見出し画像

阿佐ヶ谷のVELOCEはほぼ家


この季節、休みの日に家にいると気が狂いそうになる。春を素通りして、もはや暑いまである日本列島。一番安全なはずの家がこわい。おもに虫。対策はしてもしても安心できない。一生冬でいいのに。

朝起きて、ゴミ出し、家事を済ませて早々に、恐怖のあまり家を出る。だけど行きたい場所がない。座高円寺のアンリファーブルでサバサンドを食べ、ひやかし、新宿の画廊に行ってひやかし、おぞましいものをみて何を見させられているんだ?と具合が悪くなり、自分も同じことを世間様に対しておこなっている事実にキモくなる。「ピンポンパンポーン」というコンビニみたいな出入り口の音にビビり散らかし、コンビニエンスの意味を考えると皮肉だなと思う。皮肉だったのか?腐りきった路地裏を横目に早足、足元もバッグもお気に入りのピンクで、なにもかも満ち足りているはずが、まじでぜんぶキモいしどうかしている。イヤホン壊れて4ヶ月くらいたつ。音楽なくても道は歩けるよなと気づく。耳を塞ぐもの何もないのに、何も聴こえていないみたいです。路地裏で、先生から今までに何度か言われた言葉を延々ループする。「20代なんてモラトリアムだからね。」「自分ができることとできないことの区別がつかないんだね。」そうですね。ところで自分の顔が印刷されたコップでコーヒー飲むの、クリニックでは辞めた方がいいんじゃないですか?

帰りにお茶碗と、職場の方がお洋服をくれたので、そのお礼のお菓子を選んだ。職場の方は優しい。阿佐ヶ谷のVELOCEはほぼ家。時間がとまっているみたいに、頑張ってる人がいない。いるのかもしれないけど、誰も頑張ってるように見せてない。店員さんも若干ダルそうで、でも優しくて、そういう感じにホッとする。みんなこれでいいのに。

家帰りたくない。虫などの不潔をこんなにも恐れているが、実際には今の家に2年住んで出たのは一回。しかも侵入経路、エアコンと壁の隙間をふさいだら見事にクモすら出なくなった。クモすら!?実家に比べたら奇跡。

天国、まじで、働いてよかった!
労働万歳!
なのに虚しい。
なにこれは?

お育ちのよい方々からしたら「そもそも2年に1回も出ませんが?あなたの努力不足では?」と思われるかもしれない。勘弁してください。運は努力では買えません。

運(周りの住民の方のモラルなど)と多少の対策の掛け合わせが安心という結果を生む。逆に言えば運がゼロだと、対策をいくらしようが、ゼロにはなにかけてもゼロでしかなくあきらめるほかない。無常かな?

安心という結果を今はもう手にしてるはずが、とにかく怖い。強迫的に怖い。

ウワーーーーーーーーッ
と叫んで走りまわりたくなる。
実際、最近はほぼ毎朝仕事の前に走っている。
そのおかげでなんか痩せた。
ありがとう恐怖、ありがとうトラウマ。ムキムキのサンキュー飛び交うマクドナルドに育ててもらいました。なのにすこしも大丈夫にならない。来るかどうかわからない未来が怖くて怖くてたまらない。他の人がどうやって精神安定させてるのかを教えてほしい。

先生は仕事で業務をこなす。こちらも生活を立て直すために2週にいっぺん病院に通う。遅刻もドタキャンもしない。目的はシンプルでハッキリしている。
「なんでここに来るのか?」
「こんなところに来なくて済むように。」

進んでる気がしないのは、自分の努力が足りないからで、だから仕事をとにかくこなす。通帳の残高が心の拠り所になっていく。同世代の平均貯蓄額!みたいな特集を見て、ふーんと思う。絶望する前に、恋愛とか遊びをしなきゃいいのに。仕事すればいいじゃん。こんなこと言う自分がつまらない人間みたいでまったく惨めである。惨敗の惨は惨めという字。不寛容が服を着て歩いている。ショーウインドウに映るのは自分の顔じゃなくて不寛容という漢字3文字である。

前回、「最短で行こうとしなくていい」「寄り道も必要」と言われた。なんでそんな悠長なことを言っていられるのかがわからない。根拠がわからない。その心は?と、笑点を始めたくなってしまう。そもそも診察室で自分の顔が印刷されたコップでコーヒー飲んでるのはなんなんですか?とイライラするが、半年間スルーしている。それこそ自己愛じゃないんですか?

向こうもコイツはマジで変わんねーなとイライラしているかもしれない。しかしそうであっても、それも仕事と割り切っているんだろう。こちらも割り切っているからなにも期待していない。役割を演じることで社会が円滑に回る。仕事がそれのいい例だ。それを応用すれば話は単純で、患者を演じるんじゃなくて普通をやれば普通になっていく。仕事万歳、労働万歳。

それだけのことなのに、それだけのことが本当に泣けて泣けてどうしようもない。悔しい。

不動産屋さんに電話するの怖い。前会った時“さん”すらつけたくない態度でなんなんやと思ったが、でも、不動産屋さん。来週こそ電話する。今日はもう無理。おしまい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?