坂本龍一さん。永眠。

坂本龍一さん。永眠。

中高生の頃ピアノをやっていて、坂本さんの曲を弾くのが好きでだいたいはマスターしたと思う。思想面も含め人生でもっとも影響を受けている一人だった。

坂本さんのことを考えるとどうしても父のことを思い出す。
父は坂本さんと長年の、学生時代からの付き合いかある友人だった。

――学生だったころ、三島由紀夫が自決した翌日、彼は全部頭を丸めてきたんだよな……彼は左翼だったけど三島は尊敬してた……彼の父さんが「仮面の告白」の編集者だったんだ。――

などと子供のときよく思い出話を聞かされていた。やがて坂本さんのエッセイでそういった当時のことが書かれているのを読み事実だとわかった。

父に連れられ坂本さんの公演の楽屋に入ったこともある。
オペラ「LIFE」のときだ。目の前で二人が握手していた。
私は緊張しすぎて全く挨拶できなかったが。
その父ももういない。彼もだいぶ前ガンで死んだ。

また、学生のとき講義で特別ゲストで来られたこともあった。そのときも目の前にいたが、話しかけることができなかった。

いつか坂本さんとお会いして父のことなどを語らいたいと思っていたがかなわなかった。
だが、それで良かったのかもしれない。
本当に「神」レベルで尊敬する人と会うと、人は黙ってしまうものだから。会話にならないだろう。

音楽には構築美、躍動美、幻想美などいろんな美があるが〈退廃美〉にかんしては世界的にみても坂本さんを超える人はいないと思う。いたら教えてほしい。

あと、思想(政治などの)がブレない人だったと思う。80年代の文化人は、その後思想が変節した人が多い。だが彼は最後まで闘士だった。

坂本さんは、まだ生きている。

これだけはたしかなことである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?