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戯言「黒猫商店」

【創作です】

〈黒猫にご用心〉

なんだこの衝立は。
昨日まではこんなものはなかったはずだ。
夏が始まったかのような熱い日差し。
私は、昨日ついに出てきたGに宣戦布告をするべく、
バルサンを求めに歩いていたところだった。

別段、自転車チャリンコクラブで
えっちらおっちらゴーゴーでも構わんのだが。
夏の日差しとダンスしたかったのだ。

おっと、夏の魔物にやられている。
気をつけねば。

水を飲んで。
心を落ち着ける。

んで。
なんなんだこの看板は。
宇宙からの使者かなんかが刺したのか。
まごうことなき金属片で構成されて
長方形の長看板には、絶妙に女の子か男のかわからない字体で
文字がほってあった。

気をつけろったってどうしたらいいんだよ。
しかし一度気になっては仕方がない。
こうなったら一度ネット検索侍爆誕。

「ええ・・。」

この看板のニュースで溢れかえっていた。
日本全国、いや世界各地にこの看板が急に立てられいた。
どこもかしこもパワースポットのごとく、
人々が好奇で写真をあげている。

時間にして昨日の深夜0時かららしい。

ここで一つの疑問が浮かぶ、
なんでここは誰もいないんだ?
みんな気になるだろ

引き続き熱気は増していくばかり。
考えすぎと暑さで湯気でも出てきそうだ。
ヒントも取っても何もない。

まぁいい。
いくら考えたところで私には解決できないし
これから始まる夏の大虫戦争に勝利せねばならんので
ライフ(近くにあるスーパー)へと歩を進めた。

「へへっ」

奇妙で不快でねちっこくて心をざらざらの鮫肌で撫でられるような、
奇妙のバラエティパックのような声が聞こえた

「え?」

振り返るとそこには少しでっかい1人の男が立って、
看板をさすさすしていた。
話しかけるしかないか。

「あ・・。どうも。」

返事はない
なんだこいつ。

「なんか言いたそうやな」

いや話しかけたんそっちやん。
と思いながらも
その看板に興味を持ったのは間違いない。
さすさす感を見るになんか知っているのだろう。

「その看板、なんなんですかねー?」

あくまで世間話のように、
そう最近野菜値上げしましたねー
白菜高くなりましたねー
白菜買い過ぎた時は、切って冷凍保存したほうがいいですよねー。

の!
ごとく!

ええい。
なんでこんな男に気を使わにゃならんのだ。

「全部喋ってますよ」

え?
あ・・。
またか。

短髪男は続ける。
「私が話すので、黙って聞いてください。」

ふにゃ。
まぁええか聞いたろうその話とやらを。
私はお茶を飲む。

え?
お茶?

「この看板はある人物によって立てられた。
その男は体を鍛えるのが趣味だった、
男の体はムキムキとまではいかないがそこそこ痩せた。
しかし、運動というのはただすればいいというわけではない。

痩せはしたが、健康的に痩せず
病気みたいに痩せていた。」

「あなたの話では。ないですよね?」

「まだ話してる途中です」

「あ・・。はい。」

暑いんだよなぁ。

「これなんて読みますか?」

「えっと。黒い猫にご用心」

「もう一回」

「え?黒い猫にご用心」

「もういっか・・」

「いいですよ!
あのすいません!もう行きますから」

「あなたがここにきたのに?」

「え?」

「気づいていないんですか?
あなたは自分の意思でここにきた、そしてまだ何事もなかったかのように離れ
またここへ帰ってくるんです」

「すいません。ずっと何を言っているんですか?」

「あなたは。騙されたんですよ。黒猫商会に」

は・・!?え・・!?

「ええっと。ああ。ほらここ見てください。
ちっさな番号があるのがわかりませんか。
25420
その本数。たてられている」

「ちょっ・・。ちょっと・・。」

「あなたは黒猫商会というお店の常連でした。
そしてあなたはそこを出禁になったんですよ。
あなたは考えた結果、黒猫商店で買った商品を使った。
正規の使い方ではないので。現状こんなことになっているんですがね」

「ええ・・。」

「さっきからそればっかだな」

言葉がちょっと強くなる

「すいません。よかったらどっか入りませんか?」

「いいですよ。しかし時間がない。24時まで終わらせないと。
あんたがここにくるってわかるのにもだいぶ時間を使ったんだ。
毎回毎回、うちらのメンバーがどこかで予測つけていく。
あんたと前にあった会ったのは・・。8000回目だ」

「すいません」

迫力に押されて謝ってしまった。

男は名前を頑なに言わなかった。
仕方ないので斎藤さんと仮名で呼ぶことにした。
近くの喫茶店「スリーピードッグ」に入る。

私はアイスコーヒー
斎藤さんは熱いのにホットコーヒーを頼んでいた

「で?なんなんですか?」

「まぁ。何も面白い話ではないが」

スマホを仕切に触りながら話す
仲間と連絡でもしているのだろうか。

「相撲は知ってるか?」

「あ、はい」

今?

「そうかなら話ははやい
俺と相撲を取ろう」

「なんで!?」

一気に大きい声が出る。
説明をしてくれ

「俺は何回もお前に会ってこの説明を何回もした
もううんざりなんだ

わかった説明しよう

お前は黒猫商会とトラブった、
確か買った商品と内容が違ったから揉めたとかなんとか・・。
そして。
その商品を捨てればよかったのにあんたは意固地に持ち続けた、
そしたらその商品がなんというか。
お前の気を吸い取り始めたんだ。
普通の人間なら吸われた時点で何も感じない人間になるのだが、
お前は違ったらしい無限に溢れ出てきたんだ。
気が。
常人では考えられん。」

そう言ってアイスコーヒーを飲む。
アイスコーヒー!?

「あぁ、気づいたか。
そうだ、この世界はお前が大きく関わってる世界だからな。
まぁなんだ。
お天気やって性格があるだろ、それと同じでお前の性格と共に
この世界はくるんくるん変わるんだ。」

私のものは桜フラペチーノになっていた。
もう何も驚かない。

「待て!!」

え?

「ちょっと待ってろ!」

そう言って男は勢いよく出ていく、
え?タンクトップなんてきてたって?

しばらくして戻ってくる。

「やっぱりだ!(ちょい高めの声)」

男は・・。
え?女?スマホに映った写真を見せてくる。
さっきの看板だ。

「番号!ほら!」

数字の末尾が3になっていた。

「あの・・。説明してもらえますか」

一瞬にして男に戻っていた。
机には2人前の蕎麦。

「すまん。慌て過ぎた。
これ以上の変革が起きてしまうとこの世界自体が壊れかねない。」

いつしか短髪の男に戻っていた。

コーヒーに戻っているが、
外を見るともう日が暮れている。

「まずいな。お前がこの1日を終わらそうそしている。
寝たら全てが終わる」

「ふぁ・・。」

「寝るな!
いいか。あちらこちらに笹ている看板は、お前がタイムリープした数だ!
お前は黒猫商店にいけない気持ちが回り回って看板でもいいから出会いたいとなった。
それを願ったんだがそれは商品の正式な使い方ではなかった。そのため
偏屈な下達でタイムリープが発生して。
この世界の住人全てが終わらない日々を過ごしている。」

「え?じゃああなたたちは」

「タイム研究所、所長だ」

「た。。タイム・・」

「実は本当はもっと昔の時代に戻るはずで年代を設定したが、
毎回この日につく。もちろんこの日より昔。にだがな
確かに、俺たちの未来があるってことは誰かしらがこのタイムリープを
終わらせているということになる。」

「それじゃあ。その日に行けば」

「説明がむずいんだが、あまり同じ日に何回も行ってしまうと。
未来が大きく変わりすぎるので。
極力避けたい。
いくつか研究を進めてわかったことだが、
このタイムリープはどこで止めてもいいらしい。
看板の数が減ることはそこまで大きな影響ではない。
しかし。増えるとなると話は別だ」

「と。言いますと」

「そもそもこの看板は異質なものなんだ。呪物みたいなものだ
この世に存在してはいけない。
タイムリープが終わった次の日に全て処分した。
はずだったが。一つでも増えると。その一つを探す膨大な時間がかかる」

「あぁ。」

「相撲取ろうか」

「で!なんで!?」

「要は、お前が負けを認めることでこのループは終わる」

「わかりました・・。」

真夏の夜。でかい短髪男との大一番
月は嘲笑うかのようにこうこうと光っている。
蝉時雨、気分が乗りゃ俳句でも読めそうだ。

「はっけよーい。のこった!」

組み合った瞬間に、世界が揺れる。
視界がぼんやりと滲む、
ショック療法とてもいうのだろうか過去のことを思い出す。

あの看板を立てたのは自分だった。
夜な夜な徘徊してはいろんなところに建てていた。
樹海、沼、無人島、スーパーの裏、花畑、公園、
山の麓、高台、甲子園球場、桜の木の下、
結婚式場、飛行場、バス停、競馬場、京都の竹林
下鴨神社、などなど

そういえばこのおっさんとも会うのは・・。

押し出される
その瞬間、負けん気だろうか思い切り踏ん張る
それを見越していたかのように斎藤のおっさんは
さらに押してきた。

倒れる・・。

視界がぐるぐると回り続けたのちに大の字になって倒れていた。

起きた。
公園のど真ん中で寝ていた。
いや、泣き崩れていた。
目の前には歯医者。

あれ?あれ?
さっきあった看板を探しにく。
何かが立ってたでろう穴しかのこってなかった。
困っちゃうな。
こっからの人生どうすればいいんだよ。

と思ったのも束の間。
その男の中からするするとその記憶は天へと召されていった。
まるで阪急の各駅停車の如く。

黒猫商店はひっそりと今日もどこかで営業している。
猫のごとく、気ままに。

次は、あなたの目の前に現れるかもしれませんね。
気をつけてね

・・・余談・・・

バルサンはなかったのでゴキブリホイホイで対応した

よろしゅうお願いします。