文系理系アンソロ 雪がとけたらなにになる?「SPRING」感想

「冬の光芒」 殿塚伽織さま
情景の描写の細やかさやリアルさに、その場にいるかのような感覚になる作品でした。
主人公の僅かな気持ちの変化の書き方が方言で表現されているのがとても上手いなと思いました。


「春待つばかりのありふれた夜」綿津見さま
論文を書いていた時の、当時は辛いながらも今考えるととても幸せだった日を思い出しました。学生の日常に、文中に溶け込む様々な古典作品や名著の文章が彩りを添えていて、とても素敵な作品でした。


「情熱の行けない場所」笹波ことみさま
主人公になれなかった人の物語という切り取り方がとても新鮮でした。輝いている姉を思う妹の情景や気持ちがとてもしっくりと入ってきて、最後の気づきに救われる気がしました。


「早くな散りそ雪は消ぬとも」ツカノアラシさま
最初から世界観に圧倒され、ジェットコースターに乗っているかのような印象の作品でした。とても好きです。怪奇小説のようであり、幻想的であり、仄暗さもあり、心地よく振り回されました。


「あなたの与り知らぬ場所」楠海さま
異国の港町に銀の卵を見に来た主人公にいつしかシンクロし、最後には銀の卵を見ているような、音を聞いているかのような気持ちになりました。銀の卵、実際にあるのではと検索してしまうほどでした。


「山上くんのランドセル」弥乙澪さま
登場人物の様子の表現があまりにリアルだと思っていたら、専門分野を見てなるほどと思いました。物語全体が主人公の視点を通して温かく肯定的に描かれていたことがとても嬉しかったです。


「落日の途」宮田秩早さま
終わり方がとても好きな作品です。
専門分野については門外漢ですが、すごく読みやすく、かつ物語にも深く関わっており、面白く読ませていただきました。高校生の時に読んでいたら、この分野を勉強したくなったと思います。


「春を告ぐ」夜崎梨人さま
美味しそうなあんぱんの描写に、お腹がすきました。不知火さんの事情が明かされてからの展開も、とてもほっこりする素敵な作品でした。


「魔女の祝福」和咲結衣さま
物語がスルスルと入ってくる作品で、最後まで一気に読むことが出来ました。少女の気づきからの温かい展開と素敵な読後感に、幸せな気持ちになりました。


「糸の部屋」深山瀬怜さま
とても印象的な作品で、テーマの切り取り方が大好きだったので、専門がとても気になりました。この作品の世界を、もっと読んでいきたいという気持ちになりました。


「translatio」宵鐘点さま
不思議な世界観の物語ですが、短編の中に雰囲気と情景がありありと描かれていて、とても楽しませていただきました。この世界観の物語をまた読んでみたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?