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5Aからひも解くあつ森ヒットのワケ

1.おうち時間の増加

コロナ禍で外出することができなくなり、おうち時間が増えた。下記の図1を見てわかるように、おうち時間を充実させるため、料理・動画、映画鑑賞・軽い運動に次ぎゲームをする人が多いことがわかる。なぜゲームを選ぶ人が多かったのか。ゲームは、現実逃避ができ、ゲームの中の世界を十分に体験することができる。また、家族や友達と一緒に遊ぶことができて、コミュニケーションをとる手段にもなっているのである。

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図1 参考:【データ】外出自粛要請期間中における自宅での過ごし方実態調査 |

2.あつまれどうぶつの森とは

ゲームの中でも、どうぶつの森シリーズの最新作「あつまれどうぶつの森」(以下あつ森)のソフトは637万8103本と2020年一番売れた。二位のリングフィットアドベンチャーと比べると四倍もの差をつけている。なぜあつ森がこんなに売れたのか。あつ森の魅力は、他のゲームと比べると対戦要素が一切なく、とても平和な世界観であることが挙げられる。操作も老若男女問わず誰でもプレイしやすいような簡単なもので、複雑なルール・設定などはなく、ただただ無人島生活を楽しむだけである。今までのどうぶつの森シリーズの人気に加えて、やりこみ要素やほのぼのした雰囲気が巣ごもり生活にマッチしたため、爆発的にヒットしたと考えられる。

3.5Aを用いた分析

爆発的に売れたあつ森を、5Aを使い分析する。5Aとは、コトラー氏が提唱する接続性時代のカスタマージャーニーであり、「企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を一体化させる」という考えの元作られたものである。あつ森は、SNSで認知し訴求している人が多く、あつ森関連のツイート数は他のゲームよりも断然多い。つまり、あつ森はSNSとの親和性が高いという点から5Aが適していると考えられる。

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①認知(AWARE)は、従来からのカスタマージャーニーの入口。他者から聞かされたり、ブランドの広告を見たりすることで、認知される。

②訴求(APPEAL)は、顧客は認知したブランドの中から、自分にとって好ましいと思う少数のブランドだけに引きつけられた状態のこと。

③調査(ASK)は、顧客は引きつけられたブランドの中から、魅力を感じたブランドを調査する。調査段階で詳しい情報を入手したら④行動へ進んだり、購買行動を伴わない場合でも、⑤推奨へ進んだりする。

④行動(ACT)は、購買行動だけではなく、消費や使用はもちろん、アフターサービスを通じたコミュニケーションも行動に含まれている。

⑤推奨(ADVOCATE)は、顧客にブランドに対する強いロイヤルティが芽生え、熱心な推奨者は大好きなブランドを自発的に他者に推奨し伝道者になる段階のこと。

まず初めに認知の段階について考える。認知は消費者が他社から聞かされたり、ブランド広告を見たりすることで認知することを目的とする。そこで企業側はテレビCMをはじめとする広告を発信することで、なるべく多くの消費者の目に触れるようにしている。ここで興味深いのはテレビCMの内容である。初の出展映像である2019年6月のCMから2020年3月の発売まではゲームの導入部分を取り上げ、無人島でのスローライフを始める姿を映し出している。以降、季節ごとのアップデートに合わせてCMを打ち出している。また、CMが進むごとに島も開拓されており、消費者のゲームの進み具合に合わせた内容になっている。2020年7月の大型アップデートの時点ではCMの中の世界はかなり開拓が進んでいる状態だった。これにより、消費者が企業側と共にゲームを進める感覚を持たせることに繋がっている。他にも、有名人をCMに起用したり、現実世界のストーリーを組み込むことでゲームの中だけでなく、現実ともリンクさせている。

訴求の目的は消費者が認知したブランドの中から、自分にとって好ましいと思う少数のブランドだけに引き付けられた状態にすることである。そこで任天堂は、switchの購入を検討している人に選んでもらえるような宣伝を行うという行動を取った。例えば、2021年4月で20周年であることをアピールし、過去作をプレイしたことがある人に選んでもらう工夫をしている。

調査の段階では消費者が引き付けられたブランドの中から魅力を感じたブランドについて調査してもらうことが目的である。調査の段階の特徴である消費者が詳しい情報を求めることから、公式Youtubeチャンネルや公式TwitterなどSNSアカウントを開設することで、消費者の情報探索を促進させている。

行動の段階では消費者が購買行動を行うのはもちろんのこと、企業側のアフターサービスを通じたコミュニケーションも目的の中に入ってくる。そこで、企業としては購買行動のしやすさから行動を促進させている。例えば、購入できるお店としてゲーム販売店はもちろんのことオンラインやコンビニなど身近で簡単な方法で購買行動をとれる用意をしている。また、アフターサービスとして季節ごとのアップデートやサンリオコラボなど消費者に飽きさせない工夫をしている。

推奨の段階では、消費者にブランドに対する強いロイヤリティが芽生え、熱心な推奨者は大好きなブランドを自発的に他社に推奨し伝道師になることが目的である。この訴求の段階があつ森にとっては重要になってくる。企業側として熱心な消費者に伝道師になってもらうことで、さらなる顧客獲得につなげたい。そこで、消費者が他の消費者に推奨しやすいような仕組みを作っている。例えば、インフルエンサーの所属事務所と著作物に関する包括的許諾をすることで、消費者個人が著作物をSNS上に上げやすい環境を作っている。その結果下記の図2のように、2020年に最も実況を観たゲームタイトルランキングで1位となっている。

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図2 参考:ゲーム実況動画、もっとも観られたタイトルは『あつ森』 » Lmaga.jp

4.まとめ

以上のことから、あつ森が2020年にヒットした裏側には、消費者がブランドを好きになり、さらには自分自身が伝道師になりたくなるような工夫が多く施されていることが分かった。情勢をうまく見極め、消費者が今一番欲しているものを供給することに成功した企業の努力はちゃんと実を結んでいた。

参考文献

あつまれ どうぶつの森 - YouTube
ゲーム実況動画、もっとも観られたタイトルは『あつ森』 » Lmaga.jp
【データ】外出自粛要請期間中における自宅での過ごし方実態調査 |
マーケティング4.0の5Aカスタマージャーニーマップを学ぼう

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