう時期を「残酷な希望」って読んで「つまり何かが終わっているわけではない(から続けるべきだ)」が本作の言いたいことなんじゃないか…そんな気がしますが…わかりません…。
終盤まで読んでこの話がソラリス大爆発とハリーとの真実の愛を見つけて終わるとは一ミリも思っていなかったけれど本当になにも得ることなく終わった。終わったというか続いたというか「人類先生のソラリス学をご期待ください—!!」だった。研究の成果を追い求めることも、世界でただ1人の人を待っていることも「無駄ではあるが滑稽ではない」くて、それに1人の学者が気がつけたことこそにこの作品のカタルシスがあり、そういう積み重ねがいつか人類をどこかへ連れていくのではないか、人類讃歌なんじゃないかソラリスって。

過去に発売された翻訳版にはロシア版を翻訳したバージョンもあり、それはロシア側からの検閲が入って中身が省かれているらしい。どこを省いたのかめちゃくちゃ気になる。

映画化2回の実績があるらしいんだけど、道中はいいとしてオチをどうやって締め括ってるのかだけすごい気になる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?