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アベーテ ロッソ(abete rosso)の森へ

2011.02.05

久しぶりの真冬のイタリアでした。
霧に包まれるクレモナの街はとても懐かしく、様々な想いが交差しました。

懐かしの霧に包まれるクレモナの街



今回はクレモナだけに留まらず、
バイオリンの表板の材料アベーテ・ロッソ(abete rosso:スプルース、オウシュウトウヒ、ドイツトウヒなどとも呼ばれる針葉樹のイタリア語名)の育つ地域北イタリア(ドロミーテ渓谷)まで足をのばしてみました。

クレモナから汽車で3時間強、ほぼ時間通り(10分遅れ)でトレントの街に着きました。

弦楽器の表板となるアベーテ・ロッソの森


今まで何回もトレントという駅を通っていたけど滞在するのは初めてだということ、とても有名な地名だけどなんとなく汽車の乗り継ぎでのみ利用していたことに気づきました。

駅には弦楽器製作家 マエストロ ルカ プリモン(Maestro Luca PRIMON)が迎えにきてくださいました。

一ヶ月前に連絡を取り合っていたときには“雪深いから準備をしっかりしていらしてください。”とアドバイスを頂いていましたが
街は平穏、霧に包まれたクレモナよりも湿度が低いためか温かく過ごし易いように思えました。

マエストロ プリモン夫妻がとても美味しいトレントの有名伝統料理のレストランにご招待してくださりました。イタリア各地の伝統料理はどれも美味しい!!と再確認できたひとときでした。

樹の健康状態、森の害虫について語るマエストロ ルカ プ リモン


次の日は弦楽器の“表板の森”に行って参りました。
雪深い森のなか、樹々、森、そこに共存するすべての命のレクチャーを受けながらの時間は至福の時でした。
マエストロ プリモンは歩きながら“あの樹はすばらしい!” “あれはチェロに良さそうだ!!”とこれからの伐採の計画を練っているようでうらやましい限りでした。
既に切られて山積みにされている丸太を見ながらも真剣そのもので、私自身も材料選びの時に、もう一歩踏み込めたら(山の中へ?)違う世界が広がるのではないかと思った次第です。

アベーテ・ロッソの球果 黒い一粒一粒が種子


もちろん今回の雪山での経験もマエストロ ルカ プリモンのご配慮があったからこそ出来たことで自分一人では何もできなかったと思います。

そう言う意味で人と人とのつながりの大切さを体感する旅でもありました。大自然の中におかれると自分の小ささを痛感します。

鹿さん!!!


森林の中で鹿さんの足跡を教えてもらい感激、鹿さんの糞をみつけ感動、最後に鹿さんに会えて感謝いたしました。自然の大きさと優しさに包まれた一日でした。

雪山の中、自分が使わせて頂いている表板がどのような状態なのだろう?と思っての小旅行でしたが、製作者同士の話はとても深まり、理論的にも技術的にも刺激を受け、私自身いろいろと再考しなくてはならない課題を見つける旅になりました。

鈴木郁子




アベーテ・ロッソの球果、現在製作中のヴィオラ、そしてごろさん。
(このヴィオラは2012年5月の展示会に出展いたしました。)

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