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僕の彼女

 僕の彼女はちょっと変わっている。彼女は7代前までの自分の前世を覚えているらしく、僕に会った時「やっと会えたね」と言った。
 「え?僕たち知り合いだったの?何代前の前世で?」
と僕が尋ねると、
 「キッカリ7代前よ。あなたは何にも覚えてないようね」
と言って、目が悪い人が遠くの文字を見る時みたいに眉間に皺を寄せて目を細めた。
 彼女の7代前に何があったのか、僕らがどんな関係だったのかは、何度聞いても教えてもらえなかった。ただ「私たちが今世で出会ったのはきっと運命ね」とだけ。
 悪くない。ミステリアスでちょっと不思議な彼女。おまけに、僕には不釣り合いなほど美人。それに……まぁ、彼女の話は冗談なのか本気なのか分からないところがあるので、時々遠い目をしながら思い出し笑いをしたり、不機嫌になったり、黙りこくったりする彼女の「前世ショー」に僕も乗っかって楽しんでいた。
 昨日までは。

 生温かい液体が僕の両手の指の隙間から流れ落ちる。
 「な……んで……?」
 痛みに顔を歪め、腹を押さえながら彼女に問いただした。
 「後悔していたからよ。あの時の選択を」
 薄れゆく意識の中で、最後の力を振り絞って尋ねた。
 「君は……いったい、何者なんだ……?」

 「知りたい?私は……」

 僕は立っていることができなくなって、とうとうその場に倒れてしまった。瞬間、ぬるりと光る彼女の足もとが目に入った。

 その足は間違いなく魚のそれだった。

(了)


*****

25分で書きました。しかもスマホで。間に……合わなかったか。ちっ。


#第2回noteSSF
#アンデルセンさんごめんなさい
#前前前前前前前世
#入れ替わらない

ありがとうございますサポートくださると喜んで次の作品を頑張ります!多分。