福島ユナイテッドFC 2019シーズン選手通信簿

終わっちゃいましたねJ3。福島ユナイテッドは18クラブ中11位でシーズンを終えました。若手の活躍が目立ったなあと思う一方、ベテランや特に中堅がもっとやれてほしかった、個人的にはそんな感想です。

GK
1番 堀田 大暉 33試合出場 51失点
年間を通してレギュラーの座を掴み、まさしく守護神としてゴールマウスに立ち続け毎試合のようにビッグセーブを見せてくれた。トータルで50失点を越えたとはいえ堀田じゃなければあと15失点くらいはしてたんじゃないか。それくらいありとあらゆるシュートを防ぎ続けた。ハイボール処理や飛び出しの判断も早くなり、1対1や至近距離からのシュートに抜群の強さを誇った。フィードやビルドアップが高精度というわけではないけど、プレスを受けても焦らないし変なキックミスもしない。J3では屈指の実力者に成長したんじゃないだろうか。J2とかでもバックアッパーやレギュラーを脅かす選手として欲しがるとこあるんじゃないかしら。

16番 キム ミンジュン 1試合出場 2失点
高卒ルーキーで試合出場を果たしただけでも及第点じゃなかろうか。長い腕と横っ飛びの伸びは印象に残ったけど全体的にはまだまだ若いといった感じ。保有元の湘南ベルマーレが別のGKを探してるようなので復帰は難しいか。まだキャリアの駆け出しなので気長に見ていきたい。

21番 イ ユノ 出場なし
序列的には2番手を確保したが堀田の牙城は崩せず。長身でリーチの長い現代的なGKなのだが。保有元のベガルタ仙台の選手層ではなおさら出場機会が無さそうなので来年も残った方がいいのでは。

DF
3番 阪田 章裕 29試合出場 0得点
チーム最年長でキャプテンを勤めたが、率直に言って年齢からくる衰えが目立ってしまった、そんなシーズンだった。CBで終盤までレギュラーを務めたものの要所でのフィジカル負け、スピード負けが増え、インターセプトの出足も昨年ほどのキレが無かった。とはいえ監督も高く評価してた戦術理解力やちゃんと考えてボールをクリアする能力はチーム随一。ボールを配給する判断自体は悪くなかった。そもそも35歳の大ベテランにフル稼働を求める方が酷だろう。コンディションさえ整えば抜群のに冴えたディフェンスをするので来年もうひとふんばりしてほしい。

4番 宇佐美 宏和 20試合出場 0得点
左右のSBを務めつつ終盤戦はCBでレギュラーを確保。抜群の身体能力は相変わらず錆び付かないが、怪我での離脱が今年もちょっと多かった。攻守に存在感があったし、スピードがあるCBってのは魅力的だったけど熱くなり過ぎる場面も多かったのでもう少しバックラインの統率力が欲しい。サイズが無い分、競り負けたりするのはしょうがないけど現状スピードで背後をカバーできる唯一の選手なので来年も何とかがんばってもらいたい。

5番 岡田 亮太 11試合出場 0得点 1アシスト
序盤はCBのレギュラーだったが中盤は左SBにコンバート。しかし夏以降は怪我での離脱を繰り返しコンディションを取り戻せなかった。高さと強さがあるし、右利きながら左足でも高い精度のボールが蹴れるのは大きな武器だった。ベテランの域に入ってきたので、チームを引っ張ろうという意識もあちこちで見せていたのだが・・・正直5番を引き継ぎ、強い覚悟を持って臨んだシーズンだっただけに年間通して活躍できなかったのは残念無念。バックラインのどこにも対応できるし強さと上手さがあるので来年もう一度輝く姿を見せてほしい。

13番 石渡 旭 3試合出場 0得点 
大卒ルーキーながら開幕スタメンを勝ち取ったものの怪我とかもあってその後はベンチ入りもままならず。待望の本職左SBだったが戦術的にはミスマッチだった感もある。フィジカル的にもタフだし、想像以上に技巧派な選手だったけど要所でのクオリティをさらに上げたい。

15番 石堂 圭太 8試合出場 0得点
夏場にクローザーとしての地位を確立。両SB、両SHに対応したが1年で契約満了となってしまった。守備では体を張れるし、縦に走らせた時の推進力はなかなかのものがあったけど、技術的にもメンタル的にも色々足りなかった気がする。特にメンタルは気弱になる場面が見受けられたのが結構痛かったし、この手の縦の走力で勝負みたいなタイプの選手が今年の福島のやりたいサッカーとミスマッチだったのも活躍できなかった原因なんじゃないか。実力はそれなりにあるのでどこか拾ってくれるといいんだが。

19番 河西 真 23試合出場 0得点
大卒ルーキーながらバックラインの柱に成長。開幕当初はCBの序列で最下位だったものの、しっかりと準備を続け少ないチャンスをモノにした。上背があるわけじゃないし足下に優れるタイプじゃないけど、対人守備がとにかくクレバーかつタフで飛び込むタイミングの判断がいい。フィードの技術さえついてくればさらに上のレベルを目指せる。経験不足な部分を覗かせる場面もあったが、コンタクトプレーもエアバトルも十分な強さを見せていたし来年もレギュラー筆頭候補になるはず。

22番 寺前 光太 5試合出場 0得点
2年目迎えCBのバックアッパーに定着したが出場機会はなかなか掴めず。24歳ながら現役引退を発表した。とにかくコンタクトプレーには強かったし裏へのフィードを積極的に狙っていく姿勢は素晴らしかったのだが、機動力に乏しく要所での詰めの甘さが目立った。個人的には正統派CBで好きだったんだが・・・まだ若いしセカンドキャリアも幸あらんことを。

31番 東 隼也 4試合出場 0得点
去年と同じ場所を骨折し出場機会が大幅に減ってしまった。クラブと選手、双方合意のもとで今シーズン限りで退団。ひたすら右SBとして起用されたが、やはりキックの技術とスピード、フィジカルは素晴らしいポテンシャルの塊だったが、相変わらず局面の判断の甘さが目に付いた。33節の熊本戦での退場なんかはその例なんじゃなかろうか。ピッチ外では賑やかし要員として大活躍。面白い人でした。退団したけど海外でもいくのかな・・・


MF
6番 輪笠 祐士 31試合出場 2得点 2アシスト
右SBのレギュラーを確保し、異次元のプレーでチームを引っ張った。判断の早さ、スペースの把握と活用、プレービジョンとそれを実行する技術の精度がこのカテゴリでは別格。偽SBの役割を完璧にこなし、ボール奪取からビルドアップにチャンスメイクまで常に関与し続け、一時は輪笠抜きではボール保持もままならないほど絶対的な存在となった。縦横無尽の運動量とプレーの引き出しの多さでまさしく心臓といえるハイパフォーマンスを年間を通して発揮。個人的には颯とならんでMVP級の活躍だったと思う。大外とハーフレーンの使い分け、強烈なミドル、自分でパスコースを作り出せる技術、全てが別格だった。

10番 橋本 拓門 32試合出場 0得点 1アシスト
アンカーやボランチでレギュラーとして起用されたが物足りなさの残るシーズンだった。ゲームメイクの中心を担ったが消極的なパスが多く、ボールキープや前に進めるということができなかった。時々針の穴を通すようなミドルパスや美しいサイドチェンジを見せたが、その回数が少なすぎた。なぜかプレースキッカーの座も樋口に奪われてたけど普通にプレースキックは相変わらず上手い。全体的に技術はあるだけにもったいないシーズンだったと思う。あと、とにかく鈍足なので守備時に出足で負けたり瞬間的なポジション修正が効かなかったりしたのも痛かった。運動量も技術もある選手だし、その能力は間違いなくJ3屈指の司令塔なので来年もっといいプレーを見せてほしい。福島のバンディエラであり、J3屈指の司令塔ならきっとできるはずだ。

11番 川中 健太 8試合出場 0得点
逆輸入アタッカーは出場機会をつかめないまま1年で退団となった。なぜか投入されるタイミングが「戦線が瓦解して抵抗もままならない」みたいな状況ばかりで持ち味を発揮しきれなかったのもあるが。技術は確かなものがあるがパワー不足、推進力不足が目立った。たまに4人くらいスルスルかわすドリブルとかもしてたけど決定的な仕事は出来ず。たぶん使い方が正しくなかったんだろう。テクニックは十分なものがあるしボールに食らいつくガッツもあるので戦術がマッチするクラブを見つけてほしい。

14番 星 広太 33試合出場 4得点 5アシスト
左SBでレギュラーを確保。普通に左SBとして考えれば4得点5アシストは十分な成績だが、絡んだチャンスの数とアタッキングの自由度でいえばもっとできてほしかったというのが正直なところ。特に守備力度外視の起用だったので福島の左サイドが狙い撃ちにされていたことも踏まえると決定力不足だったと言わざるを得ない。ファンタジスタとして圧倒的な技巧と打開力を誇り、ビルドアップへの関与と前を向いて運ぶ能力は屈指のものをもち、ゴール前へタイミングよく侵入しフィニッシュに持ち込む能力は流石と言える。得点もごっつぁんゴールか誰も真似できないゴラッソの2択なのは御愛嬌。それだけにもっとイージー決められるところで決められればステップアップも見えてくる逸材なのだが・・・もう中堅なのでもう一皮剥けたい。

17番 諸岡 裕人 8試合出場 0得点 1アシスト
ポスト鴨志田の大卒ルーキーには受難の年だった。開幕からインサイドハーフとしてコンスタントに出場機会を得たが、前十字靱帯の断裂でシーズン絶望となってしまった。いて欲しいところにいてくれる、走ってほしいところに走ってくれる、スペースを作る動きや出足のいい守備、戦術理解力の高さはクラブレジェンドの鴨志田の後継者にふさわしかった。フリーでボールをもらってもチャンスメイクできる技術とかセンスがあるわけじゃないし展開力もないけど、賢い選手なので貢献度は非常に高かった。来年は健康体でしっかり成長して活躍してほしい。たぶん来年は鴨ちゃんが如くトップ下とかSBとかやらされてる。

23番 田村 亮介 34試合出場 7得点 5アシスト
キャリア最高のシーズンを過ごしたといえるのではないだろうか。得点とアシストの数は共にキャリアハイの結果。左サイドを主戦場としつつ、鋭い仕掛けや高精度のシュートとラストパスでフィニッシュからチャンスメイクまで違いを見せ続けた。ロングスプリントでの敵陣突入や局面での突破など多彩なプレーで相手の守備網を切り裂いた。普段は陽気な関西人だがピッチ内では闘志を前面に押し出すプレーも好印象。狭いスペースでのプレーや裏への精力的なランニングも脅威を与えていたため、点で合わせる技術やドリブル突破の成功率を上げていけば二桁ゴールや二桁アシストを狙える。引き抜きが無ければ間違いなく来年の攻撃の中核になる選手。

29番 吉永 大志 5試合出場 0得点
技巧派ボランチは確かな技術と闘志を見せたが出場機会はなかなかつかめなかった。距離を問わない高精度のパスと展開力を併せ持ち、自信もドリブルでパスコースを生み出せる、プレースキックも質が高く、福島のやりたいサッカーには合致した能力があったのだがフィジカル強度的に後れをとる場面が目立ったせいか全然使われなかった。意外と「自分がこの状況をなんとかするんだ」というメッセージのこもったプレーが多くて個人的には好印象。まずは守備力を高めて来年は主力に定着したい。主軸を担える能力はあるはずだ。


FW
9番 武 颯 32試合出場 15得点 4アシスト
エースとしてついに覚醒。序盤は全く得点を挙げられなかったが、シーズンも折り返しが近づいた夏にシーズン2点目を挙げるとそこから一気に爆発。ハイペースで得点を量産し最終的に福島の東北1部時代を含んでもクラブレコードとなる15ゴールを叩き出した。レンジを問わない右足の強烈かつ多彩なショットと抜群のストライカーセンスによるラインブレイクを武器に面白いようにネットを揺らした。特に後ろから出てきたボールに合わせる技術はずば抜けている。実はクロスに頭で合わせるのはそんなに上手くないんだけどフィニッシャーとして十分すぎるほど機能した。前線からの守備とプレスバック、フィジカルを活かしたポストプレーでゴール前以外での貢献度も非常に高かった。正直福島くらいのクラブで二桁とれる選手はどこかに引き抜かれるだろう。さらに高みを目指してがんばってくれ。

18番 小牟田 洋佑 31試合出場 4得点 5アシスト
一応キャリアハイの得点を挙げ、年間通して出場機会も確保できた。ポストプレイヤーとして調子が良いときは手が着けられず、相手2枚をポストで引きつけてスルーパスを出したりサイドに展開したり重心の低いドリブルでエリアに侵入したりと相手を蹂躙しまくったが、調子の波が激しく全くボールが足に付かない試合もしばしば。それでもポストワーカーとパサーとしての能力の高さは素晴らしかったし、小牟田に当てて展開っていうのはそれなりに効果を発揮した。高さを活かしてターゲットマンにはなるけど当の本人はヘディングシュートがそんなにうまくなかったりするのでちょっと微妙ではあった。アシストマシーンとしては十分過ぎる活躍だったが、得点数はまだまだ物足りない。以前と比べればシュートを積極的に打つし裏抜けも出来るようになってきたから颯が抜けるであろう来年はエースになってほしい。

20番 イスマイラ 19試合出場 4得点
アフリカン特有のリーチの長さと身体能力はJ3では別格だったが、技術レベルや戦術理解力、局面の判断には課題が残った。通訳不在の影響もあってか連携がなかなか浸透せず、前線からの守備や規律の面でチームのブレーキになったことも多々あった。それでも打点の高いヘッドと抜群のスピードでの突破は脅威になったし、個の力でゴールをもぎ取れる数少ない選手だった。まさに局地専用決戦兵器、ナイジェリア産核弾頭である。4ゴールはほぼ個の力でもぎ取ったものだし、ポストは別に上手くないけど頭でのフリックはかなり上手いし、球離れが結構いいのでうまくフィットすればJ3屈指のゴールハンターになれるはず。

27番 池田 昌生 33試合出場 2得点 2アシスト
高卒1年目よりプレーの幅を大きく広げたが、仕掛けやエリアへの侵入が少なくなってしまった。総合力の上積みは出来たが恐さが無くなった、そんなシーズンだった。ドリブル突破よりも大外とハーフレーンでポジションを輪笠と入れ替わりつつビルドアップへの関与を高め、低い位置からのボールの配給でチームに貢献した。カットインや縦突破も使い分けていたがシュート精度はいまひとつ。シュート精度の向上と出来ることが増えた中でどのプレーで相手に脅威を与えるかのプレー選択が来年への課題となる。J3とはいえ高卒ルーキーから2年で公式戦60試合以上を経験できてる選手は希有だと思うのでもっと成長して市場価値を上げてほしい。

39番 雪江 悠人 29試合出場 2得点 2アシスト
大卒ルーキーの中で最多の出場数。2トップの一角やSHで出場機会を掴んだ。技術や判断力は怪しい時も多いけど時折見せる鋭いドリブル突破や身体能力の高さで攻撃陣を牽引。とにかくスピードとフィジカルが抜群で、イーブンボールを確実に触ってマイボールにしてチームを何度も助けた。中盤戦までは割とやりたいプレーをやってるだけだったが、終盤は身体を張った献身的なプレーでチームを支え続けた。チャンスメイクは物足りないし足のシュート精度は結構厳しいのだがヘディンガーとしては颯以上の質を発揮。サイズの割りには競り合いに強いし滞空時間も長い。まずはシュート精度の向上が最優先だがこのまま「年間4点くらいしかとらないけどチームを助けるプレーが出来るレギュラーFW」みたいな位置に落ち着きそうな気もする。

40番 樋口 寛規 34試合出場 5得点 5アシスト
農業部長はめっきりFWで使われず2ボランチの一角へコンバート。フィジカルを活かしたボールキープやブルドーザーディフェンス(ファールまがい)で中盤を引き締めた。高い位置に動いた際のチャンスメイクは悪くなかったし果敢にミドルを狙ったり3列目から飛び出したりと持ち味は見せていたが、正直ボランチとしての展開力や守備のポジショニングは物足りないものがあった。時々ポジションを無視したような前線への突撃を敢行してたけどあれが戦術に組み込まれてたのか本人が点を取りたくてやったのかは謎。コンパクトな振りから放つ強烈なシュートは魅力だしエリアにフリーで侵入する技術もいいもの持ってるのでやっぱりFWで使ってあげてほしい。クラブの農業部門では先頭に立ってフル稼働してたのでこれは素直に賞賛に値する。来年もこの調子でお願いしたい。


以上2019年の選手評でした。続々と新加入選手が発表されていますし、これから退団する選手もぼちぼち発表されるでしょう。今年素晴らしかった選手は来年さらなる活躍を。活躍できなかった選手は来年の挽回を期待します。今年も楽しいシーズンでしたよ。来年はもっと選手が躍動する場面がみたいです。




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