「超作」と米倉誠一郎先生と苅宿俊文先生の背中

私は、50年の歴史を持つヨガスクール「IARP」で講師を務めさせていただいております。
このスクールの創始者、本山博先生が大切にしている概念の1つに、超作があります。今回はこの「超作」をご紹介。

本山博先生は、人が精神的に成長するには瞑想だけでは不十分で、瞑想と超作の両方が必要だと説きます。
(ほかの記事で記載しているケン・ウィルバーの主張とも重なっていて非常に興味深い)
なお、インドの古典「バガバッド・ギータ」でも「超作」という概念が出てきますが、本山博先生のいう超作は、「バガバッド・ギータ」の超作とは異なります。
本山博氏の超作は
私たちは、日ごろ何か行為をするとき、行為の結果(見返り)を当然求めてしまうが
・結果や見返りのことは忘れ、行為自体を一生懸命すること
・人の役に立つことを念じながら行為をすること
の2点を指します。
ここで留意したいのは、「結果を忘れ、求めない=反省しない、改良しない」ということではなく、結果は求めつつも、その結果にこだわらず、淡々とできることをするということ。(うまくいったら昇進できるかも、とか、失敗したらどうしよう、とかは考えないということ)

・・・これを頭で理解することはできるが、体現するとなると、なかなか難しい。

このお話を聞いたときに、私がこれまでお世話になった先生方に、まさに「超作」を体現されてた方がいらっしゃったことに気がつきました。

一人は、米倉誠一郎先生。
「日本のビジネスマンは甘えている。学校に通うことができる環境、時間、そこで身に着けた能力を十分発揮し、社会課題解決に向かうべきだ。」という思いで世界元気塾(旧日本元気塾)を運営されています。

もう一人は、苅宿俊文先生。
「人と人の、コミュニティの結び目となる人が必要だ」と、ワークショップデザインを青山学院大学で教えておられます。

両氏を、私が「超作」を体現されている、と感じる理由は以下の通りです。
両氏とも、先生が話するときのその雰囲気からは、まったく自己顕示欲や自己肯定のための意識は全く感じられない。
肩の力は抜けており、ありのままで生徒と接している。
居心地が良い「仏のような」温和な印象を感じました。
フラットで居心地のいい環境。
その中で、生徒はお互いに学びあい、刺激しあうことができている。
生徒一人一人が、「こうあるべき」北風ではなく 「こうありたい」太陽のような、内発的動機に突き動かされ、動き出す瞬間を応援し、そのために最適なコンテンツを提供されていました。

私は、授業を受けながら、「この仏のようなあたたかな雰囲気はなんだろう」、「この教室では生徒たちはなぜこれほどまでに純粋に学びあえているのだろう」と感じ、私もいずれ、このような雰囲気を纏いたいと感じておりました。
そして、IARPに通い、本山先生の書籍を拝読したり、学ぶ中で、米倉先生、苅宿先生の雰囲気の理由がわかったように思います。

お二人とも、「称賛されたい」「名を上げたい」という自分のエゴに突き動かされているのではなく、その場に集まる生徒のために考えつくしたクラスを提供されていた。
自分の自尊心、評判、収益などではなく、純粋にクラスに集まる生徒たちの成長を祈り、第一に考え、そのための授業を提供していた。
教師「個人」として、教えながら、皆がより成長するための「場」としてその教室自体を成り立たせていた。
まさに「超作」をされていたのだと、今になって思います。

その結果、「仏のような」温和な印象と、とても居心地がよく、生徒同士も仲良く、お互いに学び合う環境が産み出されていたのでしょう。

「日本元気塾(現 世界元気塾)」や「青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム」では、そのお姿を、拝見させていただきました。

私がどこまでお二人に近づけるかはわかりませんが、お二人のその姿勢、心に刻ませていただきました。

「超作」は、経営者 稲森和夫氏の「利他」ともとても近い概念に感じますし、陸上指導者 為末大氏が「ゾーン」に入ったときのことを語るお話にもとても近いものを感じます。
分野の違う複数の方が近しい概念について語るとき、その概念は真実に近いのだと思います。

本山博先生の超作については、「愛と超作」という書籍に詳しく書かれています。ご興味を持たれた方は、ぜひご一読を。

より深く知りたい方への参考文献

本山博氏の主張と、稲盛和夫氏の主張には、大変近いものを感じます。
ビジネス界隈の方には、稲盛和夫氏の書籍のほうがなじみがあるかもしれませんので、(ちょっと乱暴ですが)どちらの書籍でもよろしいかと思います。
ただ、ポイントは、読んで「すごい人だなぁ」で終わる、情報を仕入れて終わる、ではなく、それをご自身の生活にどう生かすか、この一点にあると思います。

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