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大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族4

 周軍を率いる将軍衛峰は何がどうなっているのか分からなかった。朝目が覚めると杭に縛りつけられ惨殺された兵が山の様に積み上げられていたからだ。
 
 どうなっている…。

 此れは一体…。

 衛峰は突きつけられた現実を受け入れる事が出来なかった。何故縛られているのか ? 何故自分の兵が殺され山積みにされているのか ? 理解出来なかった。だから、衛峰は目を閉じてゆっくりと昨日の事を思い出す事にした。

 そう…。

 昨日だ…。

 昨日…。私は何をした ?

 何を ?

 そうだ…。

 女しかいないと言われる集落に来たのだ。

「あれがそうか ?」
 少し先に見える集落を見やり衛峰は女に問うた。女はそうだと答えた。
「想像より大きいか…。」
「その様です。」
「しかし、本当に女しかいないのですかねぇ…。」
 と、兵士は疑う様に言った。兵士が疑うのは当然である。現実的に考えても其れはあり得ない話だからだ。
「嘘かもな…。」
 衛峰が言うと女は本当だと言った。
「行けば分かる。」
 と、衛峰達は更に進み集落に辿り着いた。
 集落に着くと既に多くの娘達が入口の両横に立ち並んでおり彼等を歓迎した。其の状況に衛峰は驚いたが、直ぐに罠かもしれないと構えた。
「其方が渡来人か…。」
 真ん中に立つ娘、ヤリスが問うた。衛峰の横に立つ女がヤリスの言葉を訳し聞かせた。
「そうだ。周国の将軍衛峰だ。」
 女が訳し伝える。
「周国 ? 将軍衛峰 ?」
 と、ヤリスが聞き返すと女が分かりやすく説明した。
「成る程…。我は此の集落の長ヤリスじゃ。衛峰殿。我等は其方らを歓迎しよう。」
 と、言うとヤリスは衛峰達を中に招き入れた。だが、衛峰は其の言葉をまに受ける事はしなかった。衛峰は女達を見やり直ぐに何か唯ならぬ物を感じ取っていたのだ。だから、衛峰は部下に周辺を隈なく調べる様に伝えた。
「どうも引っ掛かる。」
 ボソリと衛峰が言った。
「ええ…。此の集落は他の集落と少し感じが違います。」
「あぁぁ、此処の女達は戦う事を知っている。」
「真逆…。」
「その真逆だ。良いか。気を抜くなよ。」
 と、衛峰達は案内されるがまま進み大きな広場に案内された。
「さぁ、衛峰殿。皆よ。疲れたであろう。ゆっくりなされると良い。」
 と、ヤリスは皆に腰を下ろす様に言った。ヤリスが大きな竪穴式住居に案内するのでは無く此の中央広場に衛峰達を案内したのは、衛峰達を軽く見ていたのでは無く、客人をもてなす時は中央広場に案内するのが常識であったからだ。衛峰達も多くの集落を征圧していたので其の事は理解していた。だから、違和感無く其処に腰を下ろした。
 ヤリスは衛峰の前に跪くと横に座る許しを乞うた。其の対応に気を良くしたのか衛峰は其れを許すとヤリスは衛峰の足に口づけをしてから横に座った。ヤリスの此の卑屈な行いを見やり衛峰は更に気分が良くなった。其れはまるで自分が王にでもなった感じだった。
 ヤリスが衛峰の横に座ると、酒や食べ物が運ばれ始め娘達は服を脱ぎ兵士達をもてなし始めた。通訳の女は唯其れをジッと見やっていた。この先に何が起こるのか…。女は想像出来ていたが衛峰達には何も言わなかった。何故なら女は好きで通訳をしている訳ではなかったからだ。どちらかと言うと夫と子供を殺され衛峰達を恨んでいた。

 だから…。

 女は期待していた。

 娘達の噂が本当である事を。

 そして、淫らな宴が進んで行く中、偵察に行っていた兵士達が戻ってきた。兵士達は此の淫らな状況を見やり困惑した。
「しょ…。将軍此れは ?」
「戻ったか…。其れでどうだった ?」
 ヤリスの胸に埋もれ乍ら衛峰が問うた。
「な、何もありませんでした。」
「そうか…。なら、お前達も楽しめ。」
 と、既に衛峰はヤリスの手の中であった。

 そして…。

 今である。

「衛峰殿。お目覚めじゃか ?」
 衛峰の前に立ちヤリスが言った。勿論女が通訳をしている。
「ヤ、ヤリス…。此れは一体どう言う事だ。」
「見ての通りじゃ。」
「我等に逆らうと言う事か ?」
「我等は誰にも支配されぬ。」
「我等に勝てるとでも思っているのか ?」
「其方らの事は女から聞いた。」
「聞いて尚争うか ? 分かっているのか ? お前達が如何に強かろうと何十万と言う兵が攻めて来るんだぞ。」
「海を渡ってか ? 例え何十万の兵を送ろうと、其の全てが無事に海を渡れると思うてか。」
 と、ヤリスは言ったが、此れは適当発言である。
「渡れるさ…。我等を舐めるな。」
「舐めてなどおらぬ。」
「で、我をどうする気だ ?」
「悩んでおる。」
「殺せ…。生き恥を晒し国には戻れぬ。」
「分かりよった。」
 と、ヤリスは石槍を構える。
「だが、忘れるな。此の地は既に我等が物。我等が支配した集落には我が国の文明が広がりお前達はとり残される。」
「文明 ?」
「見事だろ…。剣に矛に鎧。お前達には無い物ばかりだ。其れを我等が支配した集落の奴等が手にするんだ。騙し打ちで勝てても戦には勝てぬ。分かるか…。此の集落は滅亡するんだ。」
 と、衛峰が言うとヤリスは兵士が持っていた剣を見やる。
「あれは欲しいじゃか…。」
 ボソリと言った。
「なら、服従しろ。朝貢をすれば、其れ以上の見返りが送られる。」
「朝貢 ?」
「そうだ。朝貢をするだけで良い。我等が求めるのはそれだけだ。此の集落に我等が住み着くなんて事も無い。」
「住み着かぬのか ?」
「フフフ…。我等の国を知れば分かる。誰がこんなキャンプ生活みたいな事をしたがるか。」
 と、衛峰はヤリスを見やり笑みを浮かべた。
「少し待っておれ…。」
 そう言ってヤリスは皆を集めアレやコレと議論を交わし始めた。娘達はピカピカ光る剣がどうしても欲しかった。周と言う国を見てみたい気持ちも強かった。

 だから…。

 衛峰を解放した。

 解放された衛峰は山積みにされた兵士の前に跪き涙を流した。娘達は其の姿を見やり何とも思わなかったが、衛峰を優しく抱きしめてやった。多くの娘に絆された衛峰はそのまま娘達に蹂躙された。
 其の中で女は気に入らない目で衛峰を睨め付けていた。夫と子供を殺した兵士の長がのうのうと生きている事が許せなかったのだ。
「気に入らぬか…。」
 ヤリスが言った。
「当たり前だ…。あの者達は…。」
 と、女は涙を流す。
「今は我慢じゃ。其方の言う様に海の向こうにも大きな島があり、我等を凌ぐ文明が真にありよるなら先ずは其の文明を知らねばならぬ。」
「でも…。」
「焦ってはいけんじゃかよ。許せぬからと衛峰を殺せば我等に先はありよらん。先ずは文明を奪い国を作り対抗できる力を持たねば戦えぬ。」
「戦うのか ?」
「何はそうなりよる。じゃが、此の地は皆がバラバラ。今のままでは我等は負けてしまいよる。」
「又騙し打ちすれば…。」
「何回も通用せんじゃかよ。」
「そうか…。」
 と、女はグッと歯を食いしばった。
「じゃよ…。」
 と、ヤリスは優しく女を抱きしめてやった。
「其方が良いなら、我等が集落に来よるか ?」
「い、いいのか ?」
「かまわぬ。」
 そして、女が仲間に加わった。
 ヤリスは女が落ち着くのを待ち女に名前を付けてやると皆の所に戻って行った。ヤリスは女をイリアと名づけ、女は其の名前をとても気に入った様だった。
 皆の所に戻ると衛峰は娘達に蹂躙されている最中だった。衛峰はとても幸せそうな顔で娘達の言いなりなりバットをブンブン振り回している。その表情姿からは死んだ兵士の前で涙を流した姿は微塵も無く唯のエロ親父がウヒョ〜であった。
「まったく…。男はチョロいじゃかよ。」
 衛峰を見やりヤリスが言った。イリアは何とも悲しそうな顔で其れを見やっていた。
 そして、其の夜。衛峰はイリアを連れてヤリスの所にやって来た。イリアを連れて来たのは通訳をして貰う為である。
「衛峰殿…。どうしたんじゃ ? 夜這いじゃか。」
「流石に無理だ。吸い尽くされてしまったよ。」
「じゃかぁ…。」
「此処に来たのは今後についての事だ。」
「今後 ?」
「そうだ。朝貢と言っても何をすれば分からないだろう。」
「分かりよらん。」
「うむ。内容は其の時によって異なるが大体は奴婢と財宝だ。」
「奴婢 ? 財宝 ?」
 と、ヤリスが聞き返すと奴隷と高価な物とイリアが分かりやすく言い直した。
「奴隷…。高価のぅ。」
「銅だ。」
「銅 ?」
「そうだ。まぁ、分からないだろうから採掘の仕方等は周国から人夫を派遣する。後は、奴婢なんだが男三十人女五十人は必要だ。」
「女 ?」
 と、ヤリスは衛峰を睨め付け言った。
「あ…。否、この集落の女でなくて良い。」
「なら、構わぬ。」
「良かった。其れと此の集落の女を二十人。此れは周国の文明や文化を学び此の集落に持って帰る女達だ。」
「ほぅ…。其れなら一杯おるじゃかよ。皆興味深々なんじゃ。」
「そうか…。」
 と、言うと衛峰はイリアに外す様に言った。イリアは言われるがまま外に出て行くと衛峰はヤリスを抱き寄せそのまま眠りについた。
 其れから三日が経ち衛峰は先遣隊として十人の娘達と翡翠を使った装飾品を土産に周国に旅立って行った。

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