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30回の旅、50本の原稿、700枚の写真。
これは2023年の私が、車を走らせ、書いて、撮ったものたちを(大まかに、記憶の範囲内で)数で表してみたものです。
12月の始まり、ある作家さんとお茶していたときに、「今年みんな、どれくらいの数のものをつくったんだろうね」という話をしたのが頭に残っていて、振り返ってみたくなりました。
多いとか少ないとかは置いておいて、並べてみるとなんだかしみじみとした気持ちになりますね。飲んだコーヒー豆の種類とか、読んだ本の数とか、つくったお弁当の数とか、もっと記録しておけばよかったなとちょっぴり後悔しています。
今年も一年、本当にいろいろなことがありました。できたこと、できなかったこと、自分がいちばんよくわかっています。
それぞれ数にしたら、できなかったことのほうが多いかもしれません。だけど、その両方から得られたものはとても大きくて。締めくくるには少し気が早いけど、総じて良い一年だったなと思います。
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2022年の終わりから2023年の頭のほうまでは、心身ともにハードな時期を過ごしていました。仕事納めの日までホワイトアウトの中を取材に向かって、大晦日まで原稿を書いて。年が明けてすべての原稿を終えた後、熱を出して寝込んだりしました。
それから春と夏と秋が過ぎて、冬を迎えて。今は穏やかな気持ちであの頃を振り返ることができています。さらに最近は、「あなたに書いてもらえてよかった」とか、「撮ってもらえてうれしい」というメッセージを受け取る機会がつづきました。それがとてもうれしくて、少し不安です。
いいことばかりはつづかない。ずっとそう思って生きてきて、実際にそうで、いいことの後のつらいことは余計につらい。だからいつも、順風な空気を感じると不安になってしまいます。
だけど今朝になって、ふと思いました。
30回の遠出をして実際に見て聞いて、そこで撮った写真の中から700枚を選びとって、文章を書き、50本の原稿をまとめてきた。この数字は自分の手と足を使って、たくさんの人に支えてもらって、積み重ねてきたものです。
今、私がもらえているうれしさはその積み重ねの上にあるもの。だとしたら、受け取ることに躊躇する必要なんてないし、ちょっとやそっとのことでは崩れない。この後またつらいことがあってもちゃんと戻ってこられるんじゃないかと思ったんです。
思い過ごしじゃなければこの一年で、形は多少凸凹していても、それなりに丈夫な芯を心に通すことができたような気がします。
私にはどこか頑ななところがあって。「つらかったけど、乗り越えて良かった」、「大変な時期があったから今がある」。そういうところは確かにあったけど、すべてをきれいにまとめるつもりはありません。
受け取らなくても良いつらさを受け取る必要なんてないし、ただがむしゃらに努力したってうまくいかないこともある。私はたまたま乗り越えられただけ。別の道を示してくれた人の言葉も、別の道を選んだ人の未来も、誰より信じているし、どんな道も自由に選ぶことが許される時代だと思うからです。
そう書いておきながら、決して心が強いタイプではないので。年内に落ち込むことがあるかもしれないし、来年だってずっと健やかとはいかないでしょう。折れそうになったときは、自分の足元を信じて。うれしいメッセージも失敗も、素直に受け取って。一つひとつ重ねていきたいです。
来年は何回取材の旅に出て、何本の原稿を書くでしょうか。数を目標にするつもりはありませんが、未来の自分を支えてくれるような数を重ねられたらいいなと思います。
いいことが多かった人も、そうじゃなかった人も、今年一年おつかれさまでした。何か良い数字を見つけられていたら、そっと教えてもらえたらうれしいです。
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