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カニは毒舌か否か?

ゆかいな毒舌家にあこがれる。

胃袋から喉あたりに
もやもやと漂う想いを

おもしろくスパッと
陽の元にだせる技をみると
惚れ惚れする。
かっこいい。

あんな風に
本音をおもしろく
潔く口にだせるようになりたい。

そう思って
若い頃は
毒舌の練習を
したこともある。

でも、
わたしが言うと
毒舌にならず

友だちに
「なんか、おんなじことでも
さとちゃんに言われたら傷つくー」
と言われてしまった。

ごめんなさい。

なんかだめなのだ。
言葉が苦手なのだ。

まず、
思っていることが
すぐに言葉にならない。

頭の中に浮かんでいる
ぐるぐるしたいろんなもの。
そのどの部分を切りとって
どの部分を言葉にするのか
どんな言葉にするのか。

選んで口にだすまでの
その処理速度が非常に遅い。
その上言葉選びのセンスがない。

要は
華麗な毒舌使いになるには
ほど遠いということだ。

昼間にもやもやと感じていたことが
寝る前になってやっと言葉になって
ああーあの時こう言えばよかった、、、
また誤解された、、、、と
落ち込むことの多い子ども時代だった。

言葉にならない想いや気持ちを
言葉にするという作業が
何か大切なものを
切り落とすような感じがして
とても悲しく切なくなったりもする。

言葉なんて無ければいいのに
音とジェスチャーで
コミュニケーションするのが常識の世界になれば
想いを切り取らなくても済むのに!

「ポポンブールブール」
「ルルーシューむむんパっ!!」
「ピランタンタンぴょーーー!」
「ミミロンロンみぴゅーたちょ?」
「ボーイボーイム」

そんな感じで
身体と音で
想いを伝え合う世界。

そんな世界を何度
思い描いたことか。

その頃は
酔っ払うと
意味不明な音を発して
人に話しかけてみるのが
わたしの中で流行った。

相手にされないことも多かったが
意味不明な音で
会話してくれる人もたまにいて
そんな時は
とてつもないしあわせを感じて
飲みすぎた。

そんなわたしも
40を超えてからは
酔っても意味不明言葉を発しなくなり
なんとか言葉とつき合いながら
ここまで生きてきた。

毒舌家への憧れは
捨て切れないが
わたしはわたしで
このままやっていくしかないと
腹も据わったあたりで
カニと出会い
ふと思う。

カニは毒舌か否か?

考えてみると
多くのカニは毒舌じゃないようにみえる。
素直で内気なカニが多そうだ。
つぶらな瞳で横歩き。

でも時々めちゃくちゃゆかいな
毒舌のやさしいカニがいるのだ。

そう
毒舌家は
基本的に
やさしい。

そろりそろりと
横歩きしながら
潔くぷくぷくと
毒を吐くカニ。

大きなはさみを
チョキチョキと
リズミカルにゆらしながら
毒を吐くカニ。
気持ちがいい。

ヤツの甲羅は分厚く
でも光が透けて
とっても美しい。

ああ
ロックだ。
カニ界のロックスターだ。

うーん
やっぱり
かっこいい。

そんなカニに
わたしは
なりたい。

あおきさとみ

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