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涅槃団子を食す。~悪い病にかからぬよう~

毎年お釈迦様の命日に由来する3月15日に涅槃図を飾りお参りするのが習わしとなっている個人宅がある。天井から吊り下げられた涅槃図は畳に届いてなお余るほど大きいものである。金石を訪れていた北海道の人が所用が終わって国に帰ろうとしたがシケが続き船を出せない。そのうち路銀も尽きてどうしようもなくなっていたところ、船頭をしていた当時の当主がいろいろ世話をして家に引き取って長逗留の末、故郷に無事帰れることとなった。その時お礼として涅槃図を置いていった。以来その家では涅槃図を大切にお守りしているとのことである。北前船の寄港地として栄えた金石ではこのようになにかのお礼や借金のカタとして言い伝えられているお宝が数多く見受けられる。

真宗以外の寺院や地蔵堂ではこの日涅槃会を呼ばれる法要があがり、涅槃団子が配られる。昔はお堂の屋根にあがって団子をバラバラと撒いていた。みんなエプロンを広げたり、逆さに傘をもったりと工夫して一つでも多くの団子を取ろうと躍起であった。そんな頃はどぶに落ちたのも水で洗えば大丈夫という具合であったが、経済が豊かになり衛生面にも気を配るようになって地面に落ちたものも誰も拾わないようになる。それではということで本堂の中で撒くようになったが、畳の上に落ちてもやはり気になるという人が増えて、今では駄菓子屋で使うような紙袋に20個ほど詰めて配っているところが多い。

この涅槃団子は厄除けのお守りとして重宝される。毛糸や何かで作った袋に入れて車につければ交通安全、山に行けば蛇除けになるとの伝えがある。漁師は船に涅槃団子を常備しておき、危険があれば海に撒いてきた。波が高くなれば波を鎮め、ガスが出てきたら霧を晴らす。涅槃団子は海上安全のお守りであるとともに、海に関わるものの願いでもあったといえる。

涅槃団子はおもに炙ったり、素揚げして塩振って食べたり、ぜんざいの具にして食べる。無病息災のご利益があるという。米粉でつくるものなので粘りは少なく素朴な味わいである。新型コロナウィルスが猛威を振るっているが各自手洗いなど衛生に気をつけながら、先人の願いを噛みしめていきたい。

一番シンプルな食し方を以下紹介する。

涅槃団子のコロコロ焼き
①涅槃団子をフライパンの上で強火でコロコロ焼き上げる。
②周りがきつね色になり、中がホチャホチャになったら完成。お好みで塩を振ったり醤油をつける。

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