「賃貸住宅インターネットサービス」のまとめ

インターネット使えますか?


この質問に困る賃貸仲介/賃貸管理で働く方に向けたものです。
専門的な知識をお持ちの方には物足りないことや、気に入らないことがあるかもしれませんが、その場合はそっと画面を閉じていただければ幸いです。
また、ダイヤルアップ・ISDN・テレホーダイについて論じたい方は、インターネット老人会へお帰りください。(みんなが待ってますよ。)

前置きはさておき、賃貸住宅では有料系と無料系のインターネットサービスがありますので、大きくその2つを分けておきます。


入居者負担のインターネット接続サービス

FTTH系

FTTHとはFiber To The Home(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)の略で、早い話が「部屋まで光ファイバーで届いている」ということです。
実際には部屋のどこかまで光コンセントを導入して、そこからONU→ルーター(→場合によってはHUB)に接続してインターネットが使用できるようになります。
部屋まで光ファイバーが来ていますので通信路としての品質は高く、高速なサービスが期待されます。

FTTHの代表例はフレッツ光ネクストです
注)「フレッツ光マンションタイプ」はVDSLのことなのでFTTHではありません。
その他にも、SoftBank光やNuroやauひかりがあります。
SoftBankとNuroはNTTの回線を使いますが、auひかりはNTTに加えてKDDIや東京電力の光ファイバーを使うこともあります。

マンションタイプはある程度の戸数があって、サービス提供会社(NTTやNuroなど)と利害が一致して設備が導入できた物件は、個別の契約より月額費用が安くなります。戸数が多いほど戸あたりの設備コストが減るので、月額費用が安くなります。
(例 プラン2:16戸以上 プラン1:8戸以上 ミニ:4戸以上)

ちなみに、FTTHでもプロバイダーによって早い・遅いがあります。
「プロバイダーはどこでも一緒ですよ」ではなく、「ご自分でお好きなものを選んでください」と逃げておきましょう。

CheckPoint
・オンラインゲームで通信速度が遅いと死んでしまう人はFTTHじゃないと死んじゃうかもしれませんので、FTTHをオススメしましょう。
・デイトレーダーやっているという人も、「回線が遅くて損をした!」と自分の取引センスの問題なのに人のせいにしたい人もいるかもしれないのでデイトレードをする方にはFTTHをオススメしましょう。
・FTTHは共用部で電源を使用しません。ネットが繋がらないクレームは「サービス提供者に文句言え」と言い返しましょう。

VDSL系

VDSLとはVery high bitrate Digital Subscriber Line(ベリー・ハイ・ビットレート・デジタル・サブスクライバー・ライン)の略で、「めっちゃ速いデジタル加入者線」のことです。(ベリー・ハイ・ビットレートとは言うものの、技術としては今や古くなったものです。ホテルニューオータニという名前だけ新しい老舗ホテルと同じようなものです。)

外部から建物の外壁のウォールボックスないしMDF室まで光ファイバーで、集合型回線終端装置とVDSL集合装置を経て電話線に変換し、装置から各居室までは電話線でつなぎます。
せっかく外からは光ファイバーで来ているのに、直前で速度が落ちるので最大で下り100Mbpsになります。
築年数が経った集合住宅で配管の余裕がないとフレッツの選択肢がVDSLしかない場合もあります。
ちなみに、NTTはVDSLを辞める方向に進めていますのでいずれ絶滅すると思います。

Check Point
・中途半端に「光インターネット」なので、クレームになりやすい。
・オーナーチェンジでVDSLがあった場合はNTTに電気代の支払先変更の手続きもしましょう。(補足記事を参照)

ポケットWi-Fi

WiMAXと言ったりもしますが、携帯電話と同じ4G/LTE回線であったり5Gエリアで対応をしていれば5G回線を使用し、電波で通信環境を整備しています。
始まった当初はUQが有名でした。
無線式のため、建物への通線工事が不要であり導入へのハードルが最も低いものと言えます。
(後述のSoftBank Airも同じですが)建物の構造と基地局との距離・周囲の建物の状況などにより干渉し、速度が遅い、或いは全く繋がらないなどの可能性もあります。
持ち運びができることが特徴です。
また、有線系の回線と違い短期契約に対応している事業者もありますので、何らかのクレーム対応でインターネット環境を用意しなければいけない時にも選択肢として考えても良いでしょう。

CheckPoint
・導入のハードルが一番低い
・速度については建物の環境による。もはや運でしかない。
・速いとか、遅いとか 速度についてコメントしないほうが良い。
・提供会社はめちゃくちゃたくさんある。

SoftBank Air

部屋のコンセントに機械を差し込むだけで部屋の中でインターネットが使える!
とてもシンプルなサービスと言えます。
技術的にはポケットWiFiに近いものがありますが、SoftBank AirはPHSの電波帯も使用しており、ベストエフォート(公称最大速度)は速いものになっています。
とは言うものの、電波で通信をするのでポケットWi-Fiと同じく環境に大きく左右されます。
FTTHも無理、CATVも無理、VDSLも無理となったらポケットWi-FiかSoftBankAirしか選択肢は残らないので覚えておきましょう。

ChekPoint
・速度については環境による運の要素があるので、CMやWEBを見て「速いですよ」というのは絶対にやめましょう。
・有線インターネットがどうにも引き込めない!という時のセーフティーネットとして重宝します。

CATVインターネット

CATVのインターネットは大きく分けて3種類あります。
それはFTTNと前述のFTTHです。
FTTNFiber To The Node(ファイバー・トゥ・ザ・ノード)の略です。
ノードって何よって話ですが、節とか点とかって意味です。
途中まで光ファイバーだよんということになります。
じゃぁ、その後はどうするかというと、既にどの住宅にもあるテレビの受信のために使用している同軸ケーブルを使用します。

そして、CATVインターネットは次の3パターンがあります。

  1. 基地局から部屋まですべて同軸ケーブル(テレビの線)で届いているもの

  2. 基地局から途中まで光ファイバーで、一部を同軸ケーブルにしているもの

  3. FTTH

1と2は既存のテレビのケーブルを使用するので配線工事の負担が少ないのがメリットです。
室内の既存のアンテナ口に支給された機械を取り付け、テレビとインターネットに分岐します。速度は事業者や契約するサービス内容によって大きく変わります。
3は最初に説明したFTTHですが、光ファイバーをテレビとインターネットに分岐したりします。

(正直、CATVインターネットは種類が多く僕も詳しくない部分があるので、補足があれば誰か教えて下さい。)

CheckPoint
某社の激遅インターネットプランの影響で「CATV=遅い」と思われがちですが、日本には多くのCATV事業者があります。
基本的な技術は一緒ですが、売り出し方によって速度が違いますので、CATVは遅いという先入観は捨てましょう。

ADSL

ADSLAsymmetric Digital Subscriber Line(非対称デジタル加入者線)の略です。(絶滅危惧種)
まだ光ファイバーの敷設がNTTと電力会社などが一部地域にしか到達していない頃、インターネット老人会のみなさんはISDNかCATVインターネットくらいしか選択肢がありませんでした。
そこに救世主ADSLが登場しました。
上り(アップロード)の速さを捨て、下り(ダウンロード)に速さを求めたものです。
基地局から利用場所を電話線で通信します。
電話線は光ファイバーと違って、距離によってもろに品質に影響を受けますので基地局から利用場所までの距離が遠いと速度が遅くなるというある種、理不尽なサービスと言えます。
とは言え、この頃は選択肢が無かったのでそれでも良かった(助かった)のです。
NTTは電話線を2025年までに廃止しようとしており、絶滅危惧種となっています。

CheckPoint
・もしかしたらADSLを使用している入居者がいるかもしれませんので、言葉だけでも知っておいてください。FTTHが部屋まで到達できないと揉める可能性もあります。

入居者無料のインターネットサービス

入居者無料と言っても、オーナーさんが負担をするので、厳密にはオーナー負担のインターネットサービスですね。

LAN配線方式

最も多いパターンです。
そして巷に「ネット無料は遅いからクソ」と言われがちな代表例とも言えます。
この項目は少し長くなります。

このシステムは、外壁部分(またはMDF室)まで光ファイバーを引き込み、ルーター→HUB→LANケーブルで各戸まで配線します。
1つ(戸数が多いと2〜3)の契約なので、通信事業者との基本料・プロバイダーの料金が1契約で済みます(6千円程度×契約回線数)。
それに加えてパッケージとして提供している会社に数千円〜数万円支払います。
それを何戸もにタコ足配線のように分岐しますので、例えば12戸のアパートでシステムの月額費用が1万2千円だとすると、戸あたり1,000円オーナーさんが負担することで入居者さんがインターネットを使用できます。
「個別に契約したら4千円くらいするのに、無料だなんてあら素敵」というのが10余年ほど前のこの手のサービスの創成期のお話でした。

LAN配線方式の速度が遅いかどうかは、

  • 引き込みの回線種類

  • ルーターの性能

  • HUBの性能

  • LANケーブルの規格

  • ヘビーユーザーが建物内にいないか

この5つにかかってきます。

CheckPoint
・各部屋まで配線工事が必要
・理屈はタコ足配線
・5つの条件のうち1つでも該当すれば遅いものになる

CATVインターネット

基本的な仕組みは入居者負担のCATVインターネットサービスと同じです。
全戸一括で契約をしますが、LAN配線方式と違って同軸ケーブルの性能さえよければ、装置の配布のみで済みます。
速度も100Mbsが各部屋で本当に出るものもありますので、「J;C◯Mのネット無料はクソ」の噂に風評被害を受けていると僕は思います。
速いか遅いかは、契約内容と事業者次第です。

CheckPoint
・速いか遅いかは本当に契約内容によります
・宅内工事が装置の接続程度なので入居者の協力を求める負担も少ない
・テレビのケーブルが古いと使えない。(新しく引き込む)

屋外Wi-Fi AP方式

名称は僕が勝手につけました。
Wi-Fiのうち2.4GHz帯を使います。屋内であれば5.2GHz帯が使えますが、日本国内では基本的に屋外では2.4GHz帯を使用することになります。

仕組みとしては、LAN配線方式と同じく光ファイバーを外壁まで導入し、ONU→ルーター→HUBを経由して、共用廊下に数箇所離しながらWi-Fiのアクセスポイント(ルーターと呼ばれがち)を設置し、各戸に向けて電波を飛ばします。

Wi-FiのIDとパスワードを入居者に交付して使用します。
室内の工事が不要!を売りにNTTからは「フレッツ光Wi-Fiアクセス」というサービス名で提供されていましたが、NTTらしさのあるややこしい仕組みと低品質なサービスにより一瞬にしてサービスが終了しました

他にはBuffaloが「アパートWi-Fi」というサービスを提供しています。
また、胡散臭い個人が貧弱なパッケージを展開しているのを見たことがあります。

特定の種類を悪く言うつもりはありませんでしたが、このWi-Fi方式は最悪なので注意しましょう。

CheckPoint
・NTTの黒歴史
・速い、遅いの以前に繋がらない

FTTH全戸加入

近年普及してきた方式です。
光ファイバーが部屋まで到達していますので、1Gbpsに近い速度が期待されます。
おそらく「オーナーの費用負担が一番高い」のがFTTH全戸加入です。

代表格はNTTの「フレッツ 光ネクスト マンション全戸加入プラン」で、LAN配線方式やCATVであれば入退去に際し何の手続きもいらないケースが多いのに対し、NTTの全戸加入プランは1週間前までに手続きが必要です。退去の際も連絡が必要です。
「ひかり電話」なども入居者負担にはなりますが、オプションとして利用できます。
調べてみるとNTT以外にもFTTH全戸加入のサービスを提供している会社も増えてきているようです。

CheckPoint
・「無料のインターネットは遅い」を全否定。マジで速い。
・オーナーの費用負担と管理会社の手間は激増。


以上、僕が思いつく限りのインターネットサービスのまとめでした。
この記事も数年すれば過去の産物になることでしょう。
そして、補足の内容があればコメントやDMで教えていただけると助かります。

後日、鴨鍋画伯にサービス構成の図解の依頼をするのでもっと視覚的にもわかりやすくなる、、はずです。

冗長になってしまう部分も補足として後日noteを公開予定です。
2022年1月27日 管理マン🍄

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