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あだ名は「消防署長」?- PayPal創業期COOリード・ホフマンの正体とは -

リード・ホフマンは、ティールのスタンフォード大学時代からの旧友でペイパルの共同創業者の一人です。

彼は米国のスタートアップ業界で最も影響力のある人物の一人であり、起業家、VC、作家などあらゆる分野で活躍するマルティプルプレイヤーと言えます。
彼が2002年に創業した「LinkedIn」は、世界最大級のビジネス特化SNSとして、全世界で7億4000万人以上(2021年2月時点)が使用しており、今後Facebookに変わるソーシャルメディアとして、日本でも流行が期待されます。
今回はそんな多彩な顔を持つリード・ホフマンの成功の秘密に迫ります。

1.リード・ホフマンとは?

-概要-
名前:リード・ギャレット・ホフマン
生まれ:1967年8月5日、カリフォルニア州パロアルト生まれ(52歳)
学歴:プトニー高校→スタンフォード大学(理学士号を取得)→オックスフォード大学
肩書:「LinkedIn」 エグゼクティブ・チェアマン/「マイクロソフト」取締役
純資産額:19億ドル
妻:ミッシェル・イー

2.ビジネスとは無縁だった学生時代、その知られざる青年期はとは?

リード・ホフマンは1967年8月5日、米国カリフォルニア州パロアルトでディアナ・ルースとウィリアム・パーカー・ホフマンJr.の間に一人っ子として生まれました。
両親は2人とも弁護士であり、プトニー高校に通いながら、並行してメープルシロップの栽培や牛の番をするなど様々な活動を行っていました。

高校卒業後、スタンフォード大学に進学し、1990年に記号システムと認知科学の学士号を取得し、その功績からアメリカで最も権威のある奨学金の一つである「マーシャル奨学金」を見事に獲得しました。
「マーシャル奨学生」として、その後1993年にオックスフォード大学ウルフソンカレッジで哲学の修士号を取得しました。
後に起業家として大成するホフマンですが、大学在学中は、教授としての学問的なキャリアへの志向が強かったのです。
ともかく学生時は「ともかく世界に大きなインパクトを与えたい」と考え、当初は学問でそれが実現できると考えていたそうで、後に起業家としてのキャリアを積む中でビジネスの可能性の大きさを実感したそうです。

オフマンはそんな自身の考えの変化についてこう語っています。

"スタンフォード大学を卒業したとき、私は教授か研究者になろうとしていました。
と言ってもそれはそれはカントの言葉を引用することではく、社会にレンズを向け、『私たちは何者なのか』『個人として、社会として、私たちは何者であるべきなのか』と問いかけることでした。
しかし、私は学者が自身の人生をたった50~60人しか読まないような本を書くことに捧げる事実を目の当たりにして、もっと大きな影響を与えたいと感じるようになったのです。”

そのような思いから、ホフマンはビジネスと起業家精神のキャリアを追求することを自身のモットーとし、1994年にアップルコンピュータに入社、ソーシャルネットワークの初期の試みであるeWorldの開発に携わりました。
eWorldが買収されたのちなんと日本の富士通に勤務し、1997年にSocialNet.comを共同設立しました。
この会社は、現代のSNSの先駆けとなる「オンラインでのデートや、近所でのパートナー探し、また同じような趣味を持つ人々のマッチング」に焦点を当てていました。
このサービスはピーター・ティールを持って「時代の先取り」と言わしめ、まさに7~8年後にSNSが主流となる以前に勃興した、その原型とも言える存在であったのです。

3.ついたあだ名は”消防署長” PayPalでの大活躍に迫る

彼はSocialNet.comでの経験から、製品を作るのと同じくらい、それを流通させる戦略がとても重要であることを学びました。
そんな彼の非常に競争の激しい環境を勝ち抜いた経験が評価され、PayPalのCOOとして、PayPal の外部関係を全て取り仕切る責任者に任命されます。

彼はなんとほぼ1人で、決済インフラ(VISA、MasterCard、ACH、WellsFargo)、事業開発(eBay、Intuitなど)、政府(規制、司法)、法務など、すべての外部関係を担当していたのです。
ティールは後にそんなホフマンの活躍を”PayPalの消防署長だった “と述べています。
まさに創業期のスタートアップに襲いかかる様々な厄災を一手に引き受け鎮火する、PayPalの必殺仕事人であったと言えるでしょう。

4.LinkedIn創業ー実は富士通社員だった!ー

ホフマンは当初から、ビジネスにおけるプロフェッショナル同士が簡単につながることができるようなビジネスを始めたいと考えていました。そのため、PayPalを退職した後、SocialNet、富士通の元同僚と共に「LinkedIn」を創設しました。

「LinkedIn」は、ビジネスに関心が高い人が集まるグローバルソーシャルメディアで、登録したユーザーが専門的なプロフィールを作成し、お互いにつながることができるものです。

PayPal時代の同僚であるピーター・ティールとキース・ラボイスから出資しを受け同社は2003年5月に立ち上げられました。
いくらホフマンといえど、最初の滑り出しは順調とはいえず、最初の数ヶ月は、わずか20人のユーザーしかいなかったといいます。
しかし、2003年後半から2004年初頭にかけて、LinkedInがユーザーのアドレス帳をアップロードできる機能を導入したことをきっかけに会社の成長を加速させました。
その後アメリカン・エキスプレスとの提携などを進め、さらに様々な機能を追加し様々な中小企業への提供を推し進めることに成功しました。
翌年には、企業向けのサブスク、ユーザー向けの公開プロファイル、People You May Knowなどの様々な機能を導入し2010年には、グローバル企業としてその評価額は20億ドルに達しました。
現在日本国内では、Facebookの10分の1程度のユーザー数にとどまっていますが、近年のFacebookの利用の落ち込みから、今後はLinkedInに注目が集まると考えられています。

5.VCとしてのキャリアーIPOに変わるSPACー

PayPalをeBayに売却した後、彼はVCとしてのキャリアを歩み出します。
米国VCのDavid Sze氏によると、ホフマンは「過去10年で最も成功したエンジェル投資家と言っても過言ではない」といいます。

有名な話では、ホフマンはマーク・ザッカーバーグとピーター・ティールの最初の出会いを仲介し、ティールが最初に50万ドルのエンジェル投資を行うきっかけとなりました。
ホフマンは、Facebookの最初の資金調達ラウンドでティールと一緒に投資を行ったのです。

2020年には、Zyngaの創業者であるマーク・ピンカス、ベテランヘッジファンドマネージャーのマイケル・トンプソンと共に特別買収目的会社(SPAC)であるReinvent Technology Partnersの設立に至りました。
SPACはブランクチェックカンパニーと呼ばれ、他の企業を合併または買収する目的のために作られる企業で、近年ベンチャーが支援する企業の間で、従来的なIPOの面倒な手順を踏まなくても上場できる方法として人気が高まっています。
過去数カ月だけをみても数社のベンチャー支援企業が、従来的なIPO過程の代わりにSPAC企業と合併し、今後ますます目が話せない企業と言えるでしょう。

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