スター・トレック〜死ぬまでに是非一度は観て欲しい名作SF〜

スター・トレックとは?

 スター・トレックとは、アメリカの連続SFテレビドラマである。1話あたりは45分程度、原則として1話完結のエピソードの集合で構成されている(1話目やシーズン跨ぎの回、最終回は前後編が多い)。
 1979年に1作目が放映され、2022年現在も最新作がNetflixやAmazon Primeで配信されており、映画作品も10本以上作成されている。本国ではSF界においてスター・ウォーズと並んで知名度の高い人気コンテンツと言って差し支えないだろう。

 しかしながら、日本においては残念ながらスター・ウォーズ程の知名度が有るとは言えないのが実情である。
 『名前は聞いたことあるけど内容は知らない』『スターウォーズの親戚?』『バルカン人?バルタン星人じゃなくて?』などと言う諸兄もさぞ多いことだろう。フェイザーで頭を撃ち抜いてやりたい。

 現に日本人の1トレッキー(スター・トレックファンの俗称)である自分も、小学校〜大学にいたるまで一人も同好の士と出会うことは無かった。布教も上手くいった試しがない、無念なことである。
 スター・トレックとスター・ウォーズを混同している輩を、エアロックから宇宙に放り出したくなったことも一度や二度では無い。

 このSF史に燦然と輝く一大コンテンツには、語り尽くせぬ魅力が秘められている。次の項からは、筆者の思うスター・トレックの魅力、その一端を紹介していこう。

限界まで雑で簡単な世界観説明

 21世紀、核戦争で地球が荒廃する。サツバツ!
→天才アル中ファンキーお爺ちゃん科学者『ゼフラムコクレーン』、光速を超えるワープ航法開発に成功。行くぜロックンロール!
→偶然近くを航行してたバルカン人(異星人)『え?地球人がワープ成功?なかなかやるやん。挨拶したろ』。地球人、初の異星人とのファーストコンタクト成功。ユウジョウ!
→地球、めっちゃ栄えて団結する。調子に乗って友達のバルカン君やいくつかの星と『惑星連邦』樹立、盟主となる。やったぜ。
→宇宙にはまだまだ未開のフロンティアだらけや!探検するぞー!ついでに、仲良く出来そうな異星人は惑星連邦に勧誘や!

スター・トレックの魅力

①本格的で骨太なSF世界観

 スター・トレックの世界観は、緻密かつ非常に壮大である。我が家にも枕に出来そうなサイズの公式発行のエンサイクロペディアがある程だ。

 ワープ技術やホログラムなどのSFではお馴染みの超テクノロジー、様々な環境の惑星、一癖も二癖もある異星人など、毎度次から次へと新しいアイディアで我々視聴者を歓ばせてくれる。

 そしてスター・トレックが真にエンタメ作品として優れているのが、これら壮大な世界観を決して視聴者に押し付けないスタンスである。
 なるほどこの作品は魅力的な設定に溢れてはいるが、ほとんどの話が知識の下敷き無しでも楽しめるよう、どこまでもエンタメに特化している。
 『本格的SF作品』などと言う堅苦しいラベルを貼る必要など無い。スター・トレックはソファに寝そべりお菓子でも食べながら、ただ気軽に楽しめば良い素晴らしい娯楽作品なのだ。

②バラエティ豊かなストーリー

 さてここまで読んでくれたスター・トレックを知らない諸兄らの脳内には、どんなストーリー展開が予想されているだろうか?恐らくは異星人との文化交流や、様々な謎と驚異に満ちた未開惑星を切り拓く、言わば王道SF冒険活劇的なストーリーを思い浮かべたのでは無かろうか。

 それは決して間違いではない。確かにそう言った筋書きの回は少なくないし、スター・トレックにおいて欠かせない要素だ。しかし、スター・トレックはそれだけの作品では断じて無い。いくつか例を挙げてみよう。

 人間に憧れるアンドロイドがクルーと打ち解けるため、エンジニアと真剣にユーモアについて研究する。
 彼はアンドロイドならではの過去のコメディアンの完璧な模倣をするも『お笑いって、そうじゃないだろ』と言うもっともな指摘を受ける。
 では『ユーモア』とはなんなのか?ひいては、人間性とはなんなのか?二人の研究は熱を帯びていく。

 ある友好的な種族とファーストコンタクトを遂げたクルー達。彼等の母星は、暖かな日が差し美しい花が咲くこの世の楽園のような星であった。
 しかし、現地の子供達と遊んでいたあるクルーの息子が、不注意から花壇の柵を折ってしまう。驚いた事に、彼に下された判決は死刑。その星は、どんな些細な罪にも死刑で応じることによって秩序が保たれた、恐ろしい星だったのだ。
 他種族の文明尊重と、クルーの命を守る義務の板挟みに合う船長の決断は……

 AIのドクターが、事故の際にまったく同じ症状で死に瀕している2人のクルーの手術を求められ、どちらを優先するか究極の選択を迫られる。助かる見込みはどちらも同じ、論理的かつ倫理的な正解はない。彼は親しい友人を選び、選ばれなかったクルーは息を引き取った。AIであるが故に誤魔化しや忘却に逃げることのできないドクターは……

 SF世界を舞台に、アクション、コメディ、ラブロマンス、ミステリー、戦争、宗教、死生観……あらゆるジャンルを網羅した、バラエティ豊かなストーリー展開こそ、スター・トレックの真骨頂である。膨大な話数ながら飽きがこず、ファン一人一人にお気に入りのエピソードがある。
 かく言う筆者も小学生の時分にこの作品に触れ、差別主義の醜さや相互理解の大切さを学んだものである。この作品には底知れぬ懐の広さと、計り知れない魅力が詰まっているのだ。

③膨大なエピソードと『育つ』キャラクター

 さて、スター・トレックは連続テレビドラマである。ならば、1作品あたりどのぐらいのポリュームが有るのだろうか?ここでは1979年〜2005年までに放映された5作品(筆者は勝手に旧作と呼んでいる)を例に挙げてみよう。

1作目:スター・トレック 全79話
2作目:ネクストジェネレーション 全178話
3作目:ディープスペースナイン 全176話
4作目:ヴォイジャー 全172話
5作目:エンタープライズ 全98話

 ……気持ちは分かる、だがちょっと待って欲しい、アメドラは大体こうだ。サードウォッチもフレンズもメンタリストも、平然と100話、150話を超えてくる、これはもう文化の違いと言うしかない。

 ポイントは、これら膨大な話数の中で熟成され変化していく人間関係と、クルーの成長である。自らの欠点を克服して一人前になっていくクルーがいれば、当初は衝突が多く仲の悪かった2人のクルーが、シリーズ後半では篤い友情で結ばれていたりもする。
 スター・トレックシリーズは、決して艦長=主人公ではない。時には大胆にも丸々1話を、レギュラー1人のキャラクター像を掘り下げることに使うことを惜しまない。
 視聴者は回を追うごとにクルー1人1人の事がどんどん好きになり、最終話ともなれば彼等との別れに爽やかな寂寥感を覚えずにはいられないのである。

実際に作品を観るには?


①視聴媒体


 長らくVHSやブルーレイか海外ドラマチャンネル等しか視聴手段がなく、気軽に手を出すのが難しかったが……現在では、Netflixで旧作全話に加えて最新作も視聴可能である。
 まずは試しにスター・トレックの世界に触れてみたい人には最も手軽な視聴媒体だろう、Netflixユーザーには是非オススメしたい。

②どれから観れば良いの?


 この質問を軽い気持ちでトレッキーにしてはいけない。トレッキーが突然スター・トレックを知らない友人にこの質問をされたならば、憂悶の末七孔噴血して倒れかねない。
 ……と言うのは半分冗談にしても、これは難しい問題である。問題の質としては『ガンダムどれから観れば良いの?』に通じるものが有るだろうか。
筆者の独断を述べるのであれば

・第一候補:2作目、ネクストジェネレーション

 だろうか。これは適した作品を選んだ、と言うよりは、1作目には避けた方が良さそうな作品を除いた結果である。
 初代スター・トレックは流石に映像作品としては古過ぎる。それこそ2000年代以降のアニメ作品に慣れた人に初代ガンダムを勧めるような『危うさ』がある。
 3作目のディープスペースナインは、舞台設定がやや特殊で、作りに若干の癖が有る作品である。クオリティは高いが、入門作としては不適かと思う。
 4作目のヴォイジャーは筆者の愛してやまない作品だが、若干過去作との繋がりやゲスト出演が多く見られるため、過去作を視聴した上で見るべき作品と言えるだろう。
 5作目のエンタープライズは、実は作品内の時系列的に旧作の中では一番過去なので一見『アリ』なのだが……実はこの作品、途中で打ち切りを食らってしまった作品なのだ。中期以降に制作陣のゴタゴタから来る質の低下が顕著であり、流石に入門には適さない。

まとめ

 さて、オススメの入門作品であるネクストジェネレーションを始めとした各作品の紹介……は、次回以降の記事に譲ろうと思う。流石に短くまとめる自信が無い。今回はあくまでもスター・トレックシリーズの概略に留めておこう。
 スター・トレックは間違いなくSF史を代表する傑作の一つである。この作品ならではのどこまでも広がる多彩な面白さを、一人でも多くに知ってもらえたなら、トレッキーの端くれとしてこれ以上の喜びはない。
 少しでも興味が沸いた方には、是非とも各作品の1話だけでも視聴していただき、その奥深さを知っていだければ幸いである。

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