神田松之丞改メ 六代目神田伯山襲名 真打披露公演レポ(神奈川県民ホール)


2020年の1度目の緊急事態宣言下、ほんとうに暇だった。

出社は制限されて、街から人が消えた。その反面、家でやることには限界がきていてYouTubeのプレミアム会員になってみたりしたけれど、ユーチューバーだって自粛中。お家ご飯動画、自粛動画…頭がおかしくなりそうだった。

そんな時に彼氏から「おもしろいよ」と紹介された一本の動画。
曰く、伯山という名前に変わるから披露会みたいなことを色んな場所でやっていて、その披露目の中に「口上」というものがあり、偉い人が正座してずらーと並んで主役を誉めているのに、爆笑問題が場をめちゃくちゃにして、とにかく面白いとのこと。

暇だった私はすぐにその動画を見た。
見たことない着物のおじさんと、ぺこぺこしている若い子が狭い部屋でごちゃごちゃ動き回ってる。爆笑問題以外はよくわからなかった。

彼氏に紹介された動画は#5らしく、#00~存在しているみたいだ。
とりあえず最初から見てみるとにした。

これは、彼氏に紹介された暇なYouTubeプレミアム会員の会社員が、名前も知らない着物のおっさんにはまり、それが師匠・先生方だと認識して、神田伯山にハマるまでのお話。

今回は、伯山先生にはまりにはまって、なんとしても講演に行きたかった私の神田松之丞改メ 六代目神田伯山襲名 真打披露公演レポ(神奈川県民ホール)参加レポです。長くなるので暇なとき読んでください。


※※※


2021年某日
チケットぴあから伯山先生の講演のお知らせ。場所は神奈川県民ホール。神奈川県民の私は迷わず購入。抽選のためその日は買えず。

2021年某日
当選確認日。神奈川県民だしこれはご縁がありそう~当たるかも~(ハート)ほくほくしながらメールを開く。ご用意されず絶望する。ぴあが嫌いになる。

2021年7月〇日
仕事中にスマホをいじっているとリセールメール。3時間前のメールだけど取れるだろうとリンクを押す。既に買われていた。ぴあがもっと嫌いになる。

2021年7月23日
嫌いになったぴあからリセールメール。2分前の受信。リンクを開くと購入できそうだけど、席が遠かった。S席なのに後ろの方。リセールメールが以外と来ることが分かったのでスルーするか迷うが購入。やっとチケットが御用された。ぴあが少し好きになった。

2021年8月14日
こんな雨見たことないってくらいの大雨がずーーーーーっと降っている。田舎のマンション住みの私、少し生命の危機を感じる。屋根突き破るんじゃないかと思うような雨音をききながら「明日は晴れますように」と祈って寝る

2021年8月15日 AM5時
けたたましいアラーム音で起きる。スマホを見ると神奈川県から災害レベル5の通知。川沿いは避難しろとのこと。神奈川県民ホールは海沿いのため、もしかして中止かもしれないとTwitterを見る。更新なし。とりあえず寝る

2021年8月15日 AM7時
またアラームが鳴る。消して寝る。

2021年8月15日 AM9時
何度も起きたせいで寝坊した。とりあえず眉毛書いて急いで家を出る。家に傘がないことに気づく。近くにあったゴミ袋を頭にかぶって駅に向かう。通りすがりの人に何度も見られたが気にしない。

2021年8月15日 AM11時
Twitterで物販があることを知る。絶対に買うために昼ご飯を抜いて行くことを覚悟する。

2021年8月15日 AM12時
県民ホールに着く。チケットを自分でもぎって入場。目の前に物販。並びながら気持ちを高めるために問わず語りの神田伯山をラジオクラウドで開く。最近のラジオクラウドは広告が出てくるが、毎回爆音でCMに入るのはやめてほしい。本編に入ると、熊谷講演の話。え、滑った?まさか今日も…
思いながら並ぶこと15分、無事購入。席に向かう。

2021年8月15日AM12:30
緊張しすぎてラジオがまったく頭に入ってこない。まったく入ってこないから、何度も戻したり早送りしたり。ビックカメラさんの話は3回は聴いた。気持ちを高めすぎて逆に吐きそうになってきた。

2021年8月15日AM12:50
お囃子が鳴る。ここまでくると伯山先生は存在していないんじゃないか。これは夢なんかないかという気持ちになってきた。あんまり現実感はない。周りを見渡すと老若男女、バラバラの年代。親子3代で来てたり、恋人同士で来ていたり。ソロだったり。コロナになったから高齢者と会ってなかったので、独特の空気が懐かしい気持ちになった。後ろの席の話の噛みわない抜けた会話を聞きながら、開演を待つ。



始めは、神田松麻呂。ラジオリスナーな私は「あ、おじゃる…」と思わず思ってしまった。Twitterを50秒で消した松麻呂。伯山ティービーで初日で消えた前座の代わりに神タイムキーパーとして前座修行をきびきびこなす松麻呂。(この回めちゃくちゃ好き)そんな松麻呂が釈台向かっていた。あっという間に終わってしまって残念。もっと聞きたいならささまっちゃの会行かなければなぁ。

続いて、神田阿久鯉先生。広いホールにぽーーんと響く声。S席なのにご用意された席が遠い私でも、まるで近くにいるような臨場感。YouTubeもすごかったけど、全然違った。私たち(お客)の反応を見てコロコロ変わる表情が可愛かったり、色っぽかったり。不思議な感覚だった。

続いて、宝井琴調先生。キュレルの三遊亭 遊雀師匠の代役だったのでふーんって気持ちだったのに、話が始まると、阿久鯉先生また違う話し方。おもしろい。神田派以外の話を聞くの初めてだから新鮮。もっと聞きたいと思ったら終わるのが講談だから少し恨めしくなった。気持ちはお岩さん。

幕が下りる。今回の興行は「真打真打披露公演」なので穴が開くほど見た口上がここで入るはずだとドキドキしながら待つ。

ドーン、ドーンと太鼓が鳴る。
幕が上がって、頭を下げる姿を見て不思議な気持ちに襲われた。
YouTubeで見た映像が、目の前に広がっている。少し遠いけど、私と目の前の生の光景が同じ時間軸に存在している。ほんとうに夢みたいだった。

地鳴りみたいな拍手と、顔を上げる伯山先生。ぴあがご用意したチケットがS席なのに遠いもんだから、ぼやっとしか見えなくて、表情まで見ることができなかった。

それでも一目で先生だと分かったのは、何回も見ていたから。
この瞬間だけどでも来たかいがあったと思う

口上をふわふわした気持ちで聴いて、続いては桂文枝師匠。
新婚さんいらっしゃいのイメージしかなかったけれど、マスク越しに笑ってしまった。本当は声出しちゃいけないんだろうけど。これは許してほしい。声出して笑うことに罪悪感を覚えるの、この時代だけになってほしいな。



最後に、神田伯山先生。
客席の明かりが少し暗くなる。際立つ舞台に釈台だけが置かれている。
暗がりから見る舞台は少しまぶしくて、目が慣れてきたくらいに、先生が入ってきた。

会場居た全ての人間が、伯山先生の一挙一動を見つめる。張り詰めた空気。

私は「真打登場」という言葉を、語源「真打」を知る前からすごい人が最後に来る、といった場面でよくわからず使っていた。いま、この瞬間、世界中かき集めても「真打登場」にふさわしい人は居ないんじゃないだろうか。

張り扇を叩く。パーンと乾いた音だけが、会場に響いた。
滑らかに紡がれる話がどんどん耳に入ってくるけど、正直、最初は緊張と期待が大きすぎて全然入ってこない。そんな私たちのことが分かっているように、徐々にエンジンをかけるように場を盛り上げる。

シーンとした客先が、ほっこりしてきたところで講談に入った。
演目は「東玉と伯圓」。200年くらい前の話で、初代の伯山が出てくる話。

話の中盤に、寄席で講談をする場面が出てくる。
六代目の伯山が、江戸時代の先生のお話をしているのに、まるでここに居るみたいな感覚。江戸と令和の境界線が曖昧になる。張り扇を叩く音と、声がすごく心地いい。

伯山先生は、エンジンをかけるときに自分の入門から現在に至るまでの歴史を丁寧に話してくれた。

古舘克彦が、神田松之丞になって、神田伯山を襲名する。
歴史が紡がれ、後世へ続いていく。それは講談師だけじゃなくって、聴きに来る客も同じ。いつの時代も誰かが聞いて、それが紡がれていく。

この講演は本来なら2020年中に終わっていた。
でも、コロナで延期になり2021年8月開催となって私は参加できた。

本来なら見るはずのない芸が、目の前にあることが奇跡みたいで、泣いてしまった。ぐしゅぐしゅはできないので、ぽろぽろと。全然泣ける場面じゃないのできっと泣いていたのは私だけかもしれないけど、延期になって参加できたのは私だけじゃないはず。

ありがとうぴあ。ありがとうリセール制度。嫌いって言ってごめん。
少し。ほんの少し、コロナも悪くないなと思った。




*****


神田松之丞改メ 六代目神田伯山襲名 真打披露公演はこれから全国を回るみたいで、東京公演のチケットもこれからみたいです。

ちなみに、ぴあは粘ればリセールもあるのでオススメ。
ぴあ大好きちゅちゅ。

■チケットぴあ(きらいになったけど大好きなぴあ。)
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=C5140061

■夢空間公式HP(ここからチケット買えます)
http://yume-kukan.net/performance






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