養成所ではこんなことだってある
お笑いの事務所に入ろうと思ったら大きく分けて2つの方法がある。
「オーディションを受ける」
か、
「養成所に入る」
か。
我々カナメストーンはオーディションを受けて、その結果「入っていいよ〜」となったので「ありがとうございます!本当にありがとうございます!!」という形でマセキ芸能社にお世話になっている。
が、最初からマセキにお世話になっていたワケではない。
お笑いを始めて最初は吉本興業の養成所、そう「NSC」に入学したのだ!NSC15期だ!
相方である山口とは中学からの同級生なので、一緒にNSCに入学。
今回はその養成所時代の印象に残っている出来事を紹介しようと思う。
記憶が間違っていなければ入学した当初は700人くらいいたはずだ。みんな若いし、自分が1番おもしろいと思ってるし、それはもう全員「トガって」いた。
我々カナメストーンだって例外ではない。
漫才の衣装は古着のジーパンに古着のTシャツ。パーマモヒカンにおかっぱ。なにより入学費の払い方がもうトガっていた。
だいたいの同期が入学費の40万を貯めて一括で入学する中、こっちは2年ローンだ。山口に至っては3年ローン。40万円を36回払い。こんなもんは支払い期間が長ければ長いほどトガっているのだ。養成所は1年で卒業なので、卒業してからも2年は支払っていた。トガっていたからな。
授業の大半はネタ見せになる。ネタ見せとはその名の通り、ネタを見せて作家さんにダメ出しをもらうこと言う。作家さんだけでなく、他のライバル同期たちもそのネタを見ている。
そしてそのネタ見せの中でも「勝負のネタ見せ」があった。
NSCには東京校と大阪校がある。我々が通っていたのは東京校。
その東京校と大阪校のネタ対抗戦があり、それに出場するメンバーを決めるためのネタ見せが「勝負のネタ見せ」なのだ!
これはかなり緊張するぞ。
小中学校の卒業式って一人一人名前が呼ばれて、返事して、卒業証書を受け取るじゃない?!自分の番が近づくと緊張するじゃない?!あれと同じくらい!
そりゃあもう「勝負のネタ見せ」なので前日にオレたち2人は髪を切って備えた。
当時オレたちは美容室には行かず、バリカンを買って自分たちで刈り合っていた。
美容室にお金は使わないよ、養成所のローン払う方が先だからな。
オレが山口の髪を刈っていると彼はこんなことを頼んできた。
いつもより短く、限界まで短く刈ってくれ、と。
これはもう気合いの入り方が伝わってくる。いいぞ山口!その気持ち伝わったよ!って思ったね♩
青いどころか真っ白になるまで刈り上げて準備万端!あとはネタを全力でやるだけ!
そして当日、、
自分たちの漫才、、、
まあまあのデキ!!これはあるんじゃないか?!というデキ!やることはやった!!
あとはライバルたちのネタを見届けるだけ。
自分たちのネタが終わり、見る側に回るときに山口が最前列に座る。
これは珍しいことだ。いつもの山口なら「他のコンビのネタには興味ないぜ感」を出しているので(実際はもちろん気になっている)、後ろのほうに座る。
それが最前列?!
そうかそうか。今日は気合いの入り方が違うんだったな!ごめんごめん忘れてたよオレ!バカだよなぁそんなこと忘れるだなんて!ライバルのネタを真剣に見て勉強だよな!やはり今日の山口違うぞ!
と思ったがそれは違った。
座って次のコンビが始まる前にオレにだけに聞こえるように山口が囁いてきた。
「ガンつけてネタ飛ばさせるわ」
ほう。
これはもう「トガって」いるんじゃない。
「セコい」だけだ。
彼はそのあとライバルたちのネタ中ずっとガンつけていた。もちろん誰1人としてそんな行為に惑わされるライバルはいない。つか誰も見てない!つかそんな姿誰にも見られるなよ絶対!恥ずかしいなぁもう!ああもう!
そんなオレの思いも届かず彼は睨み続けた。
刈り上げたばっかの真っ白の頭で威圧しながら。
そして結果はと言うと、カナメストーンは奇跡的に対抗戦のメンバーに選ばれた。
しかし神様はやはり見ているもんで、対抗戦本番では0笑い。完敗中の完敗。スベりすぎてネタ中の時間がゆっくりゆっくり流れていた。
終わったあとに「スベリすぎて逆に気持ち良かったよなあ!」というしてはいけない強がりまで見せていた。
ちなみにそのときの対戦相手はダイヤモンド小野ちゃんの養成所時代のコンビ!くぅ!
また書きますんで、カナメストーンをよろしくお願い致しまス!!
サポートしていただけたら嬉しい嬉しい嬉しい!