僕と出会う女はみんなお金目当て⑥前編〜初めてのお貢ぎ〜
〝貢ぎマゾ〟という性癖を、知ってから2ヶ月が過ぎた。その中で初めて、今日僕は朝から〝貢ぎマゾ〟のことが頭から離れなくなっていた。
時々Xを覗くことはあったけど、今日程気になったことは無い。それがどうしてか…。
今日は……。
今は夕方の6時。大学もバイトもない完全なる休日を、学生らしくダラダラ寝て過ごすつもりだったけど、それが狂わされた。
朝起きて、2度寝をしようと布団から出ずにいると、なんとなく〝貢ぎマゾ〟という言葉が気になってきた。そうなるとなんとなく射精をしないと気持ちが悪い。前に買った貢ぎマゾ向けの音声作品を聞いて、満足してから僕は寝た。
それからお昼頃に起きて、ゲームをやりながらゴロゴロしているとまた気になってしまった。だんだんそればかりが頭の割合を占めてきたので、とうとう根負けしたと言うふうにXを開いてしまう。そこから2時間以上のにらめっこ。その間ずっと「#貢ぎマゾ」で検索して出てきた女の人の投稿を遡って眺めた。いつも理解できないことではあるけれど、
「あぁぁん🩷お願いしますぅ🩷お財布からお金抜き取ってくださいぃぃ🩷」
とフィクションのように喘ぐ男は、どういうつもりでこれを打ってるんだろう。
けどそんな男とお金を巻き上げていく女の人のやり取りに興奮してしまっているのも、理解できないことに事実だった。
夕方5時になって、サッパリしたかったので、自転車を10分漕ぎ、近くの天然温泉に向かった。(僕の家の近くに温泉があることは、大学生になってから知った。)
暑い風呂に入ってさっぱりし、館内着に着替えて休室質で横になり、漫画を読んでのんびりとすごした。
週刊誌で現在も連載中の超アツいバトル漫画、主人公の新必殺技も決まって、さあこれから決着だというところ。なのに、なのにだ。なのにまた、あの言葉が気になってしまいう。
〝貢ぎマゾ〟僕の胸の中でこの言葉が段々と膨らみ始め、ついに漫画を読む手が止まった。
今度はあのとき募金をしていた〝あいり@お貢ぎ待ってる〟の投稿を遡り眺めた。あの日僕にこの性癖の存在を教えた女の人。
いつもいつも男の人から貢がせている様子をスクショしてアップしている。貢がされている男たちは平気で1万以上の金を落としているのが恐ろしい。
ドキドキしながら自分とは別の世界の様子を眺めていると「これ…もしDM送ったらどうなるんだろう。」という考えが頭に浮かんできた。
今はまだ大丈夫。見てるだけ。フォローだってしてない。だから気づかれもしないし、お金だって取られることは無い。
もし、気づかれたら…。
大丈夫、開くだけ。DMは送らない。そう思って、あいりさんのDMの画面だけを開いた。
ここにメッセージを送っちゃったらもうばれる……。
見つかる……。
見つかっちゃったらやばい………。
まだ何も書き込まれていないまっさらな画面を前に、僕の心臓は激しく鼓動を打ち鳴らし、それに伴ってだんだんと呼吸が荒く、苦しく、なにか胸のところに詰まっているかのような感覚に襲われていく。
このままではいけない。そう思って僕はスマホの画面を消した。
しばらく横になったまま呼吸を整え、そして風呂にもう1度はいって気持ちを切り替えることにした。
脱衣所で館内着を脱ぎ、僕の股間が今まさにゆっくりと萎んでいっているところが目に入ると、また思い出してしまった。
僕もあんな風に………。
そして、裸になったあと、もう一度Xであいりさんの投稿を眺めて、それから僕は悶々とした気持ちを抱えたまま風呂に入った。
風呂から上がっても、僕の悶々とした気持ちはなかなか収まらない。
体を洗っていても湯船に浸かっていても、体が落ち着いたと一息つくと、そいつはまるですぐ後ろで順番待ちをしていたかの如く「お貢ぎ」と囁いて来て、悶々としたまま気の休まる瞬間がなく、ついにムラムラしたまま風呂を上がってしまったので、
「休憩室に行ったらX見よう」
と、決意してしまうと余計に胸が苦しく、過呼吸気味になってしまうような有様であった。
だから今また休憩室で横になってXを眺めているけれど、何分かおきにあいりさんのことが気になってしまい、彼女のプロフィールページにとんでしまっている。そのうえさっきのように、DMを開いては閉じを繰り返しては、
僕のことに気づかれたらどうなるんだろう……
なんてことを繰り返し考えている。
もし、ここで話しかけたら…。
はぁ
他の男みたいに簡単に奪われちゃったら…。
はぁ…はぁ…
僕が〝貢ぎマゾ〟だって認めちゃったら…。
はぁはぁ…
もし、促されるまま、お金を出しちゃったら…。
苦しい…胸がやける。
見つかっちゃいたい……。
ちょっとだけなら大丈夫かな……。
見つかったらやばい………。
ちょっと話しかけるだけなら………。
おいで♡ 怖くないよ〜♡♡