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僕の出会う女はみんなお金目当て〜プロローグ〜

   世の中にはパパ活なんてものがあるけどあれは意味がわからないね。デートは男が奢るってなってるのがそもそも気に入らないんだ。そんな僕にわかるはずがない。
   ご飯に誘ってきた後輩だって置いて帰ってきてやった。
   後輩は学習塾のバイトで知り合った2つ下の女だった。普段は仲良く話していたものだから、ご飯に誘われてもちろん断る理由もなかった。だけど誘いにのった途端「やったー今日は先輩の奢りだー」なんて言うものだから、わざと大きくため息をついて、凍えるほど冷たい突き刺すような視線を向けてからそのまま人混みの中に置いてきてやった。へへっざまみろ。僕はこのまま電車で帰らせてもらう。

   スタスタと駅に向かって歩いていると、駅前に募金箱を持った女の人が2人立っていた。同じお金関係でも募金はしないと申し訳なくなってしまうから何となく苦手なんだ。だから目を伏せて、無視してさっさと行ってしまおうかと思った。しかし、女の人の前を通った時、に昔の彼女と同じ匂いがして、僕は思わず女の人の方を向いてしまった。
   まずい。目が合ってしまった。
   募金箱を持った女の人は僕に向かって優しく微笑み、トトトッと駆け足で近づいてくる。そして
「お兄さん、よければ募金お願いできませんか?100円だけでもいいので。」といいながらジャラっと音を鳴らして募金箱を僕の前に出してきた。
   よく見たらこの人かなり可愛い。栗色のロングヘアにすうっと上を向いたまつ毛、ぱっちり二重から覗く透き通った瞳はまるでガラス細工のようで、透明感のある肌やふっくらして笑顔をよくひきたてる象徴的な唇、その中から除く真っ白で少し小さめの歯も、どれをとっても可愛らしい。気がつけば僕は、彼女から目が離せなくなっていた。
「あれ?お兄さんどうかしました?」
  募金箱を持った女の人に言われ、はっとわれにかえった。ああ、えっと…と、ついしどろもどろになってしまう。そうだ、募金だ。僕が慌てて財布をひらくと女の人は
「あ、500円玉発見。お兄さん、助けると思ってその500円入れてくれないかな?お願い。」と言って、募金箱から身を乗り出し、僕の目をじっと見つめてきた。
   それに気おされたという訳ではなかったけど、僕は妙に納得してしまい、財布の中の500円玉を募金箱に入れた。多分今の僕はこの女の人の言いなりロボットになっていたと思う。
「ありがとうございます。」女の人は嬉しそうにそう言うと、えへへー、と口を横いっぱいに広げて笑い、僕はまたその可愛らしい笑顔にときめいていた。
   いい思いをかみしめて、それじゃあ、と立ち去ろうとすると女の人に呼び止められた。そして
「これ、私のX。フォローして♡」と言われて1枚の紙切れを貰う。そこには確かにIDらしきものがかかれていたので、僕はそれをポッケにしまい、女の人と「またねー」といって手を振りあって別れた。
   後ろで女の人は友達のいたところに戻っていった。


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