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小児てんかんだった話

今から30年以上前の話です。
かかりつけだった病院は既に閉院、子どもの頃のことなので薬や病名についての詳しい記載はありません。念のため断り書きさせていただきます。申し訳ありません。

小学校2年生の頃のこと。

朝、目を覚まそうとしているのに目が開かない。
母の声が聞こえる。

しばらくしてぼんやりと見えてきた。焦点が合わない。
体が動かない。

どうやら私は痙攣を起こしていたようだった。

健康だけが取り柄の私は学校を休むのが嫌だったが、とてもじゃないけど行ける状態ではなかった。

近くの町医者でもなく、地元で一番大きな総合病院でもなく、両者の中間のような病院に行った。
なぜそこだったのかは分からない。

その後服薬。錠剤が飲めなかったので、粉薬にしてもらっていた。薬はめちゃくちゃ不味くて飲むのに苦労した。それから数ヶ月服薬して、発作も起こらなかったのでやめてしまった。

すると、翌年また発作。気付いたときには救急車だった。しかしその後また気を失ったのか、その次に意識を取り戻したのは病院のベッドの上だった。点滴をうけていたような気がする。
そこからどうやって帰宅したか覚えていないが、ずっとぼんやりしていたような気がする。

勝手に薬をやめてしまったことで、母が主治医からしこたま怒られたことははっきりと覚えている。
何年もかかるけど薬をきちんと飲んでください、やめてしまったから発作が起きてしまったんです、と。

発作が起きて落ち着くと、その後に頭痛と腹痛と吐き気が起きた。起床時に起きるてんかんだったので、胃の中は空っぽ。胃液のようなものが出てくるだけ。子どもながらこの世の終わりみたいに思えた。時間が経てば回復したような気もするけど、とにかくすべてが猛烈だったのでもしかしたら何か薬が処方されていたのかもしれない。

二度目の発作後はきちんと服薬し、定期検査を受けるようになった。ちなみに薬はあの不味い薬ではなくなっていた。
服薬と年に一度、夏休みに合わせて脳波の検査。
頭皮にべたっとしたワセリンのようなものを塗りながら電極を付けていく。
今思えば髪が長かったから技師さんは大変だっただろうな…。

その後薄暗い検査室のベッドで横になり目を閉じて脳波を調べる。時々目の前がチカチカした。検査の中でライトの点滅があったのだろう。
起床時に起こるタイプのてんかんだったので眠らなければいけなかったが、静かな薄暗い部屋だったので割とすぐに入眠できた気がする。
光の点滅には反応せず、入眠と起床のときに脳波が乱れていた。記録した波形を見せてもらったが、明らかに上下に激しく振れていたのを覚えている。

その後服薬と定期検査を続けること5年弱、ついに断薬。中学一年の夏。
主治医からは「脳の働きをちょっと抑える薬だったから、やめたら成績上がると思うよ」なんて言われた。
いやいや、嘘でしょ?と心のなかで思っていたのだが、本当に成績が上がった。全然理解できなかった数学の問題がスルスルと解けるようになったのだった。
数学担当の教師からは、夏休みに頑張ったんだね!と言われたが実際は何もしていなかった。薬やめただけ。それだけだった。

全然理解できない感じはその後妊娠中に再び起こった。編み物をしようと思ったら編み図がどうやっても理解できず、編んではほどき編んではほどきだいぶ苦戦した。妊娠前には普通にできていたのに。なんとなくもやがかかっているような感じだった。
後に、あの感じは服薬していたときに似ていたな…と思い出した。

断薬はしたものの、脳波の検査だけはその後高校生になっても続けた。
そして高校3年生の夏、
「脳が傷ついていたために発作が起きていたけど、成長と共にその傷がなくなったと思われます。もう検査しなくて大丈夫ですよ。」
確か、そんなニュアンスのことを言われた。

何年も波形には異常なしの状態だったので、やったー!というよりはやっと終わった…という気分だった。

その後数十年、発作はない。
念のため既往歴としててんかんと書くものの、たいてい「これいつのこと?子どもの頃?ああ、小児てんかんね。うん、問題ないね」と言われるし、自分でも「そういえばてんかんだったんだよねー」くらいの感じではあるけど、なんとなく覚えているうちに書き残しておこうと思い、書いては直しを繰り返して今回公開することにしました。

参考になる記述など何もないけれど、こんなケースもあるということでご容赦いただけると幸いです。

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