見出し画像

ツイッターの言葉だけで人を断定しないために

●はじめに

私たちは普段ツイッターで、発信者がどんな悪人かを知りもせず、いいこと言うというだけで拡散したり信頼したり称賛したりし、あとからその罪深さ、弊害、責任を痛感することがあるように、当然その逆もあります。

ツイッターで問題視されるような発信をした人が、現実の世界でどんなに人格者でどんなに功労者であっても、ツイッターで問題視された言葉だけが切り取られて一人歩きして人格も思想も実績もすべて否定されることがよくあります。

私は性に関する活動をし、発信することも多いので、特にそういう問題意識が強く、自分の問題としても、今のツイッターにおけるそういった言論(?)状況を憂いています。この記事はこうした問題に対応していくための情報共有が目的です。

●炎上する価値中立的な事柄

なぜ性に関することが炎上しやすくて対立しやすいか考えると、性、セックス、性表現等それら自体は、「価値中立的」なものだからだと思います。セックスも性表現も、それがなされる条件や状況や文脈によって、エンパワメントにもなり得るし、ディスエンパワメントにもなるからです。

そういう、価値中立的なものは性に関することだけでなく、例えば匿名性というものも、価値中立的と言われるものの一つだそうです。匿名であることで、内部告発や意見表明が可能になることもあれば、匿名であることによって、誹謗中傷や指殺人ができてしまう、そういう、ポジティブな側面も、ネガティブな側面も持っているという意味だそうです。そういう意味では他にも天国と地獄のような両義性を持つものがたくさんありますね。

この、人の数、人の人生と経験と知見の数だけ多義的な意味を持つ、性に関する事というのは、いつ、どこで、誰が、何のために、どのように、発信したかということに依拠して初めて意味を持つものになると思います。

同時に、発信した送り手だけでなく、その発信内容を知った受け手・読み手の文脈や解釈の背景も同じように、発信者とは別にあるので、それで、送り手と受け手でまったく違う意味や文脈の言葉として存在してしまうのだと思います。

ここで、ツイッターで言語表象が問題になるときのパターンについて取り上げ、考えてみます。

①オタクが炎上するとき

例えば、漫画やアニメを愛好する人が、キャラクターや作品やその感想等をツイッターで呟いたとします。その発信が内容によっては、見た人にとって性的な意味に受け取られ、不快感を持たれたり、女性から問題視されたり、危険人物扱いされることもあります。このことをどう考えたらいいでしょうか。

漫画アニメ愛好者やオタクの人々には、独特の文化や消費のされ方があると言われています。これは国内外の数々の研究論文や評論で様々に明らかにされてきたことですが、このことがまだ広く理解されていない問題が炎上しやすいことの一つとしてあると思います。
例えば、一見、セクシュアルな表象/言語表象であっても、エロ目的ではない読みの多様性があると言われています。それは日本の漫画やアニメにパロディ要素が多いことや、キャラクター志向、記号的志向が強いこと(現実志向でないこと)など、セクシュアルなのがまじめなのかまじめでないのか極めて曖昧なことが多いためです。
それ以前に、言語表象が問題とされる場合であればなおさら、作品のコンテンツを成す物語を調べないと、批判すら難しいものではないでしょうか。
発信内容によって発信者が危険人物扱いされることについても、やおいやBLを挙げるまでもなく、漫画やアニメで享受するものと、現実の世界でそれを求めるかは全く別物であり、また、オタクと性犯罪を関連づける事件がほぼ皆無に近いことなどからも、虚構の表現は、現実という担保を必ずしも必要としないことは明らかです。

②クリシェが炎上するとき

クリシェとは、常套句、決まり文句として人々に乱用された結果、その言葉が当初持っていた意図や表現の力・目新しさが失われた句・表現・概念のことです。
例えば、私は自分の名前で検索すると、検索候補に、「要友紀子 頭悪い」と出てきますが、それに対して、「女は頭悪いほうがモテるんやし!」と反発心でツイートしたとします。「頭悪い女はモテる」というのはまさにクリシェとして冗談で言っているだけで、本気で思ってないし、自分を馬鹿にした人と同じ土俵に乗ってやったというパフォーマンス、ネタでしかないのですが、おそらく、フェミニズム的な問題意識からするとアウトと感じる人もいるでしょうし、その言葉だけが一人歩きして、「要友紀子は、女は頭悪いほうがいいというツイートをしていたような人物」と批判されるかもしれません。それを承知で、あえてそのようなクリシェのツイートをすることは、誰にでもよくあります。わかる人にだけわかればいいと思って、特定の誰かに対して発信しているからです。
少し前にも、あるフェミニストの方がツイッターで、「存在価値のない意見(の女)」と言う人に対して、「資本主義社会では存在価値は収入で決まるのでは?」と返したことが、クリシェとしては受け取られず、その人の歪みとして受け取られて炎上したことがありました。

③何年も過去のツイートが炎上するとき

何年も前の過去ツイートが突然問題化し炎上することもあります。
最初に誰が何の目的で過去ツイートを掘って問題化させたのか検証されることもなく、ただ過去の一部の言葉だけが切り取られ、一人歩きしていくパターンです。
自分と敵対する者の過去ツイートを、自説を強化する目的で掘って炎上させる光景を何度も見てきたのは私だけでしょうか。それはいろんな差別者もよく使う嫌がらせの方法でもあります。
嫌がらせの過去ツイートの発掘と、嫌がらせではない過去ツイートの発掘の違いは、過去に遡って問題のあるツイートのほかに、その人のこれまでのまともな他の側面も遡ってみようとするかどうかの違いです。
過去の何年も前に問題のあるツイートがあったが、今はしていないのであれば、本人が何をどう学んで変わってきてるのかを見ることがなぜできないのでしょうか。
ましてや、過去のツイートに対する批判を認めて反省の意を述べたにも関わらず、延々と過去のツイートを問題化し続けるのは、逆の意味での歪みの心配が出てくると思います。

●さいごに

問題発言については、「間違ってるよ」ということを言いたかったはずなのに、その人を責めること、その人をいじめることが目的になって批判し続ける人もいます。
デジタル的にミリ単位で計るように、ほんの少しでも触れるか触れないかで、そんなにその人は危険なのでしょうか。アバウトさがなくなり、「ここまでじゃないと許したらだめ」というのが、それがそんなに重要なことなのかと、そう思うことが多くなってきている気がしてなりません。

100%を目指す人権活動に歪みはないのか。
問題発言をする人がこの世の中からいなくなったら、何か違う歪みを生むと思います。
何かを変えるときは、何かが始まるときだし、何かをなくすと、何かが増殖し始める。
だから私は、問題発言を「少なくする」のを目指していく方向であってほしいと思っています。

※6/16以下修正しました。

(修正前)過去のツイートを反省し謝ったにも関わらず、

(修正後)過去のツイートに対する批判を認めて反省の意を述べたにも関わらず、


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?