「着ける」7話「光と影の間で」

この度、私の小説を手に取っていただき、誠にありがとうございます。作品には覚醒剤が登場しますが、ここで明確にお伝えしたいことがあります。この小説は決して覚醒剤を推進するものではありません。

物語の中で描かれる覚醒剤は、主人公や他のキャラクターたちが直面する様々な課題や葛藤の一部として存在しています。私の意図は、薬物の危険性やそれがもたらす影響をリアルに描写することにあります。薬物依存やその結果としての人間関係の崩壊、社会的な影響について考えるきっかけを提供できればと願っています。

読者の皆様がこの作品を通じて、薬物の問題について深く考え、理解を深めていただけることを期待しています。どうぞ、物語をお楽しみいただきながら、同時にそのメッセージにも目を向けていただければ幸いです。

今後ともよろしくお願いいたします。

第七話:「光と影の間で」

西成のうどん屋で働くトンコと天野は、社長の秘密を知ってしまったことで、再び波乱の予感に包まれていた。うどん屋は彼らにとって新たな人生のスタート地点だったはずなのに、今やその場所が新たな試練の場へと変貌しようとしていた。


ある日の早朝、店内でいつものようにうどんを準備していると、社長が血相を変えて飛び込んできた。


「お前ら、何か見たか?」社長の目は血走り、明らかに焦っている。


トンコは咄嗟に首を振り、「何も見てません」と嘘をついた。天野もそれに倣い、無言でうなずく。


社長は疑わしげに彼らを見つめた後、「もし何か漏らしたら、ただじゃおかねえからな」と脅しをかけた後、店を出て行った。


その日の夕方、ダビッドソンが店に立ち寄った。彼は二人が何かを隠していることにすぐに気づいた。


「どうした?何かあったのか?」ダビッドソンは問いかける。


トンコが小声で事情を説明すると、ダビッドソンの顔が険しくなった。「めんどくせえ事になっちまったな...だが、放っておくわけにもいかねえ。」


ダビッドソンは考えを巡らせる。そして、二人を助けるための計画を練り始めた。彼は地元の更生支援団体に連絡を取り、社長の不法行為を匿名で通報する一方で、トンコと天野に新しい職場を探す手伝いをすることを決めた。


「俺も昔は同じ穴の狢だった。お前たちが同じ過ちを繰り返すのは見たくないんだ。」


数日後、警察が動き出し、うどん屋の社長は取り調べを受けることになった。トンコと天野はその間隙を縫って、ダビッドソンが紹介した別の仕事、町工場のライン作業員として新たな生活を始めることになった。


新しい職場で、二人は再び一からスタートを切った。工場の仕事は単調だったが、安定していて、何より違法な影がないことが彼らにとっては新鮮だった。


「ここなら、前に進めるかもしれないな」と天野が呟くと、トンコも小さく頷いた。


しかし、過去の影はそう簡単には消えない。ふとした瞬間に、シャブの誘惑や社長の脅しが彼らの心をちらつかせる。だが、今度はダビッドソンがいて、そして互いに支え合う仲間がいる。


「光を求めて」走り続ける彼らの物語は、まだ終わらない。影と向き合いながらも、二人は一歩ずつ、確実に前に進んでいく。

よろしければサポートおねがいします!今後の面白い何かに役立てます!