マガジンのカバー画像

ひらくヨムヨム

6
彼方ひらくが現代の俳句を鑑賞します。
運営しているクリエイター

#風花

俳句鑑賞 ひらくヨムヨム004

風花や相手のいない糸でんわ平田素子 第二十五回横光利一俳句大会 一般の部 野中亮介選者賞より  相手がいなくなったのではない、最初からいないのだ。糸電話のぴんと張った糸が伸びる先は、風花の支配する、明るく華やかで、茫漠とした空間である。なにかを喪失したわけではないが、虚無でもないことが却ってさみしい。相手を切望しないことがさみしい。  この人は子供だろうか、大人だろうか。一人の糸電話はちょっとした手なぐさみか、ある種の儀式のようなもので、相手など必要ないのだろうか。望むと望