大学院入試について(専門科目編)

さて,今回は専門科目編です.僕は言語学が専門なので,言語学の専門科目対策としてどのようなことをしたのかを書いてみたいと思います.

少し自分の話をしておくと,僕は主に理論言語学と言われるものを専門にしています.そのため,ここで記す対策も応用言語学などについてはほとんどありません.ご了承ください.

さて,理論言語学を専門にするには大きく分けると以下のことを勉強する必要があると思っています.

  1. 統語論

  2. 意味論

  3. 語用論

  4. 音声学・音韻論

  5. 形態論

  6. 認知言語学

とりあえずこの6つを勉強すれば間違い無いと思っています.もちろんもっとやるべきことはあると思いますが,この6つをなんとなく理解しておけば十分だと思います.

では,上からどんな対策をしていたのかを書いてみたいと思います.

統語論

実を言うと自己紹介の時に認知言語学を大学院では専門にしますと言う話をしましたが,学部で現在専門にしているのは統語論という枠組みです.そのため,ここはかなり対策ができました.大きく以下の4つの本を元にして勉強をしていました(文献の書き方が適当なのはご容赦ください).

  1. A. Carnie (2021) "Syntax"

  2. Hideki Kishimoto (2020)"Analyzing Japanese Syntax -A Generative Perspective-"

  3. 岸本秀樹(2009)「ベーシック生成文法」

  4. 渡辺明(2009)「生成文法」

個人的にはCarnieの"Syntax"が最もよかったなと思います.この本はかなりの長さの本なので読み上げるのは苦労すると思いますが,読んでみて最も理解しやすく,かつ例文が多いので良い本だったなと思います.
日本語で書かれたもので最もわかりやすかったのは3番目の「ベーシック生成文法」です.ページ数もCarnieに比べればかなり短く(確か200ページ程度だった気がする),読み切りやすいものでした.
日本語の統語構造について詳細に書かれているのは2番目に書いた本です.これは3番目に書いた本と同じ著者の先生が書かれているので,本の流れもかなり似ています.そのため,英語に抵抗がある人は3番目に示した本を読んだ後にこれを読んでみると理解が深まってより統語論について理解できると思います.
最後に余裕がある人は4番目に示した本も読んでみるとためになると思います.正直難解です.これを最初に読むのはお勧めしません.1~3番目にあげたものを読んだのちにこれを読んでみると良いと思います.

とりあえず1番を,余裕がある人はそれ以下も読んでおくと大学院入試で問題ないレベルには統語論を理解できると思います.個人的な感想ですが,これらを読んでから過去問を見ると何かしら手が動きます.つまり,結構解けるようになります笑.

意味論

意味論は大きく以下の2つに分類できると思っています.

  1. 認知意味論

  2. (伝統的な)意味論

まずは,認知意味論について書いてみます.認知意味論の大枠を掴むために読んだ本は以下の本です.

・松本曜(2003)「認知意味論」

僕はこれを読んだおかげで認知意味論の大枠を理解できたと思っています.本自体は硬い口調で書かれているので難しい気がしますが,書いていることは本当に基本的で,これさえ読んであれば認知意味論の大枠を理解できるのではないかと思っています.ただ,硬い口調の本はなんとなく読みにくい,とっかかりが掴みにくいと思う人には以下の本が良いと思います.

・瀬戸賢一/山添秀剛/小田希望「解いて学ぶ認知意味論」

この本は話口調で書かれているので,本当に授業を受けている感覚になります.また,演習問題を解きながら理論を覚えることができるので,例文などを覚えながら勉強するにはもってこいの本ではないかと思っています.

次に伝統的な意味論について話してみたいと思います.
伝統的な意味論は以下の本だけで勉強していました.

・中野弘三(2012)「意味論」

正直にいうともっとやっておくとよかったと思いますが,時間的にこれしかできませんでした.しかし,この本は短いのにも関わらずかなり詳細に書かれていて,入門にはとても良書だと思います.

語用論

正直語用論はあまり勉強できませんでしたが,とりあえず下の1冊を読んでいました.

・中野弘三(2012)「語用論」

正直これも上の意味論と同じことしか言えません笑.というのも,僕は専門が語用論ではなく,かつ自分が所属する大学に語用論の先生がいないので,入試に語用論の問題がでたらほとんど諦めだなと思っていました.そのため,入門的な知識だけ持っていこうというくらいにしか考えていなかったのでこの勉強しかしていませんでした.専門の人はもっとやるべきですが,専門でなく,とりあえず入門レベルでという人はこの本をとりあえず読めば良いと思います.

音声学・音韻論

音声学・音韻論は自分が受けた大学院ではほとんど出ていなかったので,ほぼ捨て気味でしたが,一応入門程度は知っておこうくらいで勉強していました.

・窪薗晴夫(1998)「音声学・音韻論」

正直これ全部を理解できたかというと怪しいですが,なんとなく知識は持っていこうというレベルで勉強していました.

形態論

・漆原郎子(2016)「形態論」

すみません,これも上の音声学・音韻論と同じでほとんど出ていなかったので,入門的な本しかやりませんでした.なんとなくこの本を読めば理解できるだろうという程度でこの本を読みました.薄くて読みやすかった,くらいにしか印象がありません笑.

認知言語学

これは専門にしたかったので,かなりの本を読んだ気がします.
・瀬戸賢一/山添秀剛/小田希望 「解いて学ぶ認知言語学」
・大堀壽夫(2002)「認知言語学」
・大谷直輝(2019)「ベーシック構文文法」
・藤井聖子/内田諭(2023)「フレーム意味論とフレームネット」
・松本曜(2003)「認知意味論」
・Langacker (2008) "Cognitive Grammar"

これ以外にもたくさん読んだ気がしますが,特にこれらの本は役に立った気がします.特に上の2冊は何度も読み直していました.

まとめ

かなり統語論と認知言語学の分野の本に偏りがある気がしますが,僕が知る限り大学院受ける人はこんな感じで自分の専門は深めに,他は入門的に浅く広く知っているという人が多いと思います(もちろん全部深い知識を持っているすごい人もいる).そのため,かなり知識に偏りがありました.しかし,このような偏りがあったからこそ合格できたのでは?と思うので,自分の強みになるかもしれないというところを徹底的に,そうでないところは入門レベルは最低でもという気持ちで知識を増やしていくのが良いと思っています.
タラタラと長い文を書きましたが,ここまでお読みいただきありがとうございました.また次回もよろしくお願いします.





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