4月11日



恐怖が耳の中で点滅
みんな虫はきらいだし
みんな害獣はきらいだし
みんな不潔はきらいじゃん
でもみんなそれなりにうまくやってる

一人でいたくないし家に帰りたくない
いつも一人でいたいと思うのに、こういう生命の危機みたいなときだけ一人でいたくないと思うのまじで情けない

夜が明けるまでどこから沸くのという無限の虫を潰し続けた青春がありありと蘇る
あのとき夜が終わった朝日をほんと一生忘れない
大袈裟かもだけどあんな気分は二度と味わいたくない
殺してください殺してくださいと言いながら潰して殺してるのはこちらの方だった

そこで一人じゃなかったら今頃大丈夫になれたのかな?

自分が20歳ぐらいのときパパの腸に穴開いて、すぐにでも手術しないと4〜6割は死にますと言われた時ついにきたかと思った

ママも死んでパパも死んで
お姉ちゃんとふたりになったとして
お姉ちゃんは彼氏途切れたことないから大丈夫
自分は?
自分は一人で生きていくからしっかりしなきゃ

パパが死んだら葬式はどうなる直葬になる?だってお金ない家も引っ越さないとお墓はなしがいいって言ってた相続手続き借金あったらどうしよういやいやその前に生きても死んでも病院代ってどうすればいい生命保険とかうち誰もなんも入ってないカードローンとか目的別ローンとか組むしかないのクレジットカードもまだ作ったことないいやいやその前に所得的にも高額医療費制度があるそれってどんな手続き?
専門辞めて働くのかな どこで?

20歳にもなりでかい図体してるくせに待合室ではそうやって考えていたお姉ちゃんとみなしごになった気分だった、パパが死んだらどうしようと思って暮らしてきたのに、いざ本当に死ぬかもというときなにもできることはない

とにかく諸手続きについて考えを巡らせたわりに実際の手続きはお姉ちゃんが率先してやってくれた。手術無事終わってからはわたしが病院に通って荷物を運んで引き取るを2日に1ぺん繰り返した。コロナだったから面会はできなかった。パパは一度人工肛門になりそのときはもうヨーグルトしか食べたくない、お酒なんか二度と飲みたくない。などと言っていたが、今ではすっかり何事もなかったように酒をガブガブのんでいる。死ぬぞ

多分ママが入院した時はもっと大変だっただろう。そのときは借金もあったから
いやな記憶は芋づる式でどんどん出てくる
きっかけはささいなことでも
すごく全部がつながってしまってるから

虫とか不潔とかそういう恐怖は常にあって、今は大丈夫、今は何もできなかった子供じゃない、知識もあるしお金も自分で自分の身を立てられるくらいにはなったから大丈夫。そう言い聞かせても、ささいなことがきっかけでウワーーーーーーーーーーっとよみがえる。

どんだけ自分が綺麗にしてても、穴という穴を塞いでても、集合住宅に住んでる限り建物全体のこととか、他の住民、管理会社、オーナーさんのことをわたしがどうこうできるわけではない。文句があるならお金持ちしかいない家に引っ越せ、それができるくらい努力しろ、資本主義社会なんだから、みたいな

別に仮になにか起きても、ちゃんとしかるべきところに頼めばそれで終わりなんだけど、記憶をどうこうするのは誰にも頼めない
自分でやるしかない
きっかけはどこにでも転がっている
街を一人で歩くのも怖い
でも誰かに会おうよと言うほど弱いアピールできない結局仕事以外ずっと一人

仕事が好き ずっと働いてたい
会おうと言わずとも人に会えるから
でも多分他の人は
仕事以外の場所に自分の居場所があるんだね
自分で自分のこと幸せにしてあげられない人が
誰かを幸せにするのは難しい
だから一人でも大丈夫って言える自分になれるまでずっと一人でいるって決めてる
それが悲しいんですね
家帰りたくない


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