FND第二作「Fox Soul Festival」description完全版

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「狐面の少女」
本作の中心に座り、狐の面をして祭りを楽しむ少女。少女が顔を見せないのは固有のキャラクターではないためです。

彼女はあなたがあの夏に出逢った、もしくはこれから出逢う少女、もしくはあなた自身かもしれません。

彼女とのひと夏の思い出の どこか艶っぽく秘密めいた空気を表現するために立体感を重視する厚塗りではなく、現実と異世界の境界をあやふやにするような にじみを強調する水彩を主体に彩色を行いました。

鮮やかな浴衣、たなびく髪には特に気を配り彩色しています。

私はこれまで水彩を主体にした事がありませんでした。本作の作風が私にとって重要な転換点になってくれる事を願っています。

「花火」
花火を見上げる時の掛け声「たまや~(玉屋)」「かぎや~(鍵屋)」は江戸の花火屋の屋号です。(かぎや〜はあまり聞いた事がありませんがこれは当時も同じで、かぎやは語呂が悪く言葉がひっかかるので 粋を好む江戸っ子にはウケが悪かったようです)

この玉屋、鍵屋という名前は稲荷大社の「玉鍵信仰」という考え方から来ています。狐はお稲荷様のお使い。狐火という言葉から、お稲荷様は防火のご利益があるとされていました。

狐面の少女をモチーフにしようと決めた時、花火の背景が最初に頭に浮かんでいました。

夏の夜空を華やかに彩る花火はもちろん注目に耐える丁寧さで描いていますが、背景である花火のさらに背景の夜空はにじみを最大にいかして作り込みました。一見地味な黒い背景にも苦心した気配を感じてもらえたら嬉しいです。

「おキツネさん」
神社の入り口で境内を守っている狛犬は「拒魔犬」からきていて(諸説あり)、その役目は境内を守る事です。

稲荷神社の入り口にいる「おキツネさん」は狛犬とは別物で、その役目は境内を守る事ではなく神様のお使いで、眷属、神使と呼ばれます。

稲荷大社のおキツネさんは、玉(宝珠)、鍵(米蔵の鍵)、巻物、稲穂をくわえています。本作では花火の玉屋と鍵屋にかけて玉と鍵を選びました。

苔むした石像はノスタルジックな空気作りに重要な要素だと感じ、布類との描写の違いを意識して彩色しています。

「お稲荷様」
お稲荷様、稲荷神社は全国に3万社もあるとても身近な神社です。稲荷神社の歴史は古く、元々は「伊奈利」という名前で「風土記(713年)」に登場しました。

伊奈利とは、伊奈は「稲」、「利」は穂先の垂れた植物(禾)を刃物(刂)で刈り取る、稲の収穫を表しています。
稲荷神社にとってのアイデンティティは稲穂です。画面の中心に位置する少女に稲穂をモチーフにした帯飾りを用意しました。


「ビロード、尾、肌、水の表現」
本作は三次元的な立体感よりも物質ごとの質感を感じてほしいと考えて制作しました。

左右に舞う帯の裏地はビロード布をイメージして毛羽立ちを作りました。

尾は少女から生えるには相応しくない、固くごわごわとしていかにも凶暴で野性的な物にしました。

肌は小説でみかける表現「まるで死体のように白く美しい肌」を再現してみました。

右手に持つ金魚は当初、差し色として水色の水風船だったのですが、質感に幅を持たせるために透明な水と金魚にしました。


「終わりに」
本作は、一夏の秘密を異性と共有する高揚感を、日本に馴染み深いお稲荷さんを舞台に描きました。

技法について、当初予定していなかったのですが最初の影入れで今まで避けてきた水彩が世界観にピタッとハマったため主にする事にしました。

水彩は塗りの後ににじませるという段階的な工程で作るにじみが魅力なので、修正がききません。筆ごと一発勝負になる箇所が多く私には不向きだと思っていましたが、私の描きたい世界にとてもマッチしていました。

期せずして新しい作風への挑戦となった本作が、奇特などなたかの心に深く突き刺さる事を願っています。

本作が収録されているコレクション「protect wild animals」は売上の20%を野生生物保全基金へと寄付させていただきます。

本作は8月15日20時より、0.12ETHでリストさせていただきます。よろしくお願いいたします。

使用ソフト:クリスタ
主な使用ブラシ:Gペン/水彩ブラシ/色鉛筆/有償油彩ブラシ

ここまで長文乱文にお付き合いいただきましてありがとうございました。


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